始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

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第1章 迷々の森

※アヴィルト視点

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本日2話目でござい(^.^)

──────────────────



生まれてすぐ、俺は周囲から悪感情を向けられた。

……産みの母だけはそうじゃなかったが、俺が乳離れをしてすぐの頃、体を壊して亡くなってしまった。

母がいなくなれば、周囲の攻撃も多くなり怪我することが多くなった。

いつしか攻撃が過激化し、とうとう瀕死の状態まで陥ってしまった。

ほっとけば死ぬだろうと思われたのか、止めは指さずに去っていった。

なぜ俺がこんな目にあわなければいけない?

なぜ、なぜ……。

悲しく…憎く…この世界の全てに憎悪を抱きそうになったとき、少女の声がした。

少女は俺に触れた。

その目や表情には嫌悪など見られず、むしろ嬉しそうにキラキラしていた。

俺は、周囲から忌み嫌われる黒を持っているのに……。

少女は俺の傷に気づくと驚き、声をあげた。

この子もきっと俺をここに置いて去るのだろう、そう思っていた。

でも、そうではなかった。

この少女は、出血部分に躊躇なくそれでいて優しく薬を塗ってくれた。

あいつらは俺が血を流すと穢れた血だ、と言っていたのに……この少女は。

傷が癒され、少女は俺が今目覚めたかのように言ったが俺はずっと起きていた……俺の目が小さくて気づいていなかったようだ。

少女は、俺が大丈夫なのがわかったからか俺に自分の住処へ帰るよう促しているようだが、俺にはそんなものない。

少女も、俺を手離したくないと思っているように感じた。

だから、俺は少女の側にいたいという意思表示をすることにした。

少女は、俺の意思を受け取り連れ帰ってくれた。

少女はラフィリアというらしい。

そのラフィリアの住む家には1人の爺がいた。

名はロドクス・オルトゥムだという。

爺は、ラフィリアのいないところで俺にこう言った。



「お前さんはわしとじゃな。

黒を持つ者は力が強い、黒は元々負を呼びやすい上に他から嫌悪やら負の感情を向けられれば、己の闇が深くなる。

それ故、闇に染まりきれば魔王となってしまう。

じゃが……お前さんはリアと出会えた。

あの子は少々変わり者ではあるが、とても優しき心を持っとる。

じゃから、お前さんもきっと大丈夫じゃ。



わしも昔ある人との出会いがあり、魔王にはならずに済んだのじゃから」



爺の、ロドクスの話を聞き俺はあの時闇に呑まれそうだったのだと気づいた。

あの時、リアと出会っていなかったら俺はきっと魔王となっていた、と。

リアと出会えて本当に良かった。

リアは俺に道を照らす光だ。
















リアと出会ってから負が遠くなった。

毎日心が温かく……あぁ、これが幸せというものかと知った。

成長し、俺が成人となり人化できるようになったらもっと出来ることが拡がった。

でも、一番はリアを自分の手で抱き締めることができるようになったことが嬉しかった。

狼の時は、体で囲み包むことはできたが心のどこかでまだ満足できずにいた。

人化し、リアを抱き締めた時満足できずにいたものが、カチッとはまった音がなったような気がした。

そんな充実した日々を送っていたが、リアに近づく者たちが出てきた。

一人は龍人族のティアローゼス。

この者は既婚者で妻一筋なので問題はない。

二人目はティアローゼスの娘でロナジェス。

今は娘だが、好きになった相手が女であれば男に変化する可能性があるので、注意していた。

でも、俺が牽制を込めて常にいたせいか恋情が浮かぶことはなかった。

なので、ほんの少しの警戒を残しつつの態度をとることにした。

問題は、三人目のライオネス・ザハベェーノだ。

奴はリアといる時たまに恋情が目に浮かぶ。

俺が睨みつけようが諦める気配がない。

旅にも着いてきたそうにしていたが、何か問題が起きたようで結局着いてくることはなかった。

最後までリアへの恋情が消えることはなかったが、瞳に別の色も浮かんでいた。

嫉妬、それと羨望。

面倒な感情が加わったと思った。

だが、しばらくは会うこともないだろうから奴のことを今は忘れていよう。

せっかくリアを独占できるのだから。

ロドクスとヒナ?

あれらは、俺がリアを悲しませない限りは傍観者でいるようだから、数にはいれていない。



ああ、願わくはしばらくは俺だけのリアでいてほしい……。




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