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鍵の脅迫仕事
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しおりを挟む酷い目に遭った。
何度リテイクしただろう?
拘り強過ぎな監督に、演技出来ない清牙。
「攫う気にならない」
「放り投げてイイ?」
「萎えた」
もう、それはもうっ、清牙がその気にならないって言う訳の分からない理由で、撮影が止まる止まる。
何より時間がかかったのが、青シート撮影。
最後に私の頭吹っ飛ばす?
弾け飛ぶ?
それこそ、意味が解らん。
どうして吹っ飛ばすのかとか、聞いている間もないまま、大人しくされるがまま。
日付も完全に変わって、すやすや眠るミーの寝顔に癒されつつ、シャワー浴びてきました、どこぞのお家。
なんか、どこぞのお家を撮影に借りたらしいんだけどね。
レイプ直前映像に、花盛高級住宅の映像の必要性はどこに?
ミーも、一般…ではないけれど、住宅そのままの場所に所狭しと撮影器具やら人の出入りやらある独特な空間に、戸惑いつつ、私に張り付く。
「皺が入る。掴むな」
「うん。ごめん」
服から手は離すが離れない。
空気独特、だからねぇ。
なんかの撮影そのもの真っただ中の空気に放り込まれ、ミーは落ち着きがない。
そこに、長谷監督事先生が笑顔で登場。
「先生、後頑張れ」
え?
「浅見。ウチの女優と姫頼んだ」
そして清牙によって、黒服のお兄さんに、私とミーが託される。
え?
「清牙は?」
「一応お見送り? 俺、仕事あんの」
だよね。
PV撮り終えたばかり、これからが忙しいだろうと思われる。
思われるんだけど、なぜにここに来た?
「あぁっと、言っとくけど、此奴ら、俺のだから。じゃあ、お疲れ」
あんた、メンチ切りに来たの?
どこの下っ端?
そのまま無情に出て行ってしまう清牙。
本日、駆郎君と舞人君は別仕事なんだそうな。
駆郎君はSPHYの曲アレンジもしていることから、最近他所でも声がかかることがあり、結構忙しいようだ。
清牙が露出担当、駆郎君がアレンジと忙しいので、忙しい時間は他の助っ人に入っている舞人君。
本来なら、舞人君にくっついている筈だったミーが、どうしても見学したいとついてきた現場。
私はそんな話聞かされていなかったので、普通に昨日の続きで何ぞや撮影をするとばかり。
にこやかに微笑んだ先生に呼ばれ、リビングのテーブルへ。
「実はお願いがありまして」
それ、お願いじゃなく、脅迫じゃないですかね?
こっち側の人、笑顔で下手に見せかけて、グイグイ来ますやん。
「美奈代、やってくれません?」
笑顔で言われましても、そのミナヨさんが分からない。
多分間違いなく、撮影が全く進んでいないホラー映画の役どころの一つだとは思われるが。
「昨日の清牙君のPVのコンセプトが美奈代なんですよ」
そんな話、聞いてないが?
そんな細かい設定詰めて話す前に、決行するしかなかった無謀なスケジュール。
ここで今、祟るのか…。
「冒頭で、夫と息子が亡くなり、生き残った娘を滅多刺しにして、行方不明になる役どころなんですけどね。なかなか嵌まらなくて」
なにが、だ?
え?
それがあの、エロPVに繋がるの?
どうしてそうなる?
「清牙君、今回の曲、良いですよね?」
まあ、そうですね。
エロいけど。
「あれ、絞りに絞り出して、美奈代で作り上げたらしいんですよ。イイですよね? だから、そのPVで、僕が監督なんですけど」
まあ今回の曲が、映画関連だから、PVにその映画の監督が出てくる。
それ自体は、珍しい事じゃないと思うよ?
「僕は、美奈代を重視してるんです。やりません?」
どうしてそうなる?
そう言いたかった。
だけど、言いたいことが分かってしまう。
重要視しているミナヨとやら。
清牙が自分勝手に突っ走り、全く、降りてこなかった曲を、先生と相談なのか何なのかで、まだ撮影のないミナヨで焦点絞って、妄想して絞り出した?
そんなミナヨ有りきのエロ曲。
ミナヨの出来で、映画内容も変わるし、清牙達の曲のお披露目にも影響が出てくる。
下手すれば、映画内容が変われば、清牙のあの曲の意味が完全に無くなる。
ついで言えば、ミナヨで焦点かけて作った曲だ。
違うミナヨが出れば、あの曲の意味が無くなるどころか、存在さえ危うい。
違うと言えど、もうほとんど出来てる映画。
早々ミナヨの設定も変わらないだろうから、どんなミナヨさんを使うかは知らんが、あまりにも違い過ぎると曲が浮く。
当然そうなれば映画に使えない。
そのミナヨさんメインの曲で書いちゃった清牙達の曲の出しどころにも、多方面問題が出てくるのは間違いない訳で…。
「清牙君ね。このままなら、別の奴に頼んでくれとか言い出して、困ってるんですよ」
言うな。
清牙なら言う。
映画の出来があまりにも酷いなら関わりたくないくらい、平気で言う。
「曲は出しどころがないならそれでもいいとか、ねぇ」
え?
今回使えなくても何とか…一度はめ込んだコンセプトを、どうひねり出すよ?
そら、今、これに使わなきゃ、使いどころが難しいなんて話でもなく?
「何とかしたいと、思いませんか?」
にこにこ。
このオッサンも、大概腹黒いな。
「幸い、楓さん、美奈代の設定で昨日撮影してますし。そのまま行けるし。清牙君が押して使ってくるぐらいだから、そこは、清牙君も文句言わないですしねぇ」
無茶苦茶だ。
どいつもこいつも無茶苦茶だ。
「心配しなくても、美奈代は冒頭しか出ませんので、頑張れば、2日で終わります」
そう言う、問題じゃないのですが?
「清牙君の曲、お蔵入りですか?」
汚ぇ。
大人、汚過ぎる!!
絶対に、最初から嵌められていた!!
そんな思いは、今、口にしてもどうしようもない。
くそうっ。
清牙の歌、エロいけど良いんだよ!
あれ、世に出ないとか勿体無さ過ぎる!!
「じゃあ、今回はおっぱい押さえて、清楚系奥様、承り!」
メグさん、いたんですね。
まあ、他のメイクさん来られても困るけど。
「映画に、清牙君の性癖いらないんで宜しくお願いします」
先生?
貴方も大概ですよ?
そうして始まった、もう一戦。
波乱の予感しかありません。
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投稿は毎週水曜日と土曜日と日曜日になります。
今更ですが、不定期に、予告報告なく、先の話との帳尻合わせで投稿分も改稿します。
現在11章書いてますが、壊変になったらごめんなさい。
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