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第1章 迷々の森
16.家事魔道具⑤
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同時更新の2話目です(^^)
─────────────────
うーん、あとは忘れていることとかないよね?
て・こ・と・は!
魔道具作り再開しちゃっていいよね?!
この間から気になってた“あれ”をやっちゃおーう!
「ねーぇ、ロド兄このオーブンってロド兄が作ったの?」
「んー?
そのオーブンは買ったのじゃよ。
知り合いに作ったはいいが、材料費が高かったため値段が高くなったし、使うにもいまいち魅力が伝わらなくて誰も買ってくれない、と言ってわしに泣きついてきたんじゃ。」
なるほどー…ロド兄にしては面倒くさい作りにしたなぁって思ったから、やっぱりかぁ。
しかし、知り合いが作ったものならいじっちゃダメかー。
「んー、じゃあこれ改良とかしちゃダメだよねー。
自分で一からでも出来るから、別にまた作るか」
「改良したいならしていいぞ?
この作者は、存命しておらんからいじっても大丈夫じゃ。
それに、これがより良くなるのを見られるものなら見たかったかもしれんしのぅ」
そう作者のことを語るロド兄は、懐かしくもどこか楽しそうに話しているように見えた。
「…じゃー、この見た目はほとんど変えずにやってみるね!」
「!
ほっほっほっ…ほんにリアは、初めの時から変わらず優しい子に育っているのぅ。
作者とわしの為にありがとうなぁ」
……いつもはっちゃけたりしているのに対応しているせいか、普通に穏やかに感謝を言われるとなんだか……すごーく照れるわ!
「じゃ、じゃあこれ研究室の方でやるから持ってくね!…………『軽量化』」
オーブンの重さを、リアが片手で持てるくらいにしてキッチンから研究室へと危なげなく持って行った。
リアと入れ替わるように、部屋へとティアローゼスがキッチンへ入ってきた。
「ロド、良かったじゃない。
作者は、あれを完成させることを望んでいたけど、できずあなたにあれを託したのよね?
けどあれ、作者のことを知ってるあなたではどうしても想いが邪魔して、いじることが出来なかったから未完成のままだったんでしょ?」
「あぁ……そうじゃ。
あれは、わしの最初の娘の最後の作品じゃからな……。
どうしても、わしは出来んかった。
じゃが……リアはわしにとって孫であり娘であり、そして妹でもあると勝手に思うておる。
そんなリアならば、改良してあれを完成させても良い、と思ってしまったんじゃ」
「そう……。
でも、そうね…私もあなたと同じであったなら、やっぱりリアにきっと託していたのでしょうね……」
先程リアが出ていった、キッチンの入り口をロドとティアローゼスは優しい眼差しで、暫く見続けていた。
* * *
さぁ、やっと家事魔道具作りです!
このオーブンをあまり変えずにやる、と言えたのは前世のオーブンとあまり大差なく出来ていると、判断したからです。
かなり変わってしまうようだったら、ロド兄が例えいいと言っていても決して手は出さなかっただろう。
もし、変えてしまったらロド兄もこのオーブンも悲しむ気がしたから……。
「このオーブンは、熱の上がり下がりが不安定だから温度設定ができるようにと、時間設定ができないからそれも出来るように改良する。
これができるようになれば、楽にお菓子や料理が作れるようになるわね!
熱は火属性と風属性、時間設定は無属性でいけるかな?
それじゃ、このオーブンの姿そのままにかかってる魔法に上書きしますか…………『錬成』」
* * *
チーン
「リア!
このホロチキンの丸焼きこんがりジューシーでうまいのじゃ!」
「あら。
この熱々のラザニア?とかいうのも美味しいわよ~」
「が~うがぁうがう!」
よしよし…………そろそろデザートタイムといきましょうか!
「じゃじゃーん!
本日の締めのデザートは、フルーツたっぷりタルトでーす!」
「「キラキラー!」」「がーうー!」
さて、私も久々のタルトを味わいましょう。
「「「うまっ!!!」」」「がうっ!」
これだけできれば、オーブン完成と言って良いですよね?
『これで心残りはなくなった?』
『はい。
私の残してしまった言葉と物が、父の心や魂を縛ってしまったことをずっと後悔していました。
でも、もう大丈夫ですね。
あの子が、あなたたちのことを見ることが出来るようになったら、お礼を伝えてくれませんか?
オーブンと父の心の縛りをほどいてくれてありがとう、と』
『必ず、伝え、る』
精霊の言葉を聞き、どこかロドクスを思わせる笑顔を最後に、その淡い半透明な姿を霧散させ消えていった。
『リア…ロドクス…親子…知らず…救った…すご』
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うーん、あとは忘れていることとかないよね?
