運命なんて知らない[完結]

なかた

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好きだよ(後編)

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「好きだよ。雪」
どんな風に何度伝えても意識されることはない。
「僕も」
当たり前にすぐ返ってくる。
安心するけど、何かが足らない。
どうしたら伝わるんだろう。
好きなことが当たり前な関係にも困る。
好きだと言っても照れもしない。
こっちは言われただけで期待するのに。
「雪、好きになっちゃいけない人を好きになったらどうする?」
俺はどうしたらいいのか。
雪の返答次第だ。
「まさか...先生?」
「違うよ。例えばの話」
「えー...難しい。好きになっちゃいけない人?うーん。場合にもよるけどね」
「じゃあ、先生とか」
「先生?先生なら...卒業まで好きでいれたら告白とか?」
先生が好きだとしたら、可能性はほんの少しはあるだろう。
だって、他人だから。血の繋がってない人だ。でも、俺は血の繋がった兄弟を好きになってる。こんなのおかしいんだ。
ずっと一緒いるのに、ずっと側に居たくてそれだけじゃ足りなくなる。
ずっと好きで、嫌いになんてなれない。
一緒にいればいるほど好きだと思ってしまう。それと、同時に両思いになる事はない事実が胸を締め付ける。
「...でも、告白なんてしないだろうな。先生と生徒でしょ?先生だって困るだろうし、それに先生の将来とか考えたらしない。好きな人が自分のせいで好きな事出来なくなるのは嫌かな」
雪らしい答え。よく考えているなと思う。俺は自分が雪の側にいる事ばかり考えて雪がどうしたいのかなんて考えたことなかった。
「もし、諦められなかったら?」
「ずっと好きでいればいいんじゃない?好きってだけなら相手に迷惑かかる事は無いし」
「そんなの辛いよ」
気づけば気持ちが溢れてしまった。
「......本当に誰か好きな人がいるみたい。霜に好かれる人は幸せだね。こんなに思われてて」
本当にそうだったらいいのに。
大切にするから、幸せにするから、好きになってよ。
せき止めるように何度も瞬きをしたけど、もう、溢れて頬が濡れる。
「...そうかな」
「え、霜...泣いて...。えっと...僕、ごめん」
「雪のせいじゃないから、雨のせい」
本当は雪のせい。
諦めきれないのも、好きになったのも全部雪のせい。
慰めだって分かってるのに、そんなの期待する。
ずっと曖昧な癖して、俺が喜ぶ事を弱ってる時に限って言う。きっと、本人にはそんなつもりないけど。
好きと伝えることは無い。
振られるとか、疎遠になるのは耐えられないから。
もし、好きになってくれたら。
雪から伝えてくれないと、俺は言えない。
だから、いつか、好きだと言わせて欲しい。

あの時の願いは叶いそうもなくて、それどころか側にいる事すら出来そうにない。
過去の俺に忠告したい。
そんな期待はするなと。
きっと忠告を聞いても、聞かなくても雪を好きなのは今も昔も変わらずに好きなんだろうけど。








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