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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする
49話 襲来と混乱
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僕の向かいで苦笑するレイラは、全く訳の分かっていない僕に対して、人差し指を立てて上を指さした。
つられて僕と、ソファーの後ろで僕にピッタリくっ付いて控えていたテオと、二人して天井を見上げたら。
「え“。」
「あ!!」
唖然とする僕と、目を輝かせるテオ。
どちらも驚きには違いないが、対照的な反応をする。
だって、何も無い筈の天井が急に光り、大きな塊の影が見えて。
“それら”がふわりと降りて来たから。
そして、僕の膝の上には。
淡いプラチナブロンドの髪が肌を掠め、くりっとした大きな茶色の瞳と目が合うと…。
それは瞬きの内に、僕と同じ白銀の髪と藍色の瞳へと変貌した。
まさに、天使の様な愛くるしい美貌の少女で。
「君は……シルヴィア?!」
「お兄様っ!」
思わず口にする、前世の自分が……目の前に居る。
そして、僕を“お兄様”と呼び、抱き付いて来た。
「シリルッ!!会いたかったよー!」
「私もっ」
同じく天井から降って来た少年と少女が、それぞれ嬉々として抱き付いて来る。
ちょっと待って。
彼らは……。
「巫子様方っ!!」
上擦った弾んだ声で、後ろのテオが叫ぶ。
「救世の……巫女?」
膝の上の彼女を抱きしめ返す事もせず、呆然と口にする僕に、抱き付いて来た彼女らは顔を上げ、それぞれに恐る恐る僕の方を見てきた。
対する僕は、ガタガタと震え、冷や汗が止まらない。
尋常じゃない僕の反応を訝しんだ膝上のシルヴィアが、心配そうな顔で僕の頬に触れようとしたけれど。
その眼前の彼女を、今度はギュッと強く抱きしめた。
「きゃっ♡」
予想外の僕の行動に、抱きしめられた彼女は何故か嬉しそうな悲鳴を上げたが。
僕は絶望の声を上げる。
「救世の巫女……カレンッ!これ以上僕らに……シルヴィアに近付くな!!近付かないでくれっ!————お願いだからシルヴィアを、殺さないでくれ!!!」
「?!」
「え“…っ」
空気を切り裂く様な叫び声が、この自室に響き渡る。
嬉しそうだった少女らは、僕の叫びに皆絶句して、一様に固まってしまった。
「お、お兄様…何言って……」
「君はシルヴィアだろう?!何で前世の君が僕の目の前に居るのか分からないけど、その女から離れるんだ!関わっちゃいけない!でないとまた死んでしまう!だからっ」
「シリル、私はっ」
「?!近付くなと言っただろう!!!」
僕の言葉に混乱するシルヴィアだったが、それ以上に錯乱してしまっていた僕は、泣きそうな顔で近付いて来たカレンに、更に半狂乱になって叫び声を上げる。
そのカレンの隣に居た、カレンに似た顔の男も僕らに近寄ろうとして、僕は鋭く睨み返したら、怯んで伸ばした手を引っ込めた。
僕と救世の巫女との間に緊迫した空気が漂う中、それは直ぐに破られる。
「シリル、どうした?!大丈夫か?」
「入りますよ?!」
僕の張り上げてしまった声を耳にし、扉の外から叔父様と叔母様が駆けつけて来てしまったのだ。
「え“?!え、ちょっと待…っ」
「……え。」
思わず静止の言葉を口にしたが、反応が遅れてしまった。
僕が声を上げた時には、既に扉は開かれ、中の様子を目にした叔父夫婦は、広い部屋とは言え、予想外の来客者達を目の当たりにして、一瞬固まってしまう。
「あ!ルーファスさん、グレイスさん!」
しかし、空気を読まないカレン似の男が、嬉しそうに叔父様と叔母様の名前を親し気に口にしたら。
「カイト様!カレン様も。またこちらに来て下さったのですか!」
「はい!急に上がり込んでてすみません。たった今此処に来た所なんです。でも、何だかシリルの様子がおかしくて…」
「あ…。それはその、シリルは今…」
叔父様はソイツの名前を知っていた。
敬称まで付けて。
クレインの公爵家を正式に継いで下さったらしい叔父様が、こんなよく分からない男に敬意を払うなんて。