て・こ・と・は!
魔道具作り再開しちゃっていいよね?!
この間から気になってた“あれ”をやっちゃおーう!
「ねーぇ、ロド兄このオーブンってロド兄が作ったの?」
「んー?
そのオーブンは買ったのじゃよ。
知り合いに作ったはいいが、材料費が高かったため値段が高くなったし、使うにもいまいち魅力が伝わらなくて誰も買ってくれない、と言ってわしに泣きついてきたんじゃ。」
なるほどー…ロド兄にしては面倒くさい作りにしたなぁって思ったから、やっぱりかぁ。
しかし、知り合いが作ったものならいじっちゃダメかー。
「んー、じゃあこれ改良とかしちゃダメだよねー。
自分で一からでも出来るから、別にまた作るか」
「改良したいならしていいぞ?
この作者は、存命しておらんからいじっても大丈夫じゃ。
それに、これがより良くなるのを見られるものなら見たかったかもしれんしのぅ」
そう作者のことを語るロド兄は、懐かしくもどこか楽しそうに話しているように見えた。
「…じゃー、この見た目はほとんど変えずにやってみるね!」
「!
ほっほっほっ…ほんにリアは、初めの時から変わらず優しい子に育っているのぅ。
作者とわしの為にありがとうなぁ」
……いつもはっちゃけたりしているのに対応しているせいか、普通に穏やかに感謝を言われるとなんだか……すごーく照れるわ!
「じゃ、じゃあこれ研究室の方でやるから持ってくね!…………『軽量化』」
オーブンの重さを、リアが片手で持てるくらいにしてキッチンから研究室へと危なげなく持って行った。
リアと入れ替わるように、部屋へとティアローゼスがキッチンへ入ってきた。
「ロド、良かったじゃない。
作者は、あれを完成させることを望んでいたけど、できずあなたにあれを託したのよね?
けどあれ、作者のことを知ってるあなたではどうしても想いが邪魔して、いじることが出来なかったから未完成のままだったんでしょ?」
「あぁ……そうじゃ。
あれは、わしの最初の娘の最後の作品じゃからな……。
どうしても、わしは出来んかった。
じゃが……リアはわしにとって孫であり娘であり、そして妹でもあると勝手に思うておる。
そんなリアならば、改良してあれを完成させても良い、と思ってしまったんじゃ」
「そう……。
でも、そうね…私もあなたと同じであったなら、やっぱりリアにきっと託していたのでしょうね……」
先程リアが出ていった、キッチンの入り口をロドとティアローゼスは優しい眼差しで、暫く見続けていた。
* * *
さぁ、やっと家事魔道具作りです!
このオーブンをあまり変えずにやる、と言えたのは前世のオーブンとあまり大差なく出来ていると、判断したからです。
かなり変わってしまうようだったら、ロド兄が例えいいと言っていても決して手は出さなかっただろう。
もし、変えてしまったらロド兄もこのオーブンも悲しむ気がしたから……。
「このオーブンは、熱の上がり下がりが不安定だから温度設定ができるようにと、時間設定ができないからそれも出来るように改良する。
これができるようになれば、楽にお菓子や料理が作れるようになるわね!
熱は火属性と風属性、時間設定は無属性でいけるかな?
それじゃ、このオーブンの姿そのままにかかってる魔法に上書きしますか…………『錬成』」
* * *
チーン
「リア!
このホロチキンの丸焼きこんがりジューシーでうまいのじゃ!」
「あら。
この熱々のラザニア?とかいうのも美味しいわよ~」
「が~うがぁうがう!」
よしよし…………そろそろデザートタイムといきましょうか!
「じゃじゃーん!
本日の締めのデザートは、フルーツたっぷりタルトでーす!」
「「キラキラー!」」「がーうー!」
さて、私も久々のタルトを味わいましょう。
「「「うまっ!!!」」」「がうっ!」
これだけできれば、オーブン完成と言って良いですよね?
『これで心残りはなくなった?』
『はい。
私の残してしまった言葉と物が、父の心や魂を縛ってしまったことをずっと後悔していました。
でも、もう大丈夫ですね。
あの子が、あなたたちのことを見ることが出来るようになったら、お礼を伝えてくれませんか?
オーブンと父の心の縛りをほどいてくれてありがとう、と』
『必ず、伝え、る』
精霊の言葉を聞き、どこかロドクスを思わせる笑顔を最後に、その淡い半透明な姿を霧散させ消えていった。
『リア…ロドクス…親子…知らず…救った…すご』
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