20 / 53
いつも通りがいい
しおりを挟む
霜の発情期が終わってから、あの日の喧嘩はなかったことかのように今まで通りだ。
でも、今回の発情期で気になったことがある。
霜と先輩は運命の番かもしれない。
霜が先輩の匂いを不快に思ってないこと発情期も早まっただけだけど、充分ある話だ。霜は好きではなさそうだけど、先輩は多分好きなんだろうな。
霜は気づいてないけど、本当しっかりマーキングされてるし。
本当にそろそろ、弟離れしないと。
ポケットに入ってるスマホが揺れた。
三佳巳さんから電話だ。
母さんのことで電話番号だけ教えたんだった。
「もしもし」
「雪くん、君たちのお母さんが入院することになって話すのは結構後になるかも」
「え、あ、大丈夫なんですか?」
「うん。今は手術が成功して落ち着いてる。脳に腫瘍があって」
「脳?結構大変なやつじゃないですか!」
「そんなに大きくないうちに手術で摘出出来たから大丈夫だって」
「よかった。あのお見舞いって行けますか?」
「うん。もう少し回復したらお見舞い大丈夫になるから、今度一緒に行こうか」
「ありがとうございます!」
「うん。じゃあ切るね」
「はーい」
大事にならなくてよかった。
まだ話も聞けてないし、でも本当によかった。
霜と先輩のこともあるけど、母さんとのこともあって最近はずっと考える気がする。
こないだ買った煙草は終わっちゃったけど、霜に吸ってるのがバレたばかりだし吸いたくないな。
でも、考える時に吸ってたせいですごく吸いたい。
「電話、誰から?」
「三佳巳さんから、母さんが入院したんだって」
「大丈夫なの?」
「うん。手術して大丈夫になったんだって」
「よかったね。雪、今日は鍋にしよう。俺が作る」
「本当? 作れる?」
「うん。任せて。動画見てめっちゃ美味しそうだったから作ってみたくて」
「何作るの?」
「肉団子が入ってる鍋」
霜が料理を作るのは珍しい。
普段は僕が作っているから、霜に料理を教えた方がいいのかな。やっぱり、いつかは別々に暮らさないといけなくなるだろうし。でも、やっぱりまだ離れたくない。
いきなりなんて離れられない。
これはまた今度考えよう。
「雪。やっぱり肉団子以外作ってくれない?」
「えー、自分で作ってみなよ」
「お願い!肉団子は完璧に作るから」
「もー。しょうがないなぁ。じゃあ、肉団子は任せた」
「了解!」
肉団子以外を作るといっても野菜切って鍋に入れて鍋の素を入れればできてしまうから簡単だ。
「2人で料理するの久々だね」
「引っ越してきた時は確か交代で作ってたよね」
「あの時は忙しくて、スーパーで割引のお惣菜買ってお米だけ炊いてたから」
「今じゃ考えられないな。お惣菜でよく満足してたな」
「バイトにレポートに忙しすぎて、食べる暇なかったよね。霜はあの頃なんのバイトしてたっけ?」
「大学1年なら、回転寿司とカラオケを掛け持ちしてた頃かな。雪は?」
「そうだったね。僕は居酒屋とコンビニ」
「あー。雪、コンビニのお客さんにストーカーされたの思い出した」
「あったね。忙しくて僕は気づいてなかったけど霜が気づいたんだよね」
「マジで焦った。家は特定されなかったけど、駅まで着いて来てたし。でも、雪が彼氏いるって言ったら治ったんだよね?」
「そうそう。彼氏いるって言ったら走ってどっか行っちゃってから、もう来なくなったんだよ」
「普通に怖かった」
「まあ、やめてくれたんだし」
「高校の時もさ、めっちゃモテてたじゃん」
「さすがにΩの子に告白された時はびっくりした。Ω同士なら僕はどっちなんだろうって思って抱きたいのか抱かれたいのかどっちなのか聞いたら」
「抱きたいだったんだよね。Ωすら抱きたい男ってよばれてた」
「心外だったけどね。あの子の方が可愛かったから」
「その可愛いあの子が抱きたいなんて、雪は周りから見ても相当可愛いんだね」
「それは霜もでしょ? 告白すごいされてたじゃん」
「雪には敵わないよ」
「僕は今まで生きてきた中で霜以上に可愛くてかっこいい人見たことないけどね」
「そういう思わせぶりな態度取るからストーカーされるんだよ」
「霜以外には言わないよ」
「本当に雪が心配」
いつものように会話が弾む。
やっぱり、喧嘩よりいつも通りがいい。
このくらいが一番だ。
でも、今回の発情期で気になったことがある。
霜と先輩は運命の番かもしれない。
霜が先輩の匂いを不快に思ってないこと発情期も早まっただけだけど、充分ある話だ。霜は好きではなさそうだけど、先輩は多分好きなんだろうな。
霜は気づいてないけど、本当しっかりマーキングされてるし。
本当にそろそろ、弟離れしないと。
ポケットに入ってるスマホが揺れた。
三佳巳さんから電話だ。
母さんのことで電話番号だけ教えたんだった。
「もしもし」
「雪くん、君たちのお母さんが入院することになって話すのは結構後になるかも」
「え、あ、大丈夫なんですか?」
「うん。今は手術が成功して落ち着いてる。脳に腫瘍があって」
「脳?結構大変なやつじゃないですか!」
「そんなに大きくないうちに手術で摘出出来たから大丈夫だって」
「よかった。あのお見舞いって行けますか?」
「うん。もう少し回復したらお見舞い大丈夫になるから、今度一緒に行こうか」
「ありがとうございます!」
「うん。じゃあ切るね」
「はーい」
大事にならなくてよかった。
まだ話も聞けてないし、でも本当によかった。
霜と先輩のこともあるけど、母さんとのこともあって最近はずっと考える気がする。
こないだ買った煙草は終わっちゃったけど、霜に吸ってるのがバレたばかりだし吸いたくないな。
でも、考える時に吸ってたせいですごく吸いたい。
「電話、誰から?」
「三佳巳さんから、母さんが入院したんだって」
「大丈夫なの?」
「うん。手術して大丈夫になったんだって」
「よかったね。雪、今日は鍋にしよう。俺が作る」
「本当? 作れる?」
「うん。任せて。動画見てめっちゃ美味しそうだったから作ってみたくて」
「何作るの?」
「肉団子が入ってる鍋」
霜が料理を作るのは珍しい。
普段は僕が作っているから、霜に料理を教えた方がいいのかな。やっぱり、いつかは別々に暮らさないといけなくなるだろうし。でも、やっぱりまだ離れたくない。
いきなりなんて離れられない。
これはまた今度考えよう。
「雪。やっぱり肉団子以外作ってくれない?」
「えー、自分で作ってみなよ」
「お願い!肉団子は完璧に作るから」
「もー。しょうがないなぁ。じゃあ、肉団子は任せた」
「了解!」
肉団子以外を作るといっても野菜切って鍋に入れて鍋の素を入れればできてしまうから簡単だ。
「2人で料理するの久々だね」
「引っ越してきた時は確か交代で作ってたよね」
「あの時は忙しくて、スーパーで割引のお惣菜買ってお米だけ炊いてたから」
「今じゃ考えられないな。お惣菜でよく満足してたな」
「バイトにレポートに忙しすぎて、食べる暇なかったよね。霜はあの頃なんのバイトしてたっけ?」
「大学1年なら、回転寿司とカラオケを掛け持ちしてた頃かな。雪は?」
「そうだったね。僕は居酒屋とコンビニ」
「あー。雪、コンビニのお客さんにストーカーされたの思い出した」
「あったね。忙しくて僕は気づいてなかったけど霜が気づいたんだよね」
「マジで焦った。家は特定されなかったけど、駅まで着いて来てたし。でも、雪が彼氏いるって言ったら治ったんだよね?」
「そうそう。彼氏いるって言ったら走ってどっか行っちゃってから、もう来なくなったんだよ」
「普通に怖かった」
「まあ、やめてくれたんだし」
「高校の時もさ、めっちゃモテてたじゃん」
「さすがにΩの子に告白された時はびっくりした。Ω同士なら僕はどっちなんだろうって思って抱きたいのか抱かれたいのかどっちなのか聞いたら」
「抱きたいだったんだよね。Ωすら抱きたい男ってよばれてた」
「心外だったけどね。あの子の方が可愛かったから」
「その可愛いあの子が抱きたいなんて、雪は周りから見ても相当可愛いんだね」
「それは霜もでしょ? 告白すごいされてたじゃん」
「雪には敵わないよ」
「僕は今まで生きてきた中で霜以上に可愛くてかっこいい人見たことないけどね」
「そういう思わせぶりな態度取るからストーカーされるんだよ」
「霜以外には言わないよ」
「本当に雪が心配」
いつものように会話が弾む。
やっぱり、喧嘩よりいつも通りがいい。
このくらいが一番だ。
19
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。


金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる