運命なんて知らない[完結]

なかた

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墓場まで持って行って

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いつもの先生が戻って来て検査が始まった。フェロモンを測るための血液検査をしたら、カウンセラーと話すそうだ。
今回のヒートはストレスが原因らしい。
確かに昨日は疲れていた。
色々なことがあって頭がパンクしそうだった。
オメガのケアも病院の仕事で話を聞くのが当たり前なんだそうだ。
でも、僕の場合は他人に話す内容でもないし霜に一番に話したい。
そう思ったら検査に向かう足が重く感じた。
血液検査をさっさとしてカウンセラーとの話は適当にすませよう。
血液検査が終わり、ソファのある部屋に来た。
病院のはずなのにリビングに置いてあるような家具があって頭が混乱する。
違和感がすごすぎて気持ち悪い。
カウンセラーが来る時間より早く来てしまったようだった。
この不自然すぎる部屋に一人でいるのはやだな。
ソファに座って窓の外を見る。
外は通勤通学している人がちらほらしていた。レポート終わってないな。
早く退院したい。
「お待たせしました」
「先生って精神科なんですか」
「いえ、本当は来る予定だった先生が雪さんのフェロモンにあてられて来れなくなったんです。他の先生もキツそうなので私が来ることになりました」
「それはごめんなさい」
「謝ることではありません。どうしようも出来ないことですし、私も同じ部類ですので」
「先生は昔と違って全然匂いしませんね」
「無理矢理抑えてるんです。強い薬なので副作用も強いんですけど」
「それってΩ用のはありますか」
「あるにはあるんですが、患者には処方出来ないんです。まだ試作段階ですので。」
「...そうですか」
「私も君も早く番をつくってしまえば楽になるのに。それが出来ない」
「運命も気持ちも知らないふりすれば誰かしらは番になってくれますかね。婚活しようかなぁ」
「自分を安売りしないでください。そんな事するなら私がいくらでも紹介します」
「本当?じゃあ、退院したらお願いします」
「霜くんに怒られると思いますけど」
「いいんです。そろそろ弟離れしなきゃ」
「雪さんが離れても、霜くんは離れてくれないですよ」
「番が出来たら離れますよ。僕も霜も。それに霜にはもう、ふさわしい人がいるでしょう?」
「やめてください。そんな顔で言わないでください。それに、俺が好きなだけで霜は違います。あなたにそんなこと言われたら俺の立つ瀬がない」
「ごめんなさい。それでも僕じゃダメだから」
僕じゃダメなんだ。
「俺だってダメだ。霜の隣は......」
「先生。そのまま飲み込んで、言わないで」
「......すみません。感情的になってしまいました」
「僕がカウンセラーみたいですね」
「本当ですね。今からちゃんとやります。質問するので答えてください」
質問をいくつかされ、先生が記録をした。
案外すぐに終わった。
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