始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

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第1章 迷々の森

27.白いあいつが恋しい

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今日は1話更新です♪
あと、もう一つの連載の方も1話更新しました(・∀・)

────────────────────




最近…ラスがいるようになってリアはあるものを思い出してしまった。

ラスは白い、いつも白い。

白…それはほわほわ温か、そして塩をまぶして握って食べれば塩っ気と元々のほの甘い粒が…………………………お米、食べたい。

でも…ここで暮らすようになってから色々なお料理を食べたけど、お米料理を食べたことも見たこともないね。

お米は存在しているけど、家畜用の飼料になってるか人は食べていないのか………それとも────



この世界にお米が存在しない、か。



………。

まずは、ロド兄に聞いてみよう!

お こ め !






      *  *  *







今日もいつもの場所、研究室にいるロド兄に突撃です。



「ロド兄ー、ちょっと今いーい?」



「えーよ~。

何か思いついたりしたんかのぅ?」



「違う違う。

ちょっと聞きたいことがあって…こういう植物知らないかなぁって」



紙に描いておいた、お米の粒と稲穂の絵をロド兄へ見せた。



「おー、上手に稲と米粒を描いたのぅ。

この植物は知っておるが………何を知りたいんじゃ?」



ふぉぉお!

知ってたぁぁぁあ……うしっ! 

顔へ出る喜びは隠しませんが、飛び上がったり拳を突き上げたりは我慢です!



「あのあの、これどこに生えてるの?

あ、それとも、売られているの?

売られていないなら、自分で苗を植えて育てたい!

このお米が久々に食べたくて食べたくて…っ」



あ……ロド兄が驚いてる。


おっと、お米愛に熱が入りすぎてロド兄の手を握って迫ってしまった。

ささっと、手を離し適切な距離に戻して…はい、笑顔っと。

うむ、これでなかったことになる。



「いや、なかったことにはならんからのぅ?



リアや、お米とはそんなに美味いとは思わなんだが……食べたいのかのぅ?」



「うん!!」



あ、鼻息荒く返事してしまった。

くっ……ロド兄が苦笑という珍しい表情を浮かべてる。

アヴィは……………いつもと変わらぬ笑みっすね。

いや、慈愛溢れる笑顔かな?





      *  *  *






お米は大量にゲットできた。

でもこれって、玄米っぽいから精米してぬかも手に入る……この世界なら農薬も無さそうだし、ぬか漬けにぬか洗顔も良いかも!

美容も大事!

ただ想像通り、やはりお米は家畜の餌になっていた………。

でも、ロド兄も一度は口にしたみたいだね。

美味しいとはって言い方してたし。

たしかに、食べ方…というか炊き方を知らなかったら美味しくならないかもね?

先に精米の魔道具作って……あと炊飯釜?

釜炊きしたお米は美味しいっていうから、魔道具でそれっぽい出来にできないかなぁ~?

……っ!

やぁー…どうしよう~炊いたお米を食べれるのが嬉しいのは勿論のこと、それを得るために家事魔道具もつくれちゃうし、ワクワクが止まらないっ!



「リア、物凄く目がキラキラだ……可愛い」



「ほっほっほっ。

あのあまり美味くないお米を美味しくする方法のぅ………。

リアは発想が柔軟じゃから、実際美味しいものが出来そうじゃ。

今からすごく楽しみだのぅ~」



「お米食べる、か。

まだそんなに一緒にいたわけではないが、リアが作り出す料理は確かに美味くて幸せになる。

俺も、期待して待つとしよう」







      *  *  *







さぁー、まずは精米の魔道具作りからいってみよー!

あれって手でやると時間がすごくかかるんだよねー。

某番組で、アイドルが酒瓶みたいのに精米する米を入れて棒でひたすら上から、ガシガシ突いてやってたんだよね。

TV………懐かしいな。

異世界に受信は無理かなぁー(笑)?

あ、いかん、いつのまにか違う方に思考がいってしまった。



「んー……素材はこの白い鉱石かな。

形は、丸型で足は三本で上から玄米を投入出来るようにして……下からぬかと精米済みの米が、分かれて出るようにしないとね。

ぬかと精米済みの米にするには……風属性で米が割れない威力でないとダメ。

あ、分別も風属性でできるかな?

うーん、こんな感じでやってみちゃおっかなー。

よし……………『錬成』」




…今回のキラキラはちょっとだけ花火っぽかったなー。

さて、大きいスイカサイズな白い精米魔道具ができたね!

すぐに試したいけど、先に炊飯魔道具作っちゃわないと。



「炊飯は、火力が大事よね。

だから、火属性はつけるとして……。

水ってどうしよう?

それくらいは自分で調整するべきかなぁー。

あ、でもお粥とかの時にお水の分量が目に見えれば作りやすいから、表示機能つきにはしたいなぁー。

…無属性でできるだろうか?


ま、やってみよ。

これで炊ける、かなー?

やってみるしかないな………『錬成』」



はぅっ!

今回は眩しすぎるよキラキラが!

…おわった?

そろーっと目を開ければ、安定性バッチリの釜風炊飯魔道具ができていた。

もち、5号炊きですよ。



「ふふふ……これで白米が………」



「リア、そのままだとヨダレが垂れてしまうぞ?」



……乙女としてそれはいけませんね。

ふきふき。



「それじゃ、ほかほかご飯を食べるために魔道具を試しつつやりましょうか!」







      *  *  *






ああ………今念願の白い湯気が立つほかほかご飯が目の前に…………嬉しすぎて手が震える。

あ、ちなみにリアはお茶碗とお箸も作っちゃいました。

一応他の人の分も作ったけど…うん、お箸はもうちょっと練習が必要だね。

みんな負けず嫌いだから、すぐに出来るようにしてなるんじゃないかな?

リアが箸を作ったことと、それを難なく使えたことに不思議がってはいたが、そこは笑って誤魔化した。



パク



「ふぁぁ………これだー…。

これが、食べたかったの………」



「……リア、涙が…。

泣くほど、食べたかったんだな…」



涙?

箸を持っていない手で、顔に触れれば確かに頬を涙が流れていた。

あー…白いご飯を食べることで前世の母が恋しくなったみたい。

味噌料理とか口にしてたけど、お箸・お茶碗・炊きたてご飯のセットが引き金になったのかな?

はぁ…今頃少しホームシックになっちゃったのか………。

もう、あちらには戻れないのだからどうにか消化、ではなく昇華させないとね。



ふきふき



なでなで



「ふっ……アヴィ、涙を拭いてくれて…頭を撫でてくれて…ありがと」



白いご飯で、母を思い出し涙が少し出ちゃったけど今はみんながいて幸せだし、お米を食べるための精米と炊飯の魔道具成功したし万々歳だよね!










「うむ………泣き出したからどうしたものかと思うとったら、すぐこれじゃもんなぁー。

おぉ、ヒナさんやお前さんも甘々空間から逃げてきたんかのぅ?」



「………。

悔しいが、この席だとあれはできないな……。

リアが泣き止んで、良かった…」









「……ライちゃん、実は本気だったり…?


いや、まさかのぅ……?」















『リア、泣いてたの』



『リア、泣くと、悲し、い』



『リア………。

白いの…やっぱ…り?』



リアが大好きな精霊たちは、リアが泣くと悲しみリアが笑えば嬉しくなり、と今日はいつもより騒がしく過ごすこととなった1日だった。





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