運命なんて知らない

なかた

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内緒です

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お見合いパーティーの翌日。
「霜、いつまで拗ねてんの?」
昨日からずっと拗ねてて、酔いが覚めたら終わると思ったけど、そんなことはなかった。
「拗ねてないし」
「じゃあ、どうしたの?」
「昨日、変なこと言ったから、それで」
「あぁ、僕のせいなんだっけ?」
「それ、恥ずいから言わないで」
「霜、昨日のは覚えてんだ。いつもは覚えてないのに」
「まって、俺、いつも、あんなこと雪に言ってんの?」
「さあ?」
あんなふうになるのは珍しいけど、いつもはそこまで変なことは言わない。
「え、ねぇ、どっち?」
「教えなーい!」
いつも僕を揶揄うんだ。
だから、たまにはからかわれてもしょうがないよね。
「雪ー、頼むよー」
「そういえば、どうする?櫻田川さんからのお誘い」
「え、行かなくてもよくない?」
「だよねー。でも、運命感じたらしいよ?」
「俺らは感じてないし、胡散臭い」
「確かに。運命なんて本当か分からないのに」
「そういうこと言う奴って、結局、運命的な恋したから、別れたいとか言うんだろ」
「ドラマだとそうだよね」
「しかも、次期社長だし。選び放題」
考えれば、考えるほど怪しく思えてくる。
霜は行きたくないみたいだし、一旦1人で考えよう。
「霜、コンビニ行ってくるけど、なんか要る?」
「んー、アイス」
「分かった」
コンビニで久しぶりに煙草でも吸おうかな。霜にはバレたくないから、大学の実験室のロッカーにでも入れとこう。
朝だから人が少ないな。
コンビニに着くまでゆっくり歩く。
アイスが欲しいって言ってたけど、帰りに近くのスーパーに寄ろう。

「あっ!鮎川くん?」
昨日覚えたばかり声に驚く。
「え?櫻田川さん?」
「うん。おはよう。鮎川くんもコンビニ?」
「おはようございます。櫻田川さんもコンビニなんて来るんですね。意外です」
「寒いから、出社前に肉まんでも食べたいなって思って」
意外だ。コンビニに行くのも、買うのが肉まんってことにも。
「鮎川くんは?」
「煙草ですかね」
別に櫻田川さんには隠す必要もないし言ってしまおう。
「君こそ意外だね。弟君は知ってるの?」
「隠してはいますけど、バレてるかもしれないです」
「なんか、弟くんといる時とちょっと雰囲気違うね」
「そんなことないと思いますけど」
「そっか。煙草いつから吸ってるの?」
「20になってすぐ吸いました。年齢確認はいまだにされますけど」
「それは、まあ、そうだよね」
「でも、霜がお酒買う時はされなくて」
「弟君は雰囲気が大人っぽいからね」
「僕も大人っぽくなりたいなぁ。煙草が似合うくらい」
「あと、10年はかかりそう」
「櫻田川さんは吸わないんですか?」
「大人の嗜みだって言われて吸ったきり、二度と吸いたくないって思った」
「一回目はそんなもんですよ」
僕も一回目はこれのどこがいいんだって思った。
けど、考えことがあるたびにに吸っていたら、普通に吸えるようになった。
「そろそろ行かないと、あんまり遅いと霜が心配するんで」
「煙草も吸いたいしね」
「それは言わなくてもいいんじゃないですか?」
パーティーの時とは違って、意地悪なことを言う。
「つい、揶揄いたくなるんだよ。じゃあ、また今度会おうね」
「会いませんよ。霜も気が進まないそうだし。あ、煙草のこと霜には言わないでくださいね」
「うん。分かった。でも、君達のお母さんがいるって言ったら?」
「は?何言ってるんですか?」
「何でもないよ」
母さんが櫻田川さんの家に?
でも、嘘だ。だって、孤児院の先生でさえ見たことないんだから。最近知り合ったばかりなのに知ってるはずがない。きっと、僕たちを釣るための嘘だ。
一旦、落ち着いて、コンビニで煙草を買おう。
煙草を吸ってから、よく考えたほうがいい。

 霜にバレないように、煙草は家から少し離れた公園で吸っている。
いつものベンチに座って煙草に火をつけて一つ、一つ整理する。
まず、母さんがいるとしても、今まで迎えに来なかったんだから、会いたいとは思ってないはず。
でも、何で母さんが櫻田川家にいるのかが分からない。
霜に相談するべきかな。

煙草を吸っているのに、いつものように整理出来ない。

母さんか。会いたいな。
顔も知りたいし、聞きたいことがある。

何で、僕たちを置いていったのか。

それを聞いてどうこうしようってわけでもないけど。


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