運命なんて知らない

なかた

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困っちゃうよ

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「雪くん、じゃあ、行こうか」
「はい」
「雪、頑張ってね」
「うん」
三佳巳さんの後ろについて歩く。
廊下もやっぱり豪華で壁に絵画が飾られている。
三佳巳さんがノックをする。
どうやら部屋に着いたようだ。
「失礼します」
「どうぞ」
「番候補の鮎川 雪くんです。さっきの子の双子の兄です。」
「よろしくお願いします」
優しい雰囲気のお母さんだなぁ。着物が良く似合っていて流石、社長夫人って感じだ。お父さんの方は寡黙そうでこちらをじっと見てる。
「よろしくね。この人は櫻田川 勝司、私は静子です」
三佳巳さんはお母さん似だなぁ。眉毛はお父さん似だけど他は全部お母さんのパーツだ。お母さんが美人で、お父さんは何と言えば良いんだろう。威厳がありそう。
「父さんは人見知りなんだ」
「そうなんですね」
言ったら悪いが、この見た目で人見知りなんてすごいギャップだ。
「お客様が来た時も一言も喋らないから本当に困っちゃうわよね」
「静子が話し過ぎなだけだ」
お父さんが喋った。こんな声なんだ。
「あら、じゃあ来客対応二度としませんから」
「それは困る」
「仲が良いよね。結婚する前かららしいよ」
「素敵ですね。憧れます」
「憧れるなんて嬉しいこと言ってくれるのね」
「尻に敷かれるだけだぞ」
意外だ。こんなに威厳がありそうな人が奥さんの尻に敷かれてるなんて、でも、なさそうでありそうだ。
「雪くんの尻に敷かれるなんて想像出来ないな」
「頑張ればできるかもしれないです」
「三佳巳は惚れたらとことん尽くすタイプだから勝司さんみたいになりそうね」
「そうなんですか?意外です」
「いつも、飄々としてるけど好きな子が出来たら尽くすのよ」
「僕、意外と雪くんに尽くしてるつもりなんだけどなぁ」
嘘だろうけど、尽くしてる三佳巳さんは想像出来ないな。
「雪くんは三佳巳の番になれそうね。霜くんもだけど、三佳巳は素敵な子ばかり連れてくるから困っちゃうわ」
「素敵だなんて、ありがとうございます」
「じゃあ、また会えるのを楽しみしてるわね」
「いつでも来なさい」
「勝司さんもあなたが気に入ったみたいね。珍しいわ」
「静子に似ている」
どこが似てるのかわからないけど、嫌われるより良いか。
「確かに、母さんに似てるかも」
「本当ですか?すごく嬉しいです」
三佳巳さんまで、こんな気品がある人に似てるって言われても無理があるよ。
「じゃあ、そろそろ時間だから戻ろうか」
「はい。貴重な時間をありがとうございます」
「こちらこそ。またいらしてね」


「一応聞くけどさ番になる気は無いよね?」
「ないです」
「ないのにあんな気に入られるなんて他の子が本当に不憫」
「そんなこと言われても」
「やっぱり、母さん達は見る目があってやだなぁ」
「それは良いことなんじゃ」
「今は迷惑だよ。だってお金目当ての子と結婚出来なくなっちゃうじゃないか」
「普通、お金目当ての子とは結婚したくないんじゃないですか?」
「そうだけど、雪くんには早い話かな」
「子供扱いしないでくださいよ」
「話しても分からないよ」
「じゃあ、いいや」
分からないならしょうがない。そこまで言いたくないんだろうし。
「引き下がるんだ」
「別に知りたいとも思わないですから」
「そっか」
霜がいる応接室に着いた。
「ただいま。霜」
「おかえり。疲れた?」
「ちょっとね」
今日は緊張することばかりあった。
実の母らしき人にも会ったし、普段は喋らない人とも喋った。
「俺も疲れた」
「そうだ。頑張ったご褒美にオムレツね」
「楽しみにしてる」
「じゃあ、送ってくね」
三佳巳さんの家を出て車に乗る。
「霜くんは母さんに気に入られてるし雪くんは父さんに気に入られてるし、本当どうしたもんかなぁ」
三佳巳さんが分かりやすくため息をついた。
「番にならない子が気に入られても困るよね」
「三佳巳さんがもっと気に入って貰えるような人を連れてくれば良いんですよ」
三佳巳さんなら引くて数多だし、すぐ見つかるだろう。
「そうだと良いけど」
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