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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする
29話 外での女子会
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「わぁ!本当に来てくれた。嬉しいわ、シリル様!」
「私も!もう、ロレン兄様にダメって言われて寂しかったんですよ~私達。」
「そうよ、そうよ!シリル様独り占めしちゃって。ねーシリル様、あんな横暴馬鹿弟なんかに飽きたら、いつでも乗り換えていいんだからね。シリル様だったら大歓迎なんだから!私達♪」
「あ……ハハ…。シリル様、困ってらっしゃいますよ?カルラ様、ヴィオラ様。」
「「えー。」」
ソフィア様に言われるがまま連れられて、同じ馬車に乗り込むと、先に待って下さっていた王女様お二人と相乗りし、馬車は王宮とは反対方向へ進み出した。
なんでも、以前からずっとお二人が言ってみたかったお店があるらしい。
それにお供する形となった。
キャッキャとお喋りを楽しまれる王女様お二人を前に、なんとか曖昧な笑みを返すと。
楽し気だった姫様達は、しゅんとしぼんでしまった。
「……ごめんなさいね、クレイン卿。私達の我儘に付き合わせてしまって。女だけの所に連れ回されるのは迷惑だったわよね?」
「…いいえ。せっかくお誘い下さったのに、こんなで……僕の方こそ、すみません。」
「いいのよ。ほら、お兄様ったら人使いが荒いから、たまには気分転換にどうかなって、ソフィア様とも話してたのよ。」
カルラ殿下とヴィオラ殿下が、それぞれ心配しながら僕に仰って下さって。
「姫様方……ご心配をお掛けして、本当に申し訳ございません。」
「ここのところ予定が立て込んでいたから、そのお疲れが出たのもあったのよ、きっと。疲れた時には甘い物が一番です。美味しいのを食べて、リフレッシュしましょ!」
ね?と、ソフィア様も隣から仰って下さり。
お三方の優しさに触れ、僕は有難くて泣きそうな顔で笑って見せた。
ソフィア様の提案で、彼女がロレンツォ殿下とよく来る上級貴族向けの商品や店が立ち並ぶ大通りを選ばれ、そこで軽く小物を購入された後、レストランで昼食をご一緒する事となった。
カルラ様もヴィオラ様も、王女殿下という事で近衛騎士は帯同されていたが、あまり目立ちたくないとのご希望で、護衛は最小限にし、あくまでもお忍びスタイルで周囲の貴族や富豪に混じってのお食事会となった。
「ふふ。美味しかった~。外での食事は格別ね。」
「ソフィア様のオススメなだけあるわ。周りを気にせずこんなに楽しめたのは久しぶりよ。」
「お気に召して頂けて良かったです。姫様の仰った通り、もっと市井の者が行くカジュアルなお店もそれはそれで刺激的なんですが、それは向こうも同じですからね。一般民衆の中に急にお姫様が現れたら、皆もうビックリしてテンションが上がってしまって、もみくちゃにされちゃいますからね。」
「なるほどねー。」
数少ない城外への外出も相まって、初めヴィオラ様はもっと庶民的な通りでの買い物や食事を希望された。
市井の人々の暮らしを直に目にして体験したいのもあったのだろう。
しかし、その意見はソフィア様が丁重に退けられたのだ。
普段身近に接する事の無い民衆からすれば、この国の頂点におられる尊い姫様方を間近に接すれば、きっと皆大喜びするだろうが、喜び過ぎて大騒ぎになってしまうだろうから、止した方がいいだろうと。
やや遠慮がちにだがそう口にされたソフィア様に対して、世間知らずな王女二人の後ろで、彼女達の護衛騎士達が、強く頷き同調していた。
ただでさえお忍びでの外出の希望を受けた彼らにとって、それだけで護衛のハードルが上がってしまっているのだ。
まだ治安の良い、貴族向けの店が立ち並ぶ通りなら、少人数で目立たせない護衛もやりやすい。
流石、我々の懸念をよくご理解下さっている!と騎士達はソフィア様に心の中で感謝していたのが、見ているだけでもよく分かった。
「私達に付き合って下さってありがとう。シリル様は何処か行きたいトコ希望無かった?」
「ご一緒出来ただけで光栄でした。僕は先日もこの辺は来ましたので、特に行きたい所は無いです。」
「そう?ちょっと残念!シリル様の好みのお店も知りたかったのに。」
ヴィオラ様と共にはしゃぐカルラ様は、楽しそうに笑いながら、僕へも気遣って下さる。
有難いかぎりだ。
(……?)
楽しそうに笑い合う少女らの傍らで、僕は不意に明後日の方向に視線を向けた。
何か、変な感じがする。
知っている気配が。
お二人が帰りの馬車に先に乗り込まれるのを待っている中、僕は周囲を見渡したが、何も変わった様子は見受けられない。
テオがキョトンとした顔を見せるが、それに気付いておられないソフィア様は、僕の方へ顔を寄せて囁かれた。
「式典でお疲れの中、ご一緒下さってありがとうございました。」
「そんな、こちらこそ。」
「……ふふ。良かった。ちょっとだけ表情が解れたみたい。シリル様、ここの所お元気なかったから。兄達に言