運命なんて知らない[完結]

なかた

文字の大きさ
上 下
28 / 53

早くきて

しおりを挟む
三佳巳さんと別れた後、アパートに着くまで何から話そうかずっと考えていたけど、纏まらないまま家に着いてしまった。
どうしようかと思って、窓を見たら電気がついて無くて霜はどこかに出掛けたようだった。
まだ考える時間がある。よかった。そう思って鍵を開けて家に入る。
霜がいないだけで不思議な感じがする。
いつもは僕より先に帰っているからかな。
手を洗って、ソファに座って話すことを整理する。
まず、僕と霜は双子じゃないこと。
そして、霜のお母さんのこと。
これは絶対に話す。
後の一つはやめておこう。きっと霜にも考えがあるのだろう。
霜が言ってくれるまで待とう。
僕は双子じゃないと分かっても霜のことが変わらず大切だ。
霜もきっとそうだと思う。
だから何も心配せずに話せる。
でも、番の話は家族でも兄弟でも友達でもどんな関係でも触れにくい。
2次性別なんて番なんて運命なんて全部なければこんなに悩まなかった。
聞きたいのに聞けない。
苦しいな。
僕にも運命が来てくれたら、何も考えずに側に行くのに。
本格的に番を探さないと霜がいなくなる前に霜が安心して番えるように。
きっと霜が番わないのは僕がいるせいだ。
僕がいつまでも心配かけているから、運命に会えない癖にフェロモンは強いし発情期も長い。薬も効きにくい。
早く番えば霜も安心するし、発情期のストレスもなくなる。いいことの方が多いのに番いたくないと思うのはなんでなんだろう。
もういっそ、聞いてしまったらいいんじゃないかとした思う。でも、その答えを知りたくない自分もいる。
どうしたらいいんだろう。
ぐるぐる考えたいたらいつのまにか寝ていたようで隣には霜が座っていた。
霜は起きたの気づいてない。
霜の肩から伝わる体温とかけてくれたブランケットのおかげで暖かいというか熱い。
熱でもあるのかな。
そう思ったら一気にだるい気がして、まぶたが落ちてきそうになった。
霜は本を読んでいるのか紙をめくる音がする。
寝てしまう前に話さないと。
「霜、話さないといけないことがあって」
「起きたんだ。それより雪、発情期きてるよ。俺でも分かるくらい」
霜がなに言ったのか分からなかったけど、何も考えられずに言おうと思っていたことを思い出しながら言う。
「あのね僕と霜、双子じゃないの。あのひとは、」
「うん。後でしっかり聞くから薬飲もう」
「いまじゃないと、霜のおかあさんは霜のこと大事にしてたよ」
「そっか。ありがとう、雪。知れて良かった。でも、そろそろ薬飲まないと」
だめだ。体に力が入らない。熱い。
苦しい。
霜が焦っている顔をを見ながら意識を手放した。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

処理中です...