13 / 53
困っちゃうよ
しおりを挟む
「雪くん、じゃあ、行こうか」
「はい」
「雪、頑張ってね」
「うん」
三佳巳さんの後ろについて歩く。
廊下もやっぱり豪華で壁に絵画が飾られている。
三佳巳さんがノックをする。
どうやら部屋に着いたようだ。
「失礼します」
「どうぞ」
「番候補の鮎川 雪くんです。さっきの子の双子の兄です。」
「よろしくお願いします」
優しい雰囲気のお母さんだなぁ。着物が良く似合っていて流石、社長夫人って感じだ。お父さんの方は寡黙そうでこちらをじっと見てる。
「よろしくね。この人は櫻田川 勝司、私は静子です」
三佳巳さんはお母さん似だなぁ。眉毛はお父さん似だけど他は全部お母さんのパーツだ。お母さんが美人で、お父さんは何と言えば良いんだろう。威厳がありそう。
「父さんは人見知りなんだ」
「そうなんですね」
言ったら悪いが、この見た目で人見知りなんてすごいギャップだ。
「お客様が来た時も一言も喋らないから本当に困っちゃうわよね」
「静子が話し過ぎなだけだ」
お父さんが喋った。こんな声なんだ。
「あら、じゃあ来客対応二度としませんから」
「それは困る」
「仲が良いよね。結婚する前かららしいよ」
「素敵ですね。憧れます」
「憧れるなんて嬉しいこと言ってくれるのね」
「尻に敷かれるだけだぞ」
意外だ。こんなに威厳がありそうな人が奥さんの尻に敷かれてるなんて、でも、なさそうでありそうだ。
「雪くんの尻に敷かれるなんて想像出来ないな」
「頑張ればできるかもしれないです」
「三佳巳は惚れたらとことん尽くすタイプだから勝司さんみたいになりそうね」
「そうなんですか?意外です」
「いつも、飄々としてるけど好きな子が出来たら尽くすのよ」
「僕、意外と雪くんに尽くしてるつもりなんだけどなぁ」
嘘だろうけど、尽くしてる三佳巳さんは想像出来ないな。
「雪くんは三佳巳の番になれそうね。霜くんもだけど、三佳巳は素敵な子ばかり連れてくるから困っちゃうわ」
「素敵だなんて、ありがとうございます」
「じゃあ、また会えるのを楽しみしてるわね」
「いつでも来なさい」
「勝司さんもあなたが気に入ったみたいね。珍しいわ」
「静子に似ている」
どこが似てるのかわからないけど、嫌われるより良いか。
「確かに、母さんに似てるかも」
「本当ですか?すごく嬉しいです」
三佳巳さんまで、こんな気品がある人に似てるって言われても無理があるよ。
「じゃあ、そろそろ時間だから戻ろうか」
「はい。貴重な時間をありがとうございます」
「こちらこそ。またいらしてね」
「一応聞くけどさ番になる気は無いよね?」
「ないです」
「ないのにあんな気に入られるなんて他の子が本当に不憫」
「そんなこと言われても」
「やっぱり、母さん達は見る目があってやだなぁ」
「それは良いことなんじゃ」
「今は迷惑だよ。だってお金目当ての子と結婚出来なくなっちゃうじゃないか」
「普通、お金目当ての子とは結婚したくないんじゃないですか?」
「そうだけど、雪くんには早い話かな」
「子供扱いしないでくださいよ」
「話しても分からないよ」
「じゃあ、いいや」
分からないならしょうがない。そこまで言いたくないんだろうし。
「引き下がるんだ」
「別に知りたいとも思わないですから」
「そっか」
霜がいる応接室に着いた。
「ただいま。霜」
「おかえり。疲れた?」
「ちょっとね」
今日は緊張することばかりあった。
実の母らしき人にも会ったし、普段は喋らない人とも喋った。
「俺も疲れた」
「そうだ。頑張ったご褒美にオムレツね」
「楽しみにしてる」
「じゃあ、送ってくね」
三佳巳さんの家を出て車に乗る。
「霜くんは母さんに気に入られてるし雪くんは父さんに気に入られてるし、本当どうしたもんかなぁ」
三佳巳さんが分かりやすくため息をついた。
「番にならない子が気に入られても困るよね」
「三佳巳さんがもっと気に入って貰えるような人を連れてくれば良いんですよ」
三佳巳さんなら引くて数多だし、すぐ見つかるだろう。
「そうだと良いけど」
「はい」
「雪、頑張ってね」
「うん」
三佳巳さんの後ろについて歩く。
廊下もやっぱり豪華で壁に絵画が飾られている。
三佳巳さんがノックをする。
どうやら部屋に着いたようだ。
「失礼します」
「どうぞ」
「番候補の鮎川 雪くんです。さっきの子の双子の兄です。」
「よろしくお願いします」
優しい雰囲気のお母さんだなぁ。着物が良く似合っていて流石、社長夫人って感じだ。お父さんの方は寡黙そうでこちらをじっと見てる。
「よろしくね。この人は櫻田川 勝司、私は静子です」
三佳巳さんはお母さん似だなぁ。眉毛はお父さん似だけど他は全部お母さんのパーツだ。お母さんが美人で、お父さんは何と言えば良いんだろう。威厳がありそう。
「父さんは人見知りなんだ」
「そうなんですね」
言ったら悪いが、この見た目で人見知りなんてすごいギャップだ。
「お客様が来た時も一言も喋らないから本当に困っちゃうわよね」
「静子が話し過ぎなだけだ」
お父さんが喋った。こんな声なんだ。
「あら、じゃあ来客対応二度としませんから」
「それは困る」
「仲が良いよね。結婚する前かららしいよ」
「素敵ですね。憧れます」
「憧れるなんて嬉しいこと言ってくれるのね」
「尻に敷かれるだけだぞ」
意外だ。こんなに威厳がありそうな人が奥さんの尻に敷かれてるなんて、でも、なさそうでありそうだ。
「雪くんの尻に敷かれるなんて想像出来ないな」
「頑張ればできるかもしれないです」
「三佳巳は惚れたらとことん尽くすタイプだから勝司さんみたいになりそうね」
「そうなんですか?意外です」
「いつも、飄々としてるけど好きな子が出来たら尽くすのよ」
「僕、意外と雪くんに尽くしてるつもりなんだけどなぁ」
嘘だろうけど、尽くしてる三佳巳さんは想像出来ないな。
「雪くんは三佳巳の番になれそうね。霜くんもだけど、三佳巳は素敵な子ばかり連れてくるから困っちゃうわ」
「素敵だなんて、ありがとうございます」
「じゃあ、また会えるのを楽しみしてるわね」
「いつでも来なさい」
「勝司さんもあなたが気に入ったみたいね。珍しいわ」
「静子に似ている」
どこが似てるのかわからないけど、嫌われるより良いか。
「確かに、母さんに似てるかも」
「本当ですか?すごく嬉しいです」
三佳巳さんまで、こんな気品がある人に似てるって言われても無理があるよ。
「じゃあ、そろそろ時間だから戻ろうか」
「はい。貴重な時間をありがとうございます」
「こちらこそ。またいらしてね」
「一応聞くけどさ番になる気は無いよね?」
「ないです」
「ないのにあんな気に入られるなんて他の子が本当に不憫」
「そんなこと言われても」
「やっぱり、母さん達は見る目があってやだなぁ」
「それは良いことなんじゃ」
「今は迷惑だよ。だってお金目当ての子と結婚出来なくなっちゃうじゃないか」
「普通、お金目当ての子とは結婚したくないんじゃないですか?」
「そうだけど、雪くんには早い話かな」
「子供扱いしないでくださいよ」
「話しても分からないよ」
「じゃあ、いいや」
分からないならしょうがない。そこまで言いたくないんだろうし。
「引き下がるんだ」
「別に知りたいとも思わないですから」
「そっか」
霜がいる応接室に着いた。
「ただいま。霜」
「おかえり。疲れた?」
「ちょっとね」
今日は緊張することばかりあった。
実の母らしき人にも会ったし、普段は喋らない人とも喋った。
「俺も疲れた」
「そうだ。頑張ったご褒美にオムレツね」
「楽しみにしてる」
「じゃあ、送ってくね」
三佳巳さんの家を出て車に乗る。
「霜くんは母さんに気に入られてるし雪くんは父さんに気に入られてるし、本当どうしたもんかなぁ」
三佳巳さんが分かりやすくため息をついた。
「番にならない子が気に入られても困るよね」
「三佳巳さんがもっと気に入って貰えるような人を連れてくれば良いんですよ」
三佳巳さんなら引くて数多だし、すぐ見つかるだろう。
「そうだと良いけど」
12
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。


金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる