始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです

夢々(むむ)

文字の大きさ
上 下
19 / 110
第1章 迷々の森

16.家事魔道具⑤

しおりを挟む
同時更新の2話目です(^^)

─────────────────



うーん、あとは忘れていることとかないよね?

て・こ・と・は!

魔道具作り再開しちゃっていいよね?!

この間から気になってた“あれ”をやっちゃおーう!








「ねーぇ、ロド兄このオーブンってロド兄が作ったの?」



「んー?

そのオーブンは買ったのじゃよ。

知り合いに作ったはいいが、材料費が高かったため値段が高くなったし、使うにもいまいち魅力が伝わらなくて誰も買ってくれない、と言ってわしに泣きついてきたんじゃ。」




なるほどー…ロド兄にしては面倒くさい作りにしたなぁって思ったから、やっぱりかぁ。

しかし、知り合いが作ったものならいじっちゃダメかー。



「んー、じゃあこれ改良とかしちゃダメだよねー。

自分で一からでも出来るから、別にまた作るか」




「改良したいならしていいぞ?

この作者は、存命しておらんからいじっても大丈夫じゃ。

それに、これがより良くなるのを見られるものなら見たかったかもしれんしのぅ」



そう作者のことを語るロド兄は、懐かしくもどこか楽しそうに話しているように見えた。




「…じゃー、この見た目はほとんど変えずにやってみるね!」




「!



ほっほっほっ…ほんにリアは、初めの時から変わらず優しい子に育っているのぅ。

作者とわしの為にありがとうなぁ」




……いつもはっちゃけたりしているのに対応しているせいか、普通に穏やかに感謝を言われるとなんだか……すごーく照れるわ!



「じゃ、じゃあこれ研究室の方でやるから持ってくね!…………『軽量化』」



オーブンの重さを、リアが片手で持てるくらいにしてキッチンから研究室へと危なげなく持って行った。












リアと入れ替わるように、部屋へとティアローゼスがキッチンへ入ってきた。



「ロド、良かったじゃない。

作者は、あれを完成させることを望んでいたけど、できずあなたにあれを託したのよね?

けどあれ、作者のことを知ってるあなたではどうしても想いが邪魔して、いじることが出来なかったから未完成のままだったんでしょ?」




「あぁ……そうじゃ。

あれは、わしの最初の娘の最後の作品じゃからな……。

どうしても、わしは出来んかった。

じゃが……リアはわしにとって孫であり娘であり、そして妹でもあると勝手に思うておる。

そんなリアならば、改良してあれを完成させても良い、と思ってしまったんじゃ」




「そう……。

でも、そうね…私もあなたと同じであったなら、やっぱりリアにきっと託していたのでしょうね……」




先程リアが出ていった、キッチンの入り口をロドとティアローゼスは優しい眼差しで、暫く見続けていた。













      *  *  *









さぁ、やっと家事魔道具作りです!

このオーブンをあまり変えずにやる、と言えたのは前世のオーブンとあまり大差なく出来ていると、判断したからです。

かなり変わってしまうようだったら、ロド兄が例えいいと言っていても決して手は出さなかっただろう。

もし、変えてしまったらロド兄もこのオーブンも悲しむ気がしたから……。








「このオーブンは、熱の上がり下がりが不安定だから温度設定ができるようにと、時間設定ができないからそれも出来るように改良する。

これができるようになれば、楽にお菓子や料理が作れるようになるわね!

熱は火属性と風属性、時間設定は無属性でいけるかな?

それじゃ、このオーブンの姿そのままにかかってる魔法に上書きしますか…………『錬成』」









      *  *  *







チーン




「リア!

このホロチキンの丸焼きこんがりジューシーでうまいのじゃ!」



「あら。

この熱々のラザニア?とかいうのも美味しいわよ~」



「が~うがぁうがう!」




よしよし…………そろそろデザートタイムといきましょうか!




「じゃじゃーん!

本日の締めのデザートは、フルーツたっぷりタルトでーす!」



「「キラキラー!」」「がーうー!」



さて、私も久々のタルトを味わいましょう。












「「「うまっ!!!」」」「がうっ!」











これだけできれば、オーブン完成と言って良いですよね?
















『これで心残りはなくなった?』



『はい。

私の残してしまった言葉と物が、父の心や魂を縛ってしまったことをずっと後悔していました。

でも、もう大丈夫ですね。



あの子が、あなたたちのことを見ることが出来るようになったら、お礼を伝えてくれませんか?

オーブンと父の心の縛りをほどいてくれてありがとう、と』



『必ず、伝え、る』



精霊の言葉を聞き、どこかロドクスを思わせる笑顔を最後に、その淡い半透明な姿を霧散させ消えていった。



『リア…ロドクス…親子…知らず…救った…すご』




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

処理中です...