6 / 262
再会確保
6
しおりを挟む清牙は、この間の幼馴染がSPHYの仕事をしている関係で、ちょっと知り合ったぐらいで、アイツが人間距離が近過ぎるだけで良く知りません。
今日のも偶々じゃないですかねと押し通した。
今日は幼馴染と飯食いに行く約束をしていたので、その関係で声かけたんですよ。
アイツにメールはしましたのでもう大丈夫です。
かなり強引な言い訳で、ダッシュで出てきた訳だけど、だ。
今、大変困った状況にあった。
何でか…まあ、間違いなく着いてきたのだろう、スーパーが入ってるビルの管理メンテナンス会社の支店長さんが、やたら話しかけてくる。
「テレビ局ってどうやって入るの?」
正面から普通に入る以外に何をしろと?
つーか、なんで着いて来る?
終わって直後、声をかけられたのだ。
久しぶりに。
「お疲れ」から始まって、「有名人と知り合いって凄いね」だとか、「有名なバンドなんだって? 僕は洋楽しか聞かないから知らないけど」や「身内が関係者ってどんな感じ?」とグイグイ来る。
一切答えないままにバスに乗って、それでも着いてきやがって、バスの中でも「バンド名、なんだっけ?」「どんな曲?」「ああ、アニメの曲かぁ。僕見ないしなぁ」と、独り言と話しかけているギリギリの境界線をふらふらしているのもガン無視。
だって町中ですよ?
一番込み合う路線ですよ?
逃げ道なかったんだよ。
そしてそのままバス停降りてテレビ局前。
まだ着いてくるか?
なにがしたい?
本当にいい加減にしてくれと、そいつを見る。
「着いてこないで頂けますか? 迷惑なんで」
もう、限界です。
「なにそれ? 僕もこっちに用があったから、方向が一緒ならって話してただけだろ」
「目的地にどうぞ」
「そういう言い方さぁ、良くないんじゃないかなぁ」
お前の思考回路がおかしいんじゃ!
そう怒鳴ってしまいたいけれど、これから芸能人様に会いに行こうって一般人。
序に言うと、出待ちっぽい女の子と、野郎がチラホラ。
駆郎君が言ってたもんね。
ライブに男しか来ないって酔っぱらって泣きながら。
ちょっと大きいとこでやると女の子がいる事もあるけど、お客様の顔1人1人見えないし、ライブだと会場狭いから一人一人が見えるのに、男しかいないって。
嬉しいけど、キャーキャー言う女の子に交じってほしいとか何とか。
可愛いよね、駆郎君は。
そんな現実逃避している間も、そいつは何か言っていて、聞いていなかった私に苛ついたのか腕を掴んで、そのちょっと訳ありな特殊な様子に視線が集まり、コレどうするよと思ってたところに、なぜか清牙が突っ込んでくる。
「清牙!」
「駆郎は任せろ」
「だから煽るなああ!」
カオスだねと思いながらも、邪魔する舞人君に駆郎君が潰され、自由になった清牙がにこやかにストーカー一歩手前原田さんの腕を叩き落し、私をバックハグ。
後ろに上がる黄色い声と野太い声が、なんなのかを確認したくない。
「遅いんだけど」
肩を完全に抱いて腕に抱きこんで、頭の上からのお言葉は、大変機嫌が宜しくない。
「私だって急いでたんだけど、余計なのついて来てややこしくなったんだよ」
「ふーん。まあ、それより腹減った」
チラリと視線を投げかけた清牙に、奴はすごすご退去していく。
「あ、はいはい。店は予約しといたから」
「さ「あああああああああ。駆郎君舞人君もおいで」」
今、何を言おうとした?
お前、自分がまだ酒が飲めない年齢だっていい加減学べや!
「良かった。清牙が殴らなくて」
恐い事言いながら寄って来ないでね駆郎君。
「あれでお仕舞いで良いのかよ」
煽るな舞人君。
「アイツ、ちょっと見ただけでビビッて弱そうじゃん」
「まあ、清牙に殴られたら死にそうだよな」
「止めろ! 暴力は、分からないとこでこっそりやれ」
駆郎君、必死なのは分かるけど、君の発言もやっぱどこかズレてるから。
「目撃者や証拠がなくても、暴力は良くないと思う」
「姐さんが正論言ってやがる」
「それより、腹が減ったんだって」
「カエさん、本当にすみません。大丈夫ですか? 今、清牙剥がしますんで」
「やだ。姐さん結構涼しい」
「なにが?」
「肌とか冷たい」
だから首に腕が回ってんだな。
清牙なら場所構わず胸とか揉んできそうだけどと思ってしまう辺り、私も色々、疲れたらしい。
仕事帰りだしな。
「何それ。そこ代われ」
「やだ」
「だから、カエさんに抱き着かない暴れない! 写真撮られてるって!」
「動画もな」
「分かってるんなら止めれ!!」
相変わらずな3人に、思わずほっこりしそうになるが、視線は痛い。
特に女性陣。
あの女何?
まあ、それしかないよね。
ないけどね。
まあ、言い訳のしようもなく。
「移動するよ」
そう言って、さっさと止めたタクシーに三人押し込んでから助手席に乗り込む。
後ろからは男3人じゃ狭いと文句が出ていたが、急いでいたので誰が助手席に乗るかの話し合いをしている余裕がなかったのである。
なかったら、なかったので、ある。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる