運命なんて知らない[完結]

なかた

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どんな時も側にいたい

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雪が話してくれるのを待つべきか。それとも聞くか。
俺は早く聞きたいけど、雪は後で話すって言ってくれたし待った方がいいか。
でも、雪のことだし忘れてる可能性もある。大事なことだし話して欲しい。
どっちなんだ。一か八かで聞こう。
雪がお風呂から出たら、それとなく普通に聞けば大丈夫だ。
そういえば、雪は櫻田川のお父さんに気に入られたって言ってたけど気に入られたぐらいでお見合いが進んだりしないよね。
雪ってなんであんなに好かれやすいんだろう。
雰囲気かな。如何にもお人好しって感じだし、ふわふわしてるし、優しい。逆に好きにならない方が珍しいか。
だって嫌いになる要素がない。
強いて言うなら、危なっかしいところ? 
でも、そこすら守ってあげたいとか可愛いって思われるんだろうな。
だって高校生の時、仲良かった先輩が危なっかしいとこすら可愛いって言ってた。
雪を見て言ったんじゃないけど。
先輩、元気かな。たまに会いたくなる。
医者になるって言ってたけど不良にしか見えなかった。本当に医者になれたのかな。
頭は良かったから、本当になってるかも。
先輩が医者なんて想像出来ないけど。
たまに連絡してもいいかな。聞きたいことがある。
アカウント変わってたら会えないけど、連絡だけでもしようかな。
変わってなかったら、きっと昔みたいにすぐ返事がくるんだろうな。既読無視とか未読無視が嫌いな人だった。

『先輩。久しぶり』

今はこれだけでいいや。いきなり会いたいって言っても困るだろうし。

『久しぶり。連絡くると思わなかった』

やっぱり、早い。アカウントも変えてない。

『聞きたいことがあるのと会いたいって思って』

『珍しい。また、雪くん?』

『そんなとこです』

『俺に聞きたいことって言ったらそれくらいでしょ』

『それだけじゃないですよ。医者になれたのか会って聞かせてください』

『今じゃなくて?』

『会ってからのお楽しみにとっといて』

『しょうがないな』

『じゃあ、あの喫煙所で水曜日のいつもの時間』

『了解です』

先輩と会ったのは喫煙所。煙草を吸っていたわけじゃない。その近くに猫が住んでた。勝手にぴー太郎って名前をつけて会いに行っていた。
雪とよく会いに行って猫じゃらしとかで遊んでいた。
鼻の穴が小さいのか寝てるとよく鼻をぴーって鳴らしてた。だから、ぴー太郎。
雪がそう呼んでた。よくよく考えなくても、やっぱり雪はネーミングセンスがない。ぴー助の方が絶対にいいと思う。
雪が発情期で学校を休んでた時に一人でぴー太郎に会いに行ったら、先輩にあった。
それで、たまに話してたくらいの仲だ。

「霜、お風呂上がったよ。」

もう上がったんだ。聞かないと、落ち着いて、平常心。

「雪。今日、母さんとどうだったの?」
大丈夫。普通に聞けた。
「あ、ごめん。忘れてた。」
忘れてただけか。言いたくないとかじゃなくてよかった。やっぱりこの話題は緊張するな。
「なんか長い話になるらしくて別の日に話すことになった」
じゃあ、また櫻田川の家に行かないといけないってことか。やだな。心配だし。
「でね、僕にしか話せないことがあるから霜は一緒に来れない」
は? そもそも、本当に母さんなの?
それすら怪しいのに、俺は来るなって何言ってんの?
怪しいところに雪、一人で行かせると思ってるの?
まあ、別に会いたいわけではないけど、双子なのに俺だけ仲間はずれってのもおかしいでしょ。
「母さんには会わないけど、せめて一緒に櫻田川さんの家に行くのは?」
「それはいいと思うけど、なんで?」
なんで? なんでって、そりゃあ雪が心配だからに決まってる。それに雪が傷つくような話聞かされるかもしれない。普通にαの家にで行かせたくない。
「雪が傷つく話かもしれないから、聞けなくてもせめて雪の側にいてあげたい。ちゃんと待ってるから」
「そういうことなら」
いい話ではない。捨てたことについて話すんだから。
だから、その話を聞いた雪の側にいることぐらいは許して欲しい。きっと、優しい雪には辛い話になる。家族に憧れを持ってる雪なら尚更。
そういう時に側にいたい。完全に俺のエゴだけど。
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