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全方位多忙
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しおりを挟む自分で決めた事。
それに後悔はないが、まあ、死にそう。
あれこれ片付けなきゃならない問題を、多忙時期に押し込んだ、自分が悪い。
そんなのは分かってはいるけど、休みの記憶がないってのは凄くない?
気が付いたら仕事の日になってるんだぜ?
まあね。
年始初売りはセールがあるし、学生組はなかなか帰ってこないし、帰ってきたと思ったら、就職活動や研修やらで次々と辞めていく。
辞めていくのに、次の子が入ってくるのはまだ先。
そら、受験終わらないと、学生さんは入ってきてくれない。
そんな中、やっぱり流行るインフルエンザ。
今年は溶連菌感染症も重なって?
免疫力落ちてるからとかどうのとか、どうでもいいので、人手を下さい。
まあ、人手もねぇ、一気には増やせませんよね?
研修するとなると、そこにまた人手がいる訳で。
人を付けてみても、1ヶ月で辞めるとか止めて欲しい。
あんた、経験者じゃなかったんかい!!
こんなこと、したことありませんって、店変われば、やり方違うの当然じゃろがっ!
そんなこんなで、辞めるに辞められず、でも時は一刻一刻と過ぎていき、合間に色々やらねばならない。
復帰するからには当然、以前の方々への無沙汰非礼のご挨拶が必要だし、こっちの断捨離が必然。
一番面倒だったのは、墓仕舞いかな。
毎年管理者が変わるような、地域密着型の当番徴収制の所に放置お任せは、流石に難しかった。
だからって、後どうするよとばかりに健吾君に泣きつきました。
ありがとうございます!
権利売っ払ってその金で、辺鄙過ぎるが後は何もしないでいい…金を掛けたくない、その上、何もしたくない人向けの集合墓地に、無事放り込めた。
引越し目的のやっつけ墓仕舞いって事で、途中宗教儀式も完全完璧すっ飛ばしてとか、色々胡乱な目で見られたが知らない。
だって、放り込み先探してただけ、だもん。
生きてる間に散々迷惑被ったのに、アイツらの死後の安寧なんて私には関係ない。
地獄に落ちて、そのまま朽ち果てろ。
法律上、保管場所が必要だったから、仕方なく、の手続きだし。
当然、私が死んでもそこにはいきません。
姉ちゃんは旦那の方に入る予定。
私は後、廃棄処分で良いんだけど、日本の法律面倒臭い。
狭い日本、処分を躊躇っちゃあかんと思うんだけどね。
そんな面倒極まりない手続き色々やりつつ、新しい引越し先や、仕事探し。
親戚も何も…無い事はないけど、関わりたくないので自分でやらねばならず?
健吾君の「こちらで住む場所用意しますから」の笑顔の恐ろしい言葉に、何度、頼りたくなったことか。
怖すぎる。
奴は清牙の下僕なので、下手したら、マスターキーが清牙に握られている…可能性しか、見えない。
流石にプライベートは確保したいと、色々奔走。
なのにっ!
人が死にそうに忙しいって言ってるのに、断れないお仕事1つ。
永井博人君主演の探偵物連ドラゲストに出たら、ミーをメインキャストに使ってあげると云う、恐ろしくも有難いお話。
それも、雪が降ろうが嵐がこようが、撮影は2日で終わらせると言われてしまえばどうしようもなく?
清牙の出す絶対条件「PV・MV無条件全却下」「肌露出無」「エロ無」に欠片も引っ掛からない、余命いくばくもない病人役です。
まあ、仕方ないよね。
忙しい中、絞り出した撮影参加日。
ヨレヨレの私を見て、派遣されてきたメグさんの一言。
「役作り? すんごいヤツれてるけど? おっぱい無事?」
さすが、SPHY専属メイク。
言ってることが毒され過ぎ。
「忙し過ぎて死にそうになってるだけです」
「おっぱいは、死んでない」
どこの確認取ってるんですかね?
そんなじゃれてたら、永井博人君自ら挨拶来るし。
「流石SPHY専属女優。メイク引きつれとか、大物ですねぇ」
分かってて、後ろのスタッフに聞かせるなよ?
っていうか、主演が自ら、こっちが挨拶行く前に来るな。
フットワーク軽過ぎ。
普通に到着して、監督プロデューサーやらに挨拶して、主演にご機嫌窺いした後での、その他皆様への挨拶じゃないの?
出演者挨拶にも、順番あるじゃん。
大物より先に、挨拶出来ないじゃんっ。
されちゃったので、もう、仕方ないんだけど。
「本日は宜しく」
言いかけるよりなにより、手で制され、あごクイきました。
誰得、ですかね?
