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一章

閑話 1−5 ある盗賊の話

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  オラはラット。

  本当の名前は違うでゲスが、デェギュラのお頭に名付けられ仲間達からはそう呼ばれているでゲス。

  歯が出て痩せた鼠男みたいだからって…

  王国北を縄張りにしている盗賊団でゲス。

  街道の旅人を襲ったり開拓村で略奪したりと暴れ回っていたでゲス。

   お頭はオーガと見間違うほどデカく、力も凄いでゲス。臭いのは我慢でゲス…

   並の冒険者など返り討ちにするほど強く、護衛や兵士が少しぐらい付いていてもお構いなしでゲス。
  だが臭いでゲス…それでも我慢でゲス…
  お頭の近くでは口で息するでゲス…

  ある日元貴族の坊主が仲間になったでゲス。

  なんだかんだと知恵を授けてくれるでゲス。

  前よりも楽に稼げるようになった事で、お頭に気に入られて副頭目に認められたでゲス。

  坊主は自分を参謀と呼んでくれって言ってきたでゲス。

  なので皆でサンボウと呼んでやることにしたでゲス。

  よくわからんが多分、三男坊だったのみたいでゲス…
  お貴族様でも長男以外は辛いでゲスなあ…

  サンボウの案で、始めにお頭が強さを見せると相手はビビって素直に言うことを聞くようになったでゲス。

  殺しすぎると偉い貴族達が騎士団や上級冒険者に依頼して本格的に討伐隊が来るでゲスか?

  同じ村ばかりではなく、しばらく肥えさせてから襲うらしいでゲス。

  村々を変えて回ったり、旅人を襲う時もいろんな事をさせられたでゲスよ。

  オラ達の境遇も様々でゲス。

  村から追い出された奴、悪事を働いて逃げてきた奴、食うに困った奴、元冒険者や元魔法使いと、バラバラでゲス。

  デェギュラのお頭にサンボウ、 下品だが愉快な仲間達と盗賊稼業に精を出していたでゲス。
  勿論あっちの性もでゲス…ギヒヒヒヒ。

 今回は乗合馬車を襲うらしいでゲス。

  オラはお頭に言われて目当ての馬車を、ある町からこっそりと尾けたでゲス。

  いつもオラがお頭やサンボウに頼まれるでゲス。

  サンボウとオラしか文字の読み書きが出来ないからでゲス。

  オラの置き手紙でサンボウとやり取りしするでゲス。

  そのおかげでオラの立場は安泰でゲスよ。

  しかし検めて遠目から見ても立派な従魔でゲス。

  黒くてデカい巨馬で、こいつを売り払うだけでも良い金になるでゲス。

   護衛も3人と少なく、馭者のおっちゃんもガタイは良さそうでゲスがお頭なら一捻りでゲス。

   若い娘も途中の町で乗ったことだし、その他も随分と楽しめそうでゲス。
  オラは護衛の娘の方が好みでゲス ギヒヒ。

  乗客も家族連れに太った行商人。
  楽な仕事になりそうでゲス。

  しかし…あの乗合馬車は速い、速すぎるでゲス。
  他の馬車の倍のスピードで進むから、中々追いつかないでゲス。

  やっとオラが追いついても仲間達が合流する前に出発してしまうでゲス。

  目印の木に小さな羊皮紙を釘で打ち付け、サンボウに伝言を残すでゲス。

  1枚目

  急いでほしいでゲス!
  獲物の移動がとても速いでゲス。

 2枚目

 かなり急いでくれでゲス!!
 1人じゃ足止めもできね~でゲスよ…

  3枚目

  全速力でお願いするでゲス!!! 
  オラ達の縄張りから出ていっちまうでゲス!

