12 / 53
愛だとかより
しおりを挟む
雪が心配でしょうがない。
信用できるかも分からないαの家になんて来させたくなかったし、来たくなかった。でも、雪は母さんに会いたいようだった。
雪の寂しそうな顔にはいつも慣れない。あんな顔をして話されたら、俺はどうしたらいいのか分からない。
雪は家族とか母さんの話をする時、辛そうな寂しそうな顔する。まあ、孤児院にいた人達は大体そうだった。
親の名前も住んでる場所も情報が何一つなかった。俺は顔を知らない両親のことを思えるような人ではなかったようで、憧れることも憎むことも出来なかった。
ほんのちょっとだけ羨ましい。
「霜くん、そろそろ父さん達の所行こうか」
「はい」
鈴蘭の絵のステンドグラスがはまったドアのを櫻田川さんがノックする。
「どうぞ」
「失礼します。父さん、母さん今日紹介する一人の鮎川 霜さんです。」
「鮎川 霜です。よろしくお願いします。」
「よろしくね。霜さん」
櫻田川さんのお父さんは口を真一文字に結んで喋る気配はなさそうだった。
お母さんは温和そうだ。
「この人は櫻田川 勝司、私は静子です」
「父さん、人見知りなんだ」
「そうなんですね」
社長で人見知りって結構大変なんじゃないのか?
「仕事中はそんなことないんだけど、プライベートだとね。霜くんと同じ」
「俺、いつ人見知りしました?」
「雪くんがいないとそうじゃん。父さんと一緒。母さんがいないと警戒心バチバチになるの」
『そんなことない(ですよ)』
「あら、綺麗に揃ったわね」
まさか、揃うとは思わなかった。
「霜くんはうちの主人に似てるわね。ツンとした感じとか雰囲気とか」
「親近感あって、落ち着くんです」
嘘だって分かってもなんかやだな。
「いいじゃない。そういう人との結婚は幸せよ」
櫻田川さんのお父さんは少し口角が上がって明らかに嬉しそうな雰囲気だ。
若い頃は絶対バカップルそうだな。
「よかったです。でも、まだ会って間もないのでお互いによく考えます」
「そうね。お互いのことをもっと知ってから」
「はい。では、そろそろ」
「今日は来てくれてありがとうね。霜くん」
「こちらこそ、貴重な時間をありがとうございました」
櫻田川さんの後ろをついて部屋から出て応接室に戻った。
「霜くん、少しは喋ってよ」
「別にいいじゃないですか」
「まあ、人見知りってことで何とか切り抜けたけど」
「気に入られたい訳じゃないし」
櫻田川さんといる時よりは愛想が良かったはずだ。それに変に気に入られても後々大変だろう。
「そこそこ、気に入られてるよ。いいじゃないなんて他の子は言われなかった」
「結婚する気ないですけどね」
「他の子は結婚する気あっても母さんに気に入られなかったのが可哀想だよ」
「下心が丸見えだったんじゃないですか?お金目当てってことが」
「愛だかとかよりよっぽど信じられると思うけど」
「人によると思いますけどね」
金持ちも大変だな。お金で寄ってくる人の方が信用できるなんて、大方、昔の恋人にお金でも持ち逃げされたか何か言われたんだろうな。
「雪くんも霜くんもお金なんて無くてもいてくれそうだね」
「好きになったら、一途ですよ。雪も俺も」
その代わり、好きになるのも信用するのにも時間がかかる。
「でも、僕はそういうの信じれないから」
「まあ、信じられなくても好きになっちゃうことはあるそうですよ」
「それは経験から?」
「いや、本で読んだだけです。本当にあると思いますか?そんなこと」
「無いといいな。そんなのがあったらきっと僕は苦労する」
「そうですね」
無いと良い。あったら、苦しいだろうな。信じられないのは苦しい。信じてもらえないのも。
「良い人と番になれると良いですね」
「うん」
信用できるかも分からないαの家になんて来させたくなかったし、来たくなかった。でも、雪は母さんに会いたいようだった。
雪の寂しそうな顔にはいつも慣れない。あんな顔をして話されたら、俺はどうしたらいいのか分からない。
雪は家族とか母さんの話をする時、辛そうな寂しそうな顔する。まあ、孤児院にいた人達は大体そうだった。
親の名前も住んでる場所も情報が何一つなかった。俺は顔を知らない両親のことを思えるような人ではなかったようで、憧れることも憎むことも出来なかった。
ほんのちょっとだけ羨ましい。
「霜くん、そろそろ父さん達の所行こうか」
「はい」
鈴蘭の絵のステンドグラスがはまったドアのを櫻田川さんがノックする。
「どうぞ」
「失礼します。父さん、母さん今日紹介する一人の鮎川 霜さんです。」
「鮎川 霜です。よろしくお願いします。」
「よろしくね。霜さん」
櫻田川さんのお父さんは口を真一文字に結んで喋る気配はなさそうだった。
お母さんは温和そうだ。
「この人は櫻田川 勝司、私は静子です」
「父さん、人見知りなんだ」
「そうなんですね」
社長で人見知りって結構大変なんじゃないのか?
「仕事中はそんなことないんだけど、プライベートだとね。霜くんと同じ」
「俺、いつ人見知りしました?」
「雪くんがいないとそうじゃん。父さんと一緒。母さんがいないと警戒心バチバチになるの」
『そんなことない(ですよ)』
「あら、綺麗に揃ったわね」
まさか、揃うとは思わなかった。
「霜くんはうちの主人に似てるわね。ツンとした感じとか雰囲気とか」
「親近感あって、落ち着くんです」
嘘だって分かってもなんかやだな。
「いいじゃない。そういう人との結婚は幸せよ」
櫻田川さんのお父さんは少し口角が上がって明らかに嬉しそうな雰囲気だ。
若い頃は絶対バカップルそうだな。
「よかったです。でも、まだ会って間もないのでお互いによく考えます」
「そうね。お互いのことをもっと知ってから」
「はい。では、そろそろ」
「今日は来てくれてありがとうね。霜くん」
「こちらこそ、貴重な時間をありがとうございました」
櫻田川さんの後ろをついて部屋から出て応接室に戻った。
「霜くん、少しは喋ってよ」
「別にいいじゃないですか」
「まあ、人見知りってことで何とか切り抜けたけど」
「気に入られたい訳じゃないし」
櫻田川さんといる時よりは愛想が良かったはずだ。それに変に気に入られても後々大変だろう。
「そこそこ、気に入られてるよ。いいじゃないなんて他の子は言われなかった」
「結婚する気ないですけどね」
「他の子は結婚する気あっても母さんに気に入られなかったのが可哀想だよ」
「下心が丸見えだったんじゃないですか?お金目当てってことが」
「愛だかとかよりよっぽど信じられると思うけど」
「人によると思いますけどね」
金持ちも大変だな。お金で寄ってくる人の方が信用できるなんて、大方、昔の恋人にお金でも持ち逃げされたか何か言われたんだろうな。
「雪くんも霜くんもお金なんて無くてもいてくれそうだね」
「好きになったら、一途ですよ。雪も俺も」
その代わり、好きになるのも信用するのにも時間がかかる。
「でも、僕はそういうの信じれないから」
「まあ、信じられなくても好きになっちゃうことはあるそうですよ」
「それは経験から?」
「いや、本で読んだだけです。本当にあると思いますか?そんなこと」
「無いといいな。そんなのがあったらきっと僕は苦労する」
「そうですね」
無いと良い。あったら、苦しいだろうな。信じられないのは苦しい。信じてもらえないのも。
「良い人と番になれると良いですね」
「うん」
16
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】

離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる