始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

文字の大きさ
上 下
88 / 110
第4章 ルモォンの村

10.少年の恋心…?⑥

しおりを挟む

更新しました( *・ω・)ノ

───────────────────


ドリアン採取地から北へ徒歩で30分程の所にある最後の材料地へとやってきました。

うん、最後の材料もニオイの強いものなので到着する前から風に乗ってそのニオイがしていた。


「うーん、動物が踏みつけたりしててここら一体銀杏独特のニオイが漂い中だね。

ニオイ的に前世より濃いのはこの森にいる精霊の数が多いせいかなぁ?

それとも他に要因が…って目的の銀杏の採取せずに考えにふけっちゃうとこだった。



…あまり遅くなるとヒナとアヴィが心配するからさっさと採取しちゃいましょう!」


せっせと治療用と食べる用の銀杏を拾い集めそれぞれ密閉しカバンへ収納。

立ち上がりハラハラ舞い散るイチョウの葉が目に入り上を見上げた。


「イチョウの木の下にいるとここが異世界って感じがしない…けど、ここは異世界で私はここで生きてるんだよねー…」


この世界へ転生してからだいぶ経つけど未だに前世を鮮明に思い出してしまう時がある。

普通、薄れてしまいそうな気がするんだけどねー。

そのまま目を瞑り深呼吸を1度だけして気持ちを切り替えた。


「さあって、材料はすべて採取完了したしお家に帰ってお薬作りー…の前にアヴィのご飯で活力つけなきゃね!



あ…ニオイも途中で取らなきゃいけないんだった!

今思い出して良かった~」


そう独り言ち、少し予定より時間がかかったので帰りは軽く身体強化して家路を急いだ。










   * * *










家に帰って早々アヴィが近付いてきて、鼻をスンスンいわせながら首元でおかえりよりも先にこう言った。



「血の匂いがする」



ヤバイ……怪我をしたことがバレてしまった。

完全に消したと思っていたが、うなじに少し血痕が残っていたらしい……全身にすれば良かった。

そして私は今、ほかほか湯気の出る食事の乗ったテーブルの席に付きアヴィの判決を待っています。


「考えたんだが…いつもお仕置きが添い寝じゃ飽きるだろう?

だから、今回のお仕置きは添い寝じゃなく、お互いの食事の世話をすることにしようと思う」


「食事の世話…?」


「そ。

じゃ丁度昼ご飯が目の前にあることだし早速始めようか。


ああ…このお仕置き期間はとりあえず添い寝期間と同じにしよう、な?」


最後に?を付けてたけどその期間減らす気ないよねー…笑顔の威圧感が凄いもん。

ふふ。

もう開き直ってなんでもやってやるー!








      *  *  *








つ……疲れた。

食事の世話って食べさせることじゃん…。

ただ食べさせるだけならこんなに疲れないんだろうけど…相手はアヴィ。

私が相手なのにあの甘々フェイスは必要ないと思うんだけど?!

しかも!

お互いの食事の世話だから食べさせあいっこなの!

これが毎食とか……この期間中に慣れれば疲れることもないんだろうけど、無理だろうなぁー。


「ふぅー…お疲れモードだけど早く治療薬作らなきゃね。

えーと、まずはニオイが拡散しないようにロド兄作の密閉透明ドームを机にセット…。

んで、横の専用ふたを開けて中にニオイの強い材料と使う器具を置いて…。

あとは、私が作業用膜がある穴に手を突っ込めば膜が私ぴったりのゴム手になって作業に取り掛かれる、と。

やっぱりロド兄ってチートだよねー。

あ、念のために聞くけどニオイする?」


「いや、臭いニオイはしない」


「ん、じゃあ治療薬作り始めるね~。

とはいっても、鍋で色が変わるまでひたすら混ぜて煮込むだけなんだけどね」


ドームの中の鍋に採ってきたラフレシア・ドリアン・銀杏を入れてあとは魔力水のみ。


「鍋に材料がヒタヒタになるくらい魔力水を出しましょう~♪

……『魔力水』

あとは今のところカーキ色だけど、この色から別の色に変わるまでひたすら混ぜる」


まぜまぜ


ぐるぐる


「おー、特に擂り潰してるわけでもないのに混ぜてるだけでもう材料の形が無くなってる。

魔法って本当に不思議だなー」


材料が見えなくなったら色が変わるまであと少し!


まぜまぜ


ぐるぐる


キラリン…キラ


「…また少し光り方が変わったね。

んー、うん!

トロッとした綺麗なクリーム色になってるから成功だね!

カスタードクリームみたいで美味しそうに見えるな~。

あとはこれを用意した入れ物に流して…ふたをして…完成~♪

えっと、中の物が完成したらドームのこの外ボタンをポチッと押せば中にあるニオイが無くなるっと。

あ、ボタンの色が赤から緑になったからニオイ消し終了したね。

んじゃ、横の専用ふたを開けて出来た治療薬と器具を取り出して……アヴィ念のためにまた聞くけど臭くない?」


「大丈夫だ」


「よし!

治療薬完成したしロド兄とシューリュくんの所へ行こっか」


出来立てほやほやの治療薬を持って、ルモォンの村へとリア達は向かい迷々の森の家を後にした。


















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...