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第1章 迷々の森
※おじいさん side①
しおりを挟む「んーーーーっ、すっかり熱中してしまったわい。
さて、寝るか……………ん?」
もう深夜というのに外が、いや森が騒がしい?
ひとまず、外に出て聞いてみるかのぅ。
ずっと座っていて凝り固まっていた体を、伸ばしながら椅子から立ち上がり外へ続くドアへと向かった。
外に出て、先の見えない暗い木々が立ち並ぶ空間に向かって声をかけた。
「おーい、何かあったのか?」
ただ暗がりがあるだけの空間に、様々なパステルカラーの直径5cmほどの淡く光るふわふわ毛玉が、ポッポッポッと姿を現し始めた。
『あの子がいるの』
「あの子?あの子とは?」
『あの子、逃げてきた、この森の中』
「…あー、森の中にいるその子のことで騒がしいのか?」
『あの子、守る。
私達が守るべき存在』
「そうか…なら、いつも通りわしが保護しよう。
案内を頼めるかの?」
急げ急げと、精霊の集団がわしを囲みその方向へ体を押された。
「これこれ、わかっとる。ここにいるんじゃなー……………………幼女?」
てっきり、てっきりわしはいつものように動物だと思っていた。
精霊は、よく怪我した動物などがいると騒いでいたから、今回もそうだとばかり…。
人間、しかも幼い子どもが木の根元で眠っている。
こんな深夜の森に…この迷々の森にいるなんて、ここに住み始めてから初めてだ。
驚いて思わず立ち止まっているわしを、精霊は早く助けろと服のあちこちを引っ張っていて、それもそうだと思い思考を中断させた。
「この子をわしの家で保護、ということでいいんじゃな?」
精霊に念の為確認を取る。
違っていると、後々大変なことになるのは経験から学んているので確認は怠らない。
『うん。この子、保護。そして、常識・魔法・護身術も教えて、オルトゥムが育てる』
「え?わしが育てて大丈夫なのか?
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この子は成し遂げれる、というのかの?」
『うん。この子、柔軟。未知数。神の愛し子」
「これまた………すごい子と出会えたもんじゃ。
でもだからこそ、飽きるほどに長く生きているというのに生に飽きが来ることがないのじゃがな…。
さて、この子を連れ帰るとするかの。
これからが楽しみじゃのぅーほっほー」
木の根元に寝ている幼い子を、優しく抱き上げ…その体の軽さと細さに驚いた。
「まずは、ちゃんと食事を取らせて少し太らせることからかのぅ」
ゆっくりそして慎重に、幼子を起こさないように自宅へ向かった。
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