運命なんて知らない[完結]

なかた

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好きでした

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寒くなって来て、雪が降る季節になった。
この季節はどうしても電気代が高くなる。
なるべく、節約しないと。
夜は暖房を使わないで、湯たんぽを使おう。あとは、晩ご飯はなるべくあったかいものにする。
「雪。寒くない?暖房つけようよ」
「ダメ!今、使ったら本当に寒い時に使えなくなるよ」
「確か去年は寒い時に使えなかったよね」
去年は時期を見誤ってしまい、寒いのに暖房とストーブなしで乗り切ることになった。ギリギリまで大学やバイト先にいて暖をとっていた。
そのおかげで寒さ耐性が上がった気がする。
「雪、今日は晩ご飯いらない。こないだの友達が話したいことあるって」
「運命の番が音信不通の子?」
「そう。いい知らせだといいけど」
「そうだね。せっかく運命の人と会えてその上恋人になったんだから、いい方向に行くといいね」
「αもαで大変だよね。勝手に籍入れられてたりするし」
「そうなの!? 親が勝手やっちゃったってこと? 」
「うん。知らないうちに結婚してたらしい」
「結婚相手も知らなかったのか知ってたのか気になる」
「相手も相手だよね」
「運命の番でも上手くいかないことあるんだね」
「運命の番だからじゃない?ドラマみたい」
「番になるのも大変なんだな」
「やっぱり、番はいらない気がしてきた」
「まあ、何かしら問題は出てくるだろうね」



こないだ行った居酒屋に行くと早坂が来ていた。
「南雲は?」
「まだ来てないよ。あの後、どうなったんだろ」
「そういえば、早坂は諦めるの?」
「何を?」
「南雲のこと」
「あー、気づいてたんだ」
「分かりやすかったよ」
「マジか。南雲のことは諦めるよ。運命の番には勝てないし、それに2人が愛し合ってるなら引き裂きたくはない」
「そっか」
早坂らしいや。早坂は本当に性格がいい。
仏なんじゃないかって思うくらいに。自分の幸せより人の幸せを当たり前のように優先する。
今まで会ったなかで早坂より出来た人間はいない。
早坂に報われて欲しいとも思うけど、本人が諦めるなら俺にはどうしようもない。
「鮎川、ありがとうな」
「何が?」
「今のでちゃんと気持ちを整理できたから。南雲と会う前に諦めるって決めてたんだけど諦められなさそうになかったから」
「別に。俺が知りたかっただけだから」
「鮎川がこないだ言ってやつ、好きでいてもいいってのも俺は結構嬉しかったんだ。俺の気持ちはダメなものだって思ってけど、好きでいるくらいはいいんだって思えたし」
「好きでいるくらいはいいと思うんだ。バレたら相手を困らせるけど、ずっと言わないで心の中にしまっておけば何も変わらないままだし」
「苦しくないの?」
「苦しくても、ずっと好きでいれる相手と一緒に居たいんじゃない」
「そうだね。俺もそうだった」
早坂は本当に南雲が好きだったんだな。
二次性別なんてなかったら、早坂も思いを伝えられたのかな。
「南雲、遅いね」
「話があるって言ってたのに遅れてくるなんて」
「いつものことじゃん」
「先になんか頼んでいいかな」
「俺もお腹空いた。頼んでいいよ」
「何頼む?」
「遅くなってごめん!」
「なんかあったの?」
「思ったより、道が混んでた」
「結局、どうなったの?」
「離婚の手続きと相手の親への説明で忙しかったんだって。政略結婚だったから、お金とかの問題もあって」
「じゃあ、別れてないんだ」
「うん!やっと番になれるの。籍はもう入れたんだ」
結局、別れてないのか。
早とちりで早坂を勧めなくてよかった。
どっちも傷つくことになってた。
やっぱり、運命ってすごいな。
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