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怒涛の催事
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しおりを挟む清牙の我が儘拘束問題は、案外簡単に解決した。
switchで希更と清牙でのバトルが盛り上がり、なかなか寝なかったのだ。
因みに、私と舞人君とミーはテレビ見たり、ゲームを冷かしたり、タラタラと過ごさせてもらった。
駆郎君は最初は希更に構っていて、乱入してきた清牙と一騎打ちに負け、不貞腐れてギターを弄り続けていたんだけど。
ミーが最初は若干緊張していた模様だが、希更と同レベルに喚く清牙を見ていたら力も抜けてきたようだ。
基本、駆郎君も舞人君も、女子供には優しいからね。
男共には無駄に厳しいが。
舞人君がそつなく芸能人あるある話なんて始めるものだから、ミーも緊張なんてなくなった。
ただ、余計なこと教え過ぎである。
実名は伏せろ。
相手は天下の女子高生。
話が拡散し過ぎても知らんからな?
そんな感じで、1時過ぎに解散。
未成年が多数混ざってる…過半数以上が未成年の為、実に身綺麗な夜遊びだった。
ゲームしてくっちゃべって、アルコールは一切なし。
私と舞人君は飲んでも大丈夫なんだけど、未成年清牙の機嫌を損ねたくなかったしさぁ。
そこまでして飲まんでもって感じもあった。
多少の夜更かしで、清牙も含め、駆郎君も舞人君もまあ、朝起きれないことはなかった健全さ。
清牙の寝覚めは割といいらしい。
朝からモリモリ食べていた模様。
飲めないからね。
食欲に拍車がかかっているのは仕方がない。
問題は、希更。
ホテルでお泊り、芸能人に大興奮。
それも一緒くたになって熱血ゲームバトル。
そら、1時過ぎまで起きていた結果、7時には起きられなかったのだ。
奴らの出番は昼過ぎとは言え、色々あるので、8時前に会場入りしなければならなかった。
流石の清牙も、すやすや眠る希更を叩き起こすことは出来ず、起きたら連絡するように言い於いて会場入り。
その直後、希更を遠慮なく叩き起こしてご飯食べて、普通に一発目の11時半開始予定の公演を楽しんでますが何か?
一発目は、ミーが聞きたがっていた韓流女性ユニット。
この後は男性ユニットが待っている。
オバサンには言語的にも曲調的にも判別がつきにくい流れに、同意を求められて困ってはいるが、普段聞かない音楽も、生で聞けば楽しいもんである。
途中、清牙だけでなく健吾君にまでお迎え行きましょうかのLINE確認が届いたが、娘達のお目当てがあるので無理と断って、現在。
なぜか、面倒臭いのに絡まれていた。
「本当に、綺麗な顔立ちで。化粧してなくてこれって、ミンナより、綺麗になるんじゃないかなぁ」
まさかの、フェス内のスカウトである。
まあ、関係事務所の人もいるからね。
無い事もないが、同時に嘘臭いのも多い訳だ。
当然、清牙や、健吾君の名前を出せば一発で黙らせられるが、関係者なのがバレ過ぎである。
SPHYは単体事務所だからね。
さっきから興味ないし、楽しんでるの邪魔するなって言っても、聞きゃあしない。
何より、まあ、希更が面白くなかろうと見ていれば、案外冷静だった。
「誰か助けて下さいっ。付きまとわれて困っています!」
それはもう大きな声で叫ばれ、スカウトらしきお兄さんの顔が一瞬で青褪める。
その通りだね。
何かがあった時、大声で助けを呼ぶのは有効な手段です。
学校での学習を忘れてはいなかったようです。
そこで見覚えのあるスタッフTシャツの誰かが来るかと思えば、フェスの会場売りTシャツを着ている、入場チケットぶら下げた一般男性5人程が、怪しげなスカウトマンの腕を掴む。
「嫌がっている方にしつこくするのは良くないですね」
「あちらに、事務局相談窓口があるので一緒に行きましょうか」
「大丈夫ですよ。楽しんで」
にこやかな、推定20代から30代の男性達は、迷惑なスカウトマンを颯爽と連行してしまった。
有難いのは間違いないのだけど、もっと早く来てほしかった?
いや、何かが違う気がする。
「イイ人だったね」
希更?
多分、何か違う。
次は、私お目当てのQEENBEである。
ただ、結構な空きがあるんだよね。
「ご飯にするよ」
時間が空いてる間に食べなければ、ステージ廻れないしな。
「カエちゃん。いい加減に、スマホの電源入れた方が良いと思うよ」
心配そうなミーの忠告。
分かっている。
分かってはいるが、入れたら最後、絶対に煩い。
「セイちゃんがお腹空いたって」
そしてなぜ、希更に清牙からのLINEが届くのか?
「希更ちゃん?」
「昨日、3人にジャイゴとも連絡先交換した」
ホイホイ一般人に、その前に、子供に連絡先渡すな!!
「ダメだよね。交換する時はママの了承取ってからだよね?」
「でも、ママが、交換してもいいけど、名前はそのまま入れちゃダメだし、受けるのは良いけど、私から連絡入れたらダメって。人にも見せちゃいけませんって」
間違っていない。
注意は間違っていない筈なのに、何かが違う。
って言うか、交換するの確定大前提?
「カエちゃん。合田さんがね。間違いなく、清牙さんは交換したがるだろうからって、ママに言ってたよ」
困った顔のミーの付け足しに崩れ落ちそう。
お前か?
用意周到男!
どこまで先を呼んでいるか…清牙が単純過ぎる気がしないでもなく…。
先に了承取れているなら、まあ、そうなるよね。
「迎えに行くってLINE来てるよ」
そう、差し出された希更のスマホ画面。
間違いなく、12時過ぎから30分10分と、途中時間が短くなってきている。
これ以上引っ張ると、本気で奴が出てきかねない。
って言うか、止めろよ関係者!
諦めつつ電源入れてピカピカ光る着信履歴を綺麗に無視して、LINEを送る。
『ランチ購入中。しばし待て』
これでまあ、時間は稼げる。
心構えは出来る筈。
「バックヤードに入ってるの、ラーメンとサンドイッチとカレーだとか言ってたよね?」
「ラーメン屋さんが3軒と、カレー屋さんが2軒にカフェが2つって言ってた。3日間同じ店だから、飽きるんだって」
なんか、そんな話を舞人君がしてたね?
普通の人は、それだけ種類があれば、三日間のご飯は十分回せるのよ?
あなた方は大食漢清牙がいる為、一日で全種類の味を確かめる事が出来る、特殊環境にあるからってだけなんだからね。
健吾君辺りが、フェス内の奴は軒並み用意していそうな気がするんだけど…。
手ぶらで戻る訳にも行くまい。
って言うか、清牙なら、食べた飽きたはあるかもしれないが、量だけで言うなら、あればあるほどいい筈。
「何食べる?」
「ローストビーフ丼」
「カツサンド」
見事な肉食チョイスだな。
まあ、清牙も間違いなく好きなメニューである。
奴は基本お子様舌なので。
「ロコモコ丼とタコライスなら、どっちがいい?」
「ロコモコ」
またもやな肉食チョイス。
実はがっつりお肉が大好きな美凉華ちゃん。
食いしん坊なのに、お肉大好きなのに、太るなんだと、お外では小食気味。
がっつり肉食女子をまい進するだけの図太さはまだ育ってない模様。
小食気味とは言え、普通に食べる。
ただ、目に見えての大食いをしないだけ。
今でも十分細いと、オバチャンは思うのだが、本人は違うらしい。
まあ、それに、ミーは基本、間食しないからね。
希更も、清牙程ではないが、食べてもあまり身にならない体質な為、ミーは影響が出やすい自分に、ちょっと気になるお年頃、なのだ。
目指せ、峰不二子なので。
そう、保育園での将来の夢で「峰不二子」と答えた美凉華。
その直後、余計な事を教えたのはお前かと、あらぬ疑いをかけられた私。
奴が勝手にどこぞで見聞いてきたのだ。
何でもお友達の家で、某推理アニメを見たらしい。
コラボ、やってたもんねぇ。
今でも峰不二子みたいになりたいらしいのだが、若干胸部装甲が薄い事をぐちぐち言っている。
私を見ても、私の肉は上げられない。
っていうか、あげられるなら上げてますがな。
「じゃあ、心して並ぶぞ。お前らも覚悟して持て」
どこの屋台も一杯だし。
清牙の為にも、多分一人5つは丼を持たねばなるまい。
そんな覚悟のまま、一番人気らしいローストビーフ丼の屋台に立てば、さあっと、並んでいた半分が確実に捌けた。
?
何が起こっているか分からない私達にどうぞどうぞと声をかけてくれる親切なお兄さん達。
「我々は、まだ時間の余裕がありますので」
いや、私達も、並んで買う余裕ぐらいあるよ?
実際、自分達のモノを確保した上で、関係者に主に清牙用丼を押し付けて、即行出てくる気満々なのだから。
「カエちゃん。折角だし、譲ってもらおうよ」
にこやかにミーが私を見てお兄さん達を見て頭を下げたら、満足そうに頷かれた。
なぜに?
「お兄さん達、ありがとうございます」
律義にきっちり頭を下げる希更を見ても、うんうん、微笑んでいる。
訳が分からないまま、随分な時短にお礼を言って並ぶ。
随分手慣れた屋台は、さほど時間をかけず順番が着て、私の五つの言葉に一瞬固まったが、やっぱり結構な速さで出てくる。
まあ、こじんまりとした丼。
清牙のオヤツとして片付かなければ良いがと、ロコモコ丼へ移動しても、また同じことが起き、カツサンドでもまたまたお同じことが起きれば、そこに何かしらの忖度が働いていることは分かった。
「もしかして、私ら、身バレしてる?」
そんなにこんなに、善人ばかりが揃ったフェスなんて、恐ろし過ぎる。
「舞人さんが、言ってたよ。黒地に牙のリストバンドしているのは、とりあえず味方だから、困ったことがあれば声かけても大丈夫だって」
何情報?
つまり、そいつらはSPHYの敬虔なる下僕って事ですか?
「声かけない限り、余計なこともしない筈だからって」
その情報を、なぜに私ではなくミーに話すのか。
まあ、当然信用度の問題と言うか?
私が余計なことした時の情報源を潰されたくなかったんだろうけどさぁ。
多いよ?
かなり、黒地のリストバンドいますが?
牙マークまではよう見えない。
全部が全部じゃないと、信じたい。
「さっさと渡して移動しよう」
「いいの?」
ミーの不安そうな顔。
言いたいことは分かる。
経った一晩。
されど一晩。
清牙の俺様我が儘っぷりは、嫌でも理解出来たのだろう。
清牙が、自分達のステージスルーして別のステージ見に行く愚行を許す筈がない事も。
「奴は本番、身動き取れないからね」
幾ら清牙でも、ステージ穴開けて迄追いかけっこはしない。
それをさせない為に、拘束される可能性は若干あるが、奴はなんだかんだと女子供には甘いらしいので、勢いで押せば行ける…筈。
最悪、受付に押し付けて逃げればよくね?
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