「おっぱい、縮んでませんか?」
お前の視線の先と、喋ってる内容の乖離が酷過ぎる!!
「死にゆく末期患者に、おっぱいのデカさ、いらんですよね?」
「パジャマの盛り上がりは、胸熱ですっ」
どいつもこいつも!
どんなにお綺麗な顔してようと、男は男なのである。
「掴んだら、主演でも殴る」
「嫌だなぁ。清牙もついてきそうなので、しませんよ」
なかったらするのか?
でも、言っとくべきことが1つ。
「アイツ、今日の仕事知らんよ」
「え?」
「は?」
あれぇ?
メグさんまで、聞いてなかったの?
「アイツの「まだまだ」攻撃にブチ切れてお仕置き中。連絡全拒否中なので、仕事どころか、私が今ここにいるのも、奴は知らない。なので、放送まで黙っててね」
途中バレしてごねて、コケても知らないぞ。
テヘペロ言ったら、永井博人君大爆笑。
メグさんが大きな溜息。
「じゃあ、撮影後、飲みに行きましょうよ」
「えぇぇ?」
「大丈夫。俺は21です」
どこの何に、安心すればいいのか分からない。
分からないが、ミーの事務所の先輩、稼ぎ頭。
愛想振っといて損はない。
「私も参加するわよ。健吾に何言われるか分からないもん」
メグさんご苦労様です。
そんなこんなで、出待ちは寝倒し、その度に延々とメイクを直された、久々のお仕事。
お仕事は、突然消えた昔の恋人を探してほしい…って、探された人。
探してみれば余命1ヶ月。
元恋人には自分の事を言わないでほしいと頼まれる探偵。
連れ回し、引っ掻き回し、説得されつつ、結果、会ってもイイとなる。
が、依頼主が会ったのは、冷たく亡くなった彼女。
どうして突然消えたのか、なぜ会いたくないと言ったのか、会ってもいいと急に言い出したのはなぜか?
全部不明。
会ってもいいと言ったのに、会えなかったのは、突然の病状悪化だけど。
それを自覚していたのか、していなかったのか、それも不明。
何もかもが意味不明のまま、意味有り気に出て、意味有り気に探偵振り回して死んでいく役どころ。
ミーは無事に、うだつの上がらない探偵のお世話をする、事務所大家の娘役獲得。
毎回仕事に首を突っ込んではお手伝いしたりかき回す、役どころ。
今回私との接触はなく、話を聞いてプリプリ怒る場面があるのみ。
なので、撮影も別。
後で聞いて見て、驚け。
その2日間だけがまあ、穏やかと云えたのかもしれない。
なにせ、糞忙しい。
忙しいのに、映画の美奈代に気が付く面倒なのが時々スーパー現れては写真撮ろうとするし、なかな帰らないし。
家の前にまで、待ち伏せてたのもいたねぇ。
普通に警察呼んで、厳重注意されてたけど。
そんなバタバタな中、お引越し。
もう、何やってたんだっけ…の世界。
気が付いたら新生活始まってた。
引越しっつっても、詰め込んで貰って、即とはいかず。
マンスリーマンションを短期間借りつつ、仕事しながら必要最低限の段ボールとシェアする極貧生活。
有難いことに、登録していた派遣会社の腕が良かったのか、即日仕事始まって、引越し本契約。
色々立て込んでいるし、金が無いんだから働くしかなく。
休みは各種手続きに潰れ、取り敢えず、貯金額を何とかしなければと奔走するだけの日々。
Wワークの何が辛いって、疲れ過ぎて、何もかもがどうでも良くなってしまう事である。
幸い、ボロくて安くても、シャワーとトイレがある部屋。
そうじゃなければ、風呂、入ってない汚物人間が出来上がっていたことだろう。
しばらく、買ってきた弁当をレンチン掛けるのさえ、億劫だったくらいだ。
死にそうになりつつ、笑顔の健吾君に更なる待てをお願いしました。
もうちょっと、普通の生活基盤立ててからな。
なによりも、だ。
Elseed様のツアーが始まってしまう。
それだけはどうしても行かなければならず、行かねば心が死にそうだったので、なんとか先行予約でゲット。
こっちだと、あるの始まり、だからねぇ。
マー君にフェスがどうの言われましたが、思いっきり断りました。
行ってる金も時間も、体力もねぇよ。
清牙のお守り?
それこそ知らねぇと流したら、希更が泣きました。
一緒に見れると思ったのに、と。
ドラマ撮影直後のお疲れ新人女優とギター小僧が希更のご機嫌取った模様。
時の流れって、年とともに加速していく気がするのは気のせいかな?
いつの間にか半年過ぎていた。
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