  そうしてあれよあれよと仲間達との合流が長引き、縄張り境の町手前まで来てしまったでゲス…

  その日の夕方…
  やっと仲間達に合流出来てホッとするでゲス。

  このまま奴らを見逃したら、オラの今までの仕事が無駄になっちまうでゲス。

「しかし本当に速すぎる…最初は信じられなかったぞ? ラット」

「で、でもあそこでちゃんと夜営してるでゲスよ!」

  合流した途端、サンボウがそうオラに言ってきたでゲス。

  オラは獲物が広場で夜営の準備をしているのを指差しながら答えるでゲス。

  するとサンボウが疲れた顔でを言い出してきたでゲス。

「襲うのは夜まで待とう…
    皆疲れているし、デェギュラさんがまだ来てない…」

「え?」

「まだ到着してないんだよ…
    あの人デカいし重いから…」

「ああ…途中馬を何頭つぶしたでゲスか?」

「2頭だ…あの巨体だ…馬も可愛そうに…
    俺達の腹の中だ♪」

「オラは1人だけ…
    水とパンと干し肉だったでゲス…」

「ま、まぁ今回の立役者はラットだ。
    デェギュラさんにもちゃんと言っておくよ…」

「サンボウ 頼んだでゲスよ
    じゃないともう役割変わってもらうでゲス…」

「わかったって…」

  話し合いが終わり襲撃に備えて休むでゲス。
  相当急いできたらしいでゲス。
  仲間達は皆ぐったりしていたでゲス。

  その間にオラは久しぶりにまともな食事が取れたでゲス…

夜になりやっとお頭が到着するでゲス。

「遅くなったなお前等 これから行くぞ!」

「今回は生け捕りにするから横に並んでじわじわ進んで脅すやり方です」

  お頭は到着して直ぐでも元気でゲス。
  サンボウが方法を指示してくるでゲス。

   オラも列の右側に入って山狩りみたいに皆で進むでゲス。

   こうすると半分位は戦わないで済むでゲス。

   もう半分は逃げるでゲスが、待ち伏せの仲間達がいて挟み撃ちで一網打尽てゲス。ギヒヒヒヒ…

  むこうも気付いたらしく、馬車を横に向けて前に5人出てきたでゲス。

  たった5人なら楽勝でゲス。
  お頭は最後に後からついてきて、もし列を突破してもお頭が逃さないでゲス。

サンボウの悪知恵には感心するでゲスよ。

  すると、向うから獣魔に乗った奴がこっちに向かってきたでゲス。

  でも…速すぎるでゲス…

  魔獣の赤い目が光り、暗闇の中で線を引いてこちらに突っ込んで来るでゲス。

  乗ってる奴は、なんかデカい物を持っている腕を振り回しながらあっとうまに列の真ん中を通り過ぎたでゲス…

   するとサンボウと元魔法使いのジジイが叫び声をあげたでゲス…
   近寄ると倒れてもう死んでいたでゲス

   ヤバいでゲス…

  でもその先にはお頭が待ち構えているでゲス。ギヒヒヒヒ…

  皆で振り返りお頭に合流するため戻るでゲス。

  しかし突然、男の声が辺り一面に響いたでゲス。

「頭目の首は取ったぞ
   まだ襲う気なら容赦はしない」

  あの魔獣に跨った奴がなにか掲げて叫んだでゲス…
  近くまで皆で寄って松明を掲げてよく見ると、首だけになったデェギュラのお頭に黒く光る大剣が刺さっていたでゲス…

「「「ひ~~~」」」

  オラ達は振り返らずに一目散に逃げたでゲス…
  無我夢中で飲まず食わず逃げて、1日中ひたすらに走ったでゲス…

  相手は追って来なかったらしく逃げ切れてホッとするでゲス…

  疲れ果てて寝てしまうと、夢の中で赤目で漆黒の巨馬に跨がる悪魔に追われるでゲス…
  そして首を跳ねられる直前で起きたオラは全身から汗が吹き出していたでゲス…

  少し漏らした気もするでゲス…

  あれから隠れ家に戻っても毎晩夢に見るでゲス…
  帰ってきた仲間達も同じらしくみんな寝起きの顔色が悪いでゲス…

  それに盗賊仕事をしようと考えるだけで身体が震えて…

  とうとう仲間達は1人、2人と隠れ家からいなくなっていったでゲス…

   オラも…もう足を洗うでゲスよ…
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