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ずっと、待ってるのに
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「ただいまー」
「遅かったね。アイス溶けてない?」
「うん。あのね、櫻田川さんに会って」
「は?え、なんか言われたんでしょ?」
じゃなきゃ、雪はそんな顔しないし、何より煙草の匂いがする。
雪はバレてないと思ってるから、言わないけど、知ってるんだ。
煙草の匂いにその顔は、悩んでる時が多い。それに不安な時に雪はいつも耳を触るんだ。
「霜は母さんに会いたい?」
「それ関係ある?」
「うん」
櫻田川さんと母さんに何の関係があるの?
それに、俺たちの本当の母さんかも分からないのに。
「会えなくてもいい。櫻田川に何言われたの?」
「櫻田川さんの家にお母さんがいるんだって」
そんなはずない。だって、俺たちは捨てられた子供だ。櫻田川の家の子供だとしたらそれはお金がないとかで捨てられたわけじゃない。別の複雑な事情とかで捨てられたってことになる。家に置いて置けないような子供とお見合いさせるなんてありえない。
しかも、血が繋がってるかもしれないのに。全部がおかしい。
「櫻田川は信用しない方がいいと思うんだけど、それでも雪は母さんに会いたいんでしょ」
悩んでるのは母さんに会うか、会わないかを迷ってる。
だから、俺の意見を聞いてみたんだろう。
「分かんない。会いたいのかなぁ」
悲しげに言う雪の顔は、無理して笑ってるように目を細めている。
「雪が会う時はさ、俺も連れてってよ」
心配もあるけど、雪だけが会いにいくってのもおかしな話だ。双子なんだから。
「うん」
「絶対だよ?」
「こないだとは立場逆転だね」
雪の声はさっきよりも明るくなった。
煙草のこと、いつになったら言ってくれるのかなぁ。
ずっと待ってるのに。
やっぱり、霜は櫻田川さんのこと信用してないんだな。
まあ、僕も信じてないけど。
怪しいし、母さんの話はおかしいところがある。
「霜、一回だけ櫻田川さんに連絡してみてもいい?」
「うん」
もらった名刺にはQRコードが印刷されている。
多分、LINEだと思う。
「勝手に追加していいのかな?」
「いいでしょ。ダメだったら、名刺には書かないし」
「そうだよね」
「待って、俺が追加する」
「あ、うん。分かったけど、なんで?」
「雪が俺に内緒で櫻田川と会う約束でもして、騙されそうだし、普通に二人きりで合わせるの心配だから」
そんなこと言ったら、僕だって霜が櫻田川さんに何かされないか心配なのに。
「じゃあ、霜も櫻田川さんと僕に内緒で二人っきりで会わないでね」
「当たり前、雪には全部話すから」
言ってくれるのかなぁ。いつも言わないで誤魔化すのに。
「そういって、一人で何でもしようとするくせに」
「そう?」
「お見合いパーティーのときとか」
「雪も一緒に行ったじゃん」
「それ以外だよ」
「思い出せないなぁ」
そうやって、誤魔化す。
「ふーん」
「どうする?まずは鮎川ですって送るか」
「後、弟の方ってつけたほうがいいと思う」
「了解。とりあえず、返事が返ってくるまで待とう」
「うん」
「アイス食べたい。何買ってきたの?」
「マスカットのやつ。霜、好きでしょ?」
「マジか!めっちゃ好きなんだよね」
「やっぱり!前、買ってきた時にすごい美味しそうに食べてたから」
「雪は俺のことよく分かってるね」
美味しいものを食べてる時の霜の顔はすごく分かりやすい。幸せそうに食べるからいっぱい食べさせたくなる。
「雪は何食べるの?」
「コンポタ味のアイス」
「え、また買ったの?」
こないだ試しに霜と二人で食べたコンポタ味のアイスをもう一度買った。
霜は一口目で渋い顔していた。アイスであんな顔をしたのは多分初めてだろう。
アイスですごく不味いものなんてそうそう無いからだけど。
「僕は好き。でも、中のコーンはいらないかな」
「俺はもういいかな」
「一口目が美味しいだよ」
「でも、そのあとは食べれないじゃん」
「食べれないほどではないよ」
「まあ、いいや。俺が食べるわけじゃないし」
スマホを置いた机が揺れる。
「返事きた」
「ね、見てみよ」
『連絡くれたってことはお母さんに会いたいってことでいい?それともデートのお誘いかな』
「やっぱ、怪しくない?胡散臭い」
コンポタ味のアイスを食べた時みたいな渋い顔をして、スマホを睨んでる。
「まあ、一旦落ち着いて」
『母さんについてはもっと詳しく教えてもらわないと分かりません。デートのお誘いではありません』
「で、いいかな?」
「いいと思うよ」
『君たちの叔母さんがそう言ってる。君たちは僕のお父さんの弟の愛人の子だって』
「複雑だね。僕たち愛人の子供だから孤児院に置いてかれたの?」
「でも、これも信じられない。だって本当か分からないし、確認の仕様がない」
「そんなこと言ったら、どうしようもないじゃん。僕たちも何も知らないし」
「だって、怪しいし、信用できない」
「とりあえず、返信しよう」
『もう少し何かありませんか?』
『写真があるよ。これ以上はもうないけど』
写真が送られてきた。
写真を見た瞬間、多分、二人とも息を呑んだ。
それは孤児院の前に置いてかれた僕たちの写真だった。
孤児院に来たときの写真と同じ服で、僕たちなのは確かだった。
「こんなの誰でも撮れるよね」
「でも、こんな写真取る必要がない」
「じゃあ、櫻田川さんの話は本当ってこと?」
「分からない。これだけじゃ、母さんがいるかなんて、でも、可能性はある」
『信じてくれた?』
信じられないけど、写真は多分、本物で何かしら関係がある可能性はある。
「雪、どうする?」
「うーん。考えさせてもらおう」
『考えさしてください』
『返事はいつでもいいよ』
『ありがとうございます』
「どうしよっか。霜」
「会いたい?」
分からない。もう、ずっと分からないままだ。会ったら、何かわかるのかな。
「うん。行きたい」
「遅かったね。アイス溶けてない?」
「うん。あのね、櫻田川さんに会って」
「は?え、なんか言われたんでしょ?」
じゃなきゃ、雪はそんな顔しないし、何より煙草の匂いがする。
雪はバレてないと思ってるから、言わないけど、知ってるんだ。
煙草の匂いにその顔は、悩んでる時が多い。それに不安な時に雪はいつも耳を触るんだ。
「霜は母さんに会いたい?」
「それ関係ある?」
「うん」
櫻田川さんと母さんに何の関係があるの?
それに、俺たちの本当の母さんかも分からないのに。
「会えなくてもいい。櫻田川に何言われたの?」
「櫻田川さんの家にお母さんがいるんだって」
そんなはずない。だって、俺たちは捨てられた子供だ。櫻田川の家の子供だとしたらそれはお金がないとかで捨てられたわけじゃない。別の複雑な事情とかで捨てられたってことになる。家に置いて置けないような子供とお見合いさせるなんてありえない。
しかも、血が繋がってるかもしれないのに。全部がおかしい。
「櫻田川は信用しない方がいいと思うんだけど、それでも雪は母さんに会いたいんでしょ」
悩んでるのは母さんに会うか、会わないかを迷ってる。
だから、俺の意見を聞いてみたんだろう。
「分かんない。会いたいのかなぁ」
悲しげに言う雪の顔は、無理して笑ってるように目を細めている。
「雪が会う時はさ、俺も連れてってよ」
心配もあるけど、雪だけが会いにいくってのもおかしな話だ。双子なんだから。
「うん」
「絶対だよ?」
「こないだとは立場逆転だね」
雪の声はさっきよりも明るくなった。
煙草のこと、いつになったら言ってくれるのかなぁ。
ずっと待ってるのに。
やっぱり、霜は櫻田川さんのこと信用してないんだな。
まあ、僕も信じてないけど。
怪しいし、母さんの話はおかしいところがある。
「霜、一回だけ櫻田川さんに連絡してみてもいい?」
「うん」
