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全方位多忙
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しおりを挟む本日の打ち合わせ終え、客が引けてから、清牙が健吾に詰め寄る。
「誰か呼んで」
「KEIRAさんは、無理ですね。桧山さんに確認してみますが」
「無理なら、適当に」
「……はい」
事務所を出ていく清牙のむっつりした不機嫌な姿に、駆郎が肩を竦める。
「昨日も、だったのに」
「まあ、ここんとこ、連日ではあるが、まあ」
舞人は駆郎の言葉に苦笑いしつつ、忙しく連絡を取る健吾を待って、声をかけた。
「姐さん、どうなってんの?」
「早ければ、3月中にはこちらに来られるとの話でしたが。まあ、しばらくは放っておいてほしいとの意向もありまして」
「結局いつ?」
不機嫌な駆郎の言葉に、健吾は微笑んで答える。
「6月以降を目途にと」
「それまでずっと、これ?」
まだ3月入ったばっかなんだけどと、駆郎の、声にならない言葉が聞こえる。
「まあ、忙しいのも分かるんだけどよぉ。全くの接触禁止はないだろうに」
来るな寄るな近付くな、連絡しても無視の、完全接触禁止から、清牙の苛立ちは募っているのだから。
まあな。
忙しいって言ってるのに「まだまだ」攻撃にキレた姐さんによる、完全接触禁止なのだが。
「甘やかしといて掌返しが過ぎるよね。責任取ってほしい」
だよなぁ。
折角大人しくなってたところに、だからな。
姐さんも甘いから、直接強引に来られて、なんだかんだと相手なんてしてやるもんだから、清牙もつけあがったのだ。
急にどんな手も通じない、待て継続で、爆発させようにもさせどころがないから、下に直結。
元々、ストレスをそっちで解消する、スポーツセックスだったしな。
それが再燃したのも、まあ、仕方がない。
「こちらから援助も申し出てるんですが」
「カエさんは断ったんだろ? 美凉華ちゃんも心配してた」
色々あり過ぎて、何もかもを自分で解決出来て来た人だから、人に頼るのが苦手なのは分かってはいるんだけど。
「希更ちゃんがずっと元気ないんだよね。やっぱ、距離が出来て淋しいって」
お前の心配どころは、そこだよな?
「実際、ご自分で色々準備されているようで、一切を拒否されまして」
健吾の曖昧な笑いに溜息が出る。
「それ、大丈夫なん?」
映画公開直後は、姐さんへの依頼が結構あって、事務所がバタバタしていたが。
「清牙と楓さんの条件範囲が、ありますので」
だよな。
そうなると、出来る仕事の範囲は、かなり絞られる。
「最近は落ち着いていますが、まあ、清牙に聞かせられない案件は、常にありますね」
どうして、少し話題に上がっただけで、脱がせようとするのか。
まあ、あの胸だ。
脱がせれば、絵になる事は間違いないので、気持ちは分からないでもないが。
「もう一つ、清牙に聞かせられない案件もありますが?」
「聞きたくねぇ」
「いらない」
どうせ、姐さんのごり押しだろ?
これ以上、奴の欲求不満に巻き込まれるのはごめんだ。
「どの道、しばらくこの調子、なんだね」
駆郎の言葉に健吾は笑ったまま。
恐らく、それ以上が待っていると。
「マサさん呼んで、機嫌取り出来ないのかよ」
セックスじゃない、健全なるスポーツで、身動き出来ない程叩きのめされれば、少しはガス抜きになるんじゃねぇの?
「あちら、イベントが近づいているので忙しいんです。あなた方も参加するんですが?」
スケジュールをお忘れですか…とばかりの言葉に、視線を逸らす。
そう言えば、去年…あっち、行ってたんだよな。
姐さんが好き勝手して、清牙苛つかせていたが、ワーワー喚くだけでも、色々あって大人しかったよな。
下にも直結してなかったし。
まあ、なんだかんだで、希更の無邪気さとかにも毒気抜かれて、楽しんではいたみたいだが。
「それ、カエさん来るの?」
「お断りされてます。ですが、美凉華さんが希更さん連れて来てくれるそうです」
いないよりはましだが、姐さんがいないのは痛い。
「清牙にリード付けといてよ」
「重石もな」
「それで、大人しくしてくれるなら良いんですが…」
健吾の危機感無い笑みに、項垂れる。
本当に、勘弁してほしいと。
皺寄せその後と、面倒に巻き込まれるのはこっちなのだから。
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