始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

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第1章 迷々の森

※ライオネス・ザハベェーノ視点

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今日は3話を10分毎に更新します(^^)/


──────────────────



俺はロドクス・オルトゥム様の弟子の一人、ライオネス・ザハベェーノ。

ロドクス様の弟子を名乗ってはいるが、全てを修得しているわけではない。

よって、未だに弟子を卒業できていない。

魔力は申し分ない。

だが、〝柔軟〟さが足りず術の精度か下がる……。

柔軟さに悩み続け、たまに師匠のロドクス様に会いに行っては柔軟さについて教えを乞う、という決まった日々の過ごし方をしていた。

ロドクス様によれば、これもまた固いと言われる。

柔軟さとは……なんだ?
















そんな日々に違うものが入ってきた。

ラフィリア、という人族の成人間近の普通の少女だった。

……もう一人、少女の側に常にいるアヴィという男がいたが、こちらは少々面倒そうな感じを受けた。

ロドクス様が不在で帰ろうとすれば、少女が泊まっていってはどうかと勧めてきた。

それなら泊まっていくかと言えば、先に風呂へどうぞと言われ入り、食事をとる部屋へと戻るなり俺は鬱化した。

鬱化したが、いつもよりかなり早く回復した。

ロドクス様並か以上か、美味しい料理を作る腕を持っているようだ。
















次の日になり、ロドクス様がここへお帰りになった。

帰って来てそうそういつもの言葉を投げ掛けられ、鬱化したが美味しい料理とデザートで回復した。

ただ、デザートが少し口回りが汚れやすいのはわかった……が、目の前の光景は少々困惑してしまう。

なんだあのイチャつきは。

ロドクス様に言ってみても、あれがいつものことだと言う。

困惑と呆れ、それと少しだけあの男に羨ましい気持ちが湧いたが、それには気づかないふりをした。
















少女ラフィリアが、俺の白い格好について聞いてきた。

なぜ白いのか理由を言えば、真白綿草の性質に興味を持ち自分も何か作りたいと言った。

でも、今はこの迷々の森から出られないという。

……何か彼女にはあるんだろうか?

ここを出られないのであれば、俺の所持している真白綿草を差し出した。

でも、ただでこれだけの量を貰うわけにはと遠慮が見えたので、俺はロドクス様に滞在の許可を取った。

これなら滞在中の世話代として受け取れるだろうと。

それに……彼女には俺に足りない柔軟さがある。

それを側で見て、俺に足りない柔軟さについての手がかりにならないかという打算もある。

……ほんの少しだけ気づかないふりをした感情を、あの男は感じとり俺を鋭く睨みつけてきた。

















ロドクス様の家で暫く過ごしていたある日、ラフィリアとアヴィルトが呪われた人を連れ帰ってきた。

呪いの進行具合は最悪だった。

俺の作る解呪薬の効果では到底助からないものだ。

しかし、ロドクス様ならこの最悪な状態にも効果がある薬を作ることができる。

だからてっきり、ロドクス様が作るものだと思っていた。

だが、ロドクス様はラフィリアに薬を作るよう指示した。

そして結果は……解呪成功。
















俺は妹弟子に嫉妬した。

それと同時に柔軟さとは心が自由なのではと思った。

そう思ったら、以前ロドクス様が言っていた固い、と言ったことが少し理解できたような気がする。

少しだけ理解できた、と思ったら次の問題が出てきた。

頭と心を柔らかく自由にするにはどうしたらいいのか、と。

こう、考えてしまうのがいけないのはわかるが考えてしまう。

そんな考え中にラフィリアは、場の空気を読んでるのか読んでないのかズレた問いかけをしていた。

本当に自由なやつだ。

















俺はラフィリアに嫉妬と羨望、ほんの少しの恋情を持ったまま旅に出るというロドクス様たちに合わせ、ロドクス様宅をあとにした。

何もなければ旅にも着いていったのだが、仕事場に問題が起き戻らなければならなくなった。



「うぇ~ん……ザハベェーノくんごめんよぉ」



「ガタートム、お前の頭はどうなってるんだ?

この結界石は、硬過ぎて特殊なハンマーとかではないとヒビすら入らないというのに……お前の頭がぶつかっただけでヒビが入っただというではないか。

お前は医者の見立てでは、でっかいタンコブができただけで脳などに異常は見られないという。

お前の頭、もはや凶器だ。

人になどぶつけるなよ?

相手が死ぬ」



「ひ、ひどい~。

そりゃ危ないかもしれないけど、そこまで言うなんてひどいです~」



「「「ひどくない」」」



「ザハベェーノくん以外の人もひどぉぉぉおいぃぃぃ~」



問題とは、王都を覆う結界の為の丸い結界石が8つあるのだがその一つを同期の一人が、頭突きでヒビを入れたのだ。

ヒビを直すには修復液が必要なのだが、俺以外まだちゃんと作れるものがここにはいない。

はぁ……誰か作れれば旅に着いていけたのに、と思っていれば。



「ザ、ザハベェーノくんにため息吐かれたぁぁ~休暇の邪魔じでごべん゛~」



心の中だけでなく、本当にため息が出ていたようだ。

でも、この同期のガタートムを俺は気に入っている。

……ん?

何ということだ………俺は今とある事実に気がついた。

ラフィリアに抱いた恋情と、ガタートムに元々持っていた思いが同じだった、ということに。

なぜ、ガタートムへの思いが恋情と気づかずラフィリアの時は恋情と気づいたのかはわからないが、問題はそこじゃない。

俺は二心を抱く不埒者なのか、と新たに悩みが増えてしまった。



「はぁ……なんでこう次から次と問題が出てくるんだ」



「ご、ご  め゛ん゛な゛さ゛い゛~!」



今のはお前にじゃなかったんだが……。

柔軟さ問題が解決の糸口を見つけたかと思えば、新たな問題が発生した。

悩みが尽きず却って増えてしまったこと、に頭を抱えるライオネス・ザハベェーノだった。





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