もらった名刺にはQRコードが印刷されている。
多分、LINEだと思う。
「勝手に追加していいのかな?」
「いいでしょ。ダメだったら、名刺には書かないし」
「そうだよね」
「待って、俺が追加する」
「あ、うん。分かったけど、なんで?」
「雪が俺に内緒で櫻田川と会う約束でもして、騙されそうだし、普通に二人きりで合わせるの心配だから」
そんなこと言ったら、僕だって霜が櫻田川さんに何かされないか心配なのに。
「じゃあ、霜も櫻田川さんと僕に内緒で二人っきりで会わないでね」
「当たり前、雪には全部話すから」
言ってくれるのかなぁ。いつも言わないで誤魔化すのに。
「そういって、一人で何でもしようとするくせに」
「そう?」
「お見合いパーティーのときとか」
「雪も一緒に行ったじゃん」
「それ以外だよ」
「思い出せないなぁ」
そうやって、誤魔化す。
「ふーん」
「どうする?まずは鮎川ですって送るか」
「後、弟の方ってつけたほうがいいと思う」
「了解。とりあえず、返事が返ってくるまで待とう」
「うん」
「アイス食べたい。何買ってきたの?」
「マスカットのやつ。霜、好きでしょ?」
「マジか!めっちゃ好きなんだよね」
「やっぱり!前、買ってきた時にすごい美味しそうに食べてたから」
「雪は俺のことよく分かってるね」
美味しいものを食べてる時の霜の顔はすごく分かりやすい。幸せそうに食べるからいっぱい食べさせたくなる。
「雪は何食べるの?」
「コンポタ味のアイス」
「え、また買ったの?」
こないだ試しに霜と二人で食べたコンポタ味のアイスをもう一度買った。
霜は一口目で渋い顔していた。アイスであんな顔をしたのは多分初めてだろう。
アイスですごく不味いものなんてそうそう無いからだけど。
「僕は好き。でも、中のコーンはいらないかな」
「俺はもういいかな」
「一口目が美味しいだよ」
「でも、そのあとは食べれないじゃん」
「食べれないほどではないよ」
「まあ、いいや。俺が食べるわけじゃないし」
スマホを置いた机が揺れる。
「返事きた」
「ね、見てみよ」
『連絡くれたってことはお母さんに会いたいってことでいい?それともデートのお誘いかな』
「やっぱ、怪しくない?胡散臭い」
コンポタ味のアイスを食べた時みたいな渋い顔をして、スマホを睨んでる。
「まあ、一旦落ち着いて」
『母さんについてはもっと詳しく教えてもらわないと分かりません。デートのお誘いではありません』
「で、いいかな?」
「いいと思うよ」
『君たちの叔母さんがそう言ってる。君たちは僕のお父さんの弟の愛人の子だって』
「複雑だね。僕たち愛人の子供だから孤児院に置いてかれたの?」
「でも、これも信じられない。だって本当か分からないし、確認の仕様がない」
「そんなこと言ったら、どうしようもないじゃん。僕たちも何も知らないし」
「だって、怪しいし、信用できない」
「とりあえず、返信しよう」
『もう少し何かありませんか?』
『写真があるよ。これ以上はもうないけど』
写真が送られてきた。
写真を見た瞬間、多分、二人とも息を呑んだ。
それは孤児院の前に置いてかれた僕たちの写真だった。
孤児院に来たときの写真と同じ服で、僕たちなのは確かだった。
「こんなの誰でも撮れるよね」
「でも、こんな写真取る必要がない」
「じゃあ、櫻田川さんの話は本当ってこと?」
「分からない。これだけじゃ、母さんがいるかなんて、でも、可能性はある」
『信じてくれた?』
信じられないけど、写真は多分、本物で何かしら関係がある可能性はある。
「雪、どうする?」
「うーん。考えさせてもらおう」
『考えさしてください』
『返事はいつでもいいよ』
『ありがとうございます』
「どうしよっか。霜」
「会いたい?」
分からない。もう、ずっと分からないままだ。会ったら、何かわかるのかな。
「うん。行きたい」
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