一体、どういう事だと訝しんだが、その叔父様がカイトとか言う男から視線をこちらに向けると、大きく瞠目した。
「…………え。君は……」
「………叔父様、叔母様……」
「————そうだ。君は……シルヴィアだ。」
つられて僕と、ソファーの後ろで僕にピッタリくっ付いて控えていたテオと、二人して天井を見上げたら。
「え“。」
「あ!!」
唖然とする僕と、目を輝かせるテオ。
どちらも驚きには違いないが、対照的な反応をする。
だって、何も無い筈の天井が急に光り、大きな塊の影が見えて。
“それら”がふわりと降りて来たから。
そして、僕の膝の上には。
淡いプラチナブロンドの髪が肌を掠め、くりっとした大きな茶色の瞳と目が合うと…。
それは瞬きの内に、僕と同じ白銀の髪と藍色の瞳へと変貌した。
まさに、天使の様な愛くるしい美貌の少女で。
「君は……シルヴィア?!」
「お兄様っ!」
思わず口にする、前世の自分が……目の前に居る。
そして、僕を“お兄様”と呼び、抱き付いて来た。
「シリルッ!!会いたかったよー!」
「私もっ」
同じく天井から降って来た少年と少女が、それぞれ嬉々として抱き付いて来る。
ちょっと待って。
彼らは……。
「巫子様方っ!!」
上擦った弾んだ声で、後ろのテオが叫ぶ。
「救世の……巫女?」
膝の上の彼女を抱きしめ返す事もせず、呆然と口にする僕に、抱き付いて来た彼女らは顔を上げ、それぞれに恐る恐る僕の方を見てきた。
対する僕は、ガタガタと震え、冷や汗が止まらない。
尋常じゃない僕の反応を訝しんだ膝上のシルヴィアが、心配そうな顔で僕の頬に触れようとしたけれど。
その眼前の彼女を、今度はギュッと強く抱きしめた。
「きゃっ♡」
予想外の僕の行動に、抱きしめられた彼女は何故か嬉しそうな悲鳴を上げたが。
僕は絶望の声を上げる。
「救世の巫女……カレンッ!これ以上僕らに……シルヴィアに近付くな!!近付かないでくれっ!————お願いだからシルヴィアを、殺さないでくれ!!!」
「?!」
「え“…っ」
空気を切り裂く様な叫び声が、この自室に響き渡る。
嬉しそうだった少女らは、僕の叫びに皆絶句して、一様に固まってしまった。
「お、お兄様…何言って……」
「君はシルヴィアだろう?!何で前世の君が僕の目の前に居るのか分からないけど、その女から離れるんだ!関わっちゃいけない!でないとまた死んでしまう!だからっ」
「シリル、私はっ」
「?!近付くなと言っただろう!!!」
僕の言葉に混乱するシルヴィアだったが、それ以上に錯乱してしまっていた僕は、泣きそうな顔で近付いて来たカレンに、更に半狂乱になって叫び声を上げる。
そのカレンの隣に居た、カレンに似た顔の男も僕らに近寄ろうとして、僕は鋭く睨み返したら、怯んで伸ばした手を引っ込めた。
僕と救世の巫女との間に緊迫した空気が漂う中、それは直ぐに破られる。
「シリル、どうした?!大丈夫か?」
「入りますよ?!」
僕の張り上げてしまった声を耳にし、扉の外から叔父様と叔母様が駆けつけて来てしまったのだ。
「え“?!え、ちょっと待…っ」
「……え。」
思わず静止の言葉を口にしたが、反応が遅れてしまった。
僕が声を上げた時には、既に扉は開かれ、中の様子を目にした叔父夫婦は、広い部屋とは言え、予想外の来客者達を目の当たりにして、一瞬固まってしまう。
「あ!ルーファスさん、グレイスさん!」
しかし、空気を読まないカレン似の男が、嬉しそうに叔父様と叔母様の名前を親し気に口にしたら。
「カイト様!カレン様も。またこちらに来て下さったのですか!」
「はい!急に上がり込んでてすみません。たった今此処に来た所なんです。でも、何だかシリルの様子がおかしくて…」
「あ…。それはその、シリルは今…」
叔父様はソイツの名前を知っていた。
敬称まで付けて。
クレインの公爵家を正式に継いで下さったらしい叔父様が、こんなよく分からない男に敬意を払うなんて。
一体、どういう事だと訝しんだが、その叔父様がカイトとか言う男から視線をこちらに向けると、大きく瞠目した。
「…………え。君は……」
「………叔父様、叔母様……」
「————そうだ。君は……シルヴィアだ。」
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