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第4章 ルモォンの村
10.少年の恋心…?⑥
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ドリアン採取地から北へ徒歩で30分程の所にある最後の材料地へとやってきました。
うん、最後の材料もニオイの強いものなので到着する前から風に乗ってそのニオイがしていた。
「うーん、動物が踏みつけたりしててここら一体銀杏独特のニオイが漂い中だね。
ニオイ的に前世より濃いのはこの森にいる精霊の数が多いせいかなぁ?
それとも他に要因が…って目的の銀杏の採取せずに考えにふけっちゃうとこだった。
…あまり遅くなるとヒナとアヴィが心配するからさっさと採取しちゃいましょう!」
せっせと治療用と食べる用の銀杏を拾い集めそれぞれ密閉しカバンへ収納。
立ち上がりハラハラ舞い散るイチョウの葉が目に入り上を見上げた。
「イチョウの木の下にいるとここが異世界って感じがしない…けど、ここは異世界で私はここで生きてるんだよねー…」
この世界へ転生してからだいぶ経つけど未だに前世を鮮明に思い出してしまう時がある。
普通、薄れてしまいそうな気がするんだけどねー。
そのまま目を瞑り深呼吸を1度だけして気持ちを切り替えた。
「さあって、材料はすべて採取完了したしお家に帰ってお薬作りー…の前にアヴィのご飯で活力つけなきゃね!
あ…ニオイも途中で取らなきゃいけないんだった!
今思い出して良かった~」
そう独り言ち、少し予定より時間がかかったので帰りは軽く身体強化して家路を急いだ。
* * *
家に帰って早々アヴィが近付いてきて、鼻をスンスンいわせながら首元でおかえりよりも先にこう言った。
「血の匂いがする」
ヤバイ……怪我をしたことがバレてしまった。
完全に消したと思っていたが、うなじに少し血痕が残っていたらしい……全身にすれば良かった。
そして私は今、ほかほか湯気の出る食事の乗ったテーブルの席に付きアヴィの判決を待っています。
「考えたんだが…いつもお仕置きが添い寝じゃ飽きるだろう?
だから、今回のお仕置きは添い寝じゃなく、お互いの食事の世話をすることにしようと思う」
「食事の世話…?」
「そ。
じゃ丁度昼ご飯が目の前にあることだし早速始めようか。
ああ…このお仕置き期間はとりあえず添い寝期間と同じにしよう、な?」
最後に?を付けてたけどその期間減らす気ないよねー…笑顔の威圧感が凄いもん。
ふふ。
もう開き直ってなんでもやってやるー!
* * *
つ……疲れた。
食事の世話って食べさせることじゃん…。
ただ食べさせるだけならこんなに疲れないんだろうけど…相手はアヴィ。
私が相手なのにあの甘々フェイスは必要ないと思うんだけど?!
しかも!
お互いの食事の世話だから食べさせあいっこなの!
これが毎食とか……この期間中に慣れれば疲れることもないんだろうけど、無理だろうなぁー。
「ふぅー…お疲れモードだけど早く治療薬作らなきゃね。
えーと、まずはニオイが拡散しないようにロド兄作の密閉透明ドームを机にセット…。
んで、横の専用ふたを開けて中にニオイの強い材料と使う器具を置いて…。
あとは、私が作業用膜がある穴に手を突っ込めば膜が私ぴったりのゴム手になって作業に取り掛かれる、と。
やっぱりロド兄ってチートだよねー。
あ、念のために聞くけどニオイする?」
「いや、臭いニオイはしない」
「ん、じゃあ治療薬作り始めるね~。
とはいっても、鍋で色が変わるまでひたすら混ぜて煮込むだけなんだけどね」
ドームの中の鍋に採ってきたラフレシア・ドリアン・銀杏を入れてあとは魔力水のみ。
「鍋に材料がヒタヒタになるくらい魔力水を出しましょう~♪
……『魔力水』
あとは今のところカーキ色だけど、この色から別の色に変わるまでひたすら混ぜる」
まぜまぜ
ぐるぐる
「おー、特に擂り潰してるわけでもないのに混ぜてるだけでもう材料の形が無くなってる。
魔法って本当に不思議だなー」
材料が見えなくなったら色が変わるまであと少し!
まぜまぜ
ぐるぐる
キラリン…キラ
「…また少し光り方が変わったね。
んー、うん!
トロッとした綺麗なクリーム色になってるから成功だね!
カスタードクリームみたいで美味しそうに見えるな~。
あとはこれを用意した入れ物に流して…ふたをして…完成~♪
えっと、中の物が完成したらドームのこの外ボタンをポチッと押せば中にあるニオイが無くなるっと。
あ、ボタンの色が赤から緑になったからニオイ消し終了したね。
んじゃ、横の専用ふたを開けて出来た治療薬と器具を取り出して……アヴィ念のためにまた聞くけど臭くない?」
「大丈夫だ」
「よし!
治療薬完成したしロド兄とシューリュくんの所へ行こっか」
出来立てほやほやの治療薬を持って、ルモォンの村へとリア達は向かい迷々の森の家を後にした。
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