運命なんて知らない[完結]

なかた

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運命って信じる?

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僕たちがΩだと分かり、施設内は慌ただしくなった。
Ωは抑制剤などでどうしてもお金がかかってしまう。
そのため、Ωがいる孤児院は市役所に届け出を出しと給付金を貰う。
その書類や発情期の時にもしものことが起こらないようにΩだけの施設に行かなくてはならない。
この施設はもともとΩだけを対象にした施設で性別がまだわからない子やΩの人しかいない。
Ωの人たちのいるΩ専用の棟に引っ越しをしなくてはいけないため、僕たちは荷造りをしていた。

「やっぱりさ、俺たち双子なんじゃない?だってΩって珍しいし双子じゃなかったら奇跡だよね」
「ね、2人ともΩだったから同じクラスになれたし」
今まで、小学校は閉校寸前の小学校に行っていたため、クラスは1つだった。
「霜と同じクラスなのはやっぱり嬉しいな」
「俺も!」

性別が分かった日、僕らは久々に同じ布団で寝た。
お互いに不安を感じていた。
だけど、僕は霜がΩだと分かったとき安心してしまった。それを隠したかったけど、霜は隠さずに

「雪もΩで安心した。1人じゃなくてよかった」

その言葉を聞いて、不安が減っていった。
「僕も霜がいるから、大丈夫」
そう伝えると嬉しそうな顔をして眠ってしまった。


そうして僕らは、高校生活を送った。
高1の冬、僕は初めて発情期が来た。
その日の朝は微熱があり、学校を休んだ。
Ωは平熱より少しでも体温が高いと学校を休まなくてはいけなかった。
霜は平熱だったため学校に行こうとしたが、双子だったら発情期がくる周期も似てるかもしれないからと大事をとって休んだ。
昼ごろから本格的に体が熱くなり、部屋に籠った。
熱くて苦しくて寂しくてどうにかなりそうだった。
1日が長く感じ、発情期はとても長かった気がした。
発情期が終わり、体温も戻ってきた。
霜は結局、発情期は来ておらず少し安堵した。
あんな苦しくて思いをして欲しくなかった。

高3の夏、初めて霜に発情期が来た。
霜の発情期は抑制剤で抑えられる程度の軽いものだった。それでも発情期中は学校に行けないため、霜は暇そうに一日中ゴロゴロしていた。

「双子なのに発情期ってこんなにも違うだね」
「ね、でも双子のΩのデータはほとんど無いから分かんないけど」
双子でΩで男なんて本当に珍しいらしい。
抑制剤を貰いにいくたびに医師に言われる。


「そろそろ卒業だね」
「ね、大学生になるの楽しみだなー」
「施設を離れるのは寂しいけどね」
『あのさ、』
驚いた顔の霜と目が合う。
思わず笑ってしまった。
「じゃあ、霜からどうぞ?」
「いいの?じゃあ聞くけど、雪って恋人とか作らないの?」
聞きたかったことが一緒で笑みが溢れる。
「僕も同じこと聞こうと思ってた。僕は今のところ考えてないけどいつかは欲しいかな」
「そっか。俺もまだわからない。でも今のところ、欲しいとは思わないかな」
運命の番の話をいつかしたのを思い出す。
あの頃は自分には関係無いから、想像もしなかったな。
「雪は運命の番信じる?昔は迷信だって言ってたけど」
「信じてないけど、いたら良いなって思うよ」
「ふーん」
前と同じ。何か言いたい時に目線を下にする癖を変わらずにしている。
「霜は?」
「俺はどうでも良いかな。好きな人がいい」
以外だった。それじゃあまるで好きな人がいるような口ぶりだ。恋人は欲しくないけど、好きな人はいるってこと?
「そうだね。僕も本当に好きな人か運命の番だったら、好きな人と一緒にいたいな」
気になりながらも悟られないように同意した。
「兄さんはさ、本能が求める人を突き放せる?」
「え?」
運命の番に出会ってないのに、そんなこと分かるはず無いけど久しぶり兄さんと呼ばれ答えないといけないような気持ちになった。
「運命を突き放せるほど、好きな人と出逢えたらいいな」
答えになってないけど僕が今、精一杯言える答えだ。
「そう」
答えに納得して無いような返事。
でも、顔を見れば分かった。
口角が少しだけ上がる癖は安心した証拠だ。
「雪、聞きたいことあるんじゃないの?」
心臓が跳ね上がる。
やっぱり見透かされてたようだ。
霜も僕の癖がよく分かってるからバレてしまう。
「好きな子いるの?」
「いないよ」
「あー、びっくりした。好きな子いるみたいな話し方だったから」
「いないよ。好きな子いても雪にはすぐ言うよ」
「別に言わなくてもいいのに」
素直に言えなかったけど、本当は嬉しかった。
それも見透かしたんだろう。
「ツンデレだなぁ」
と嬉しそうに言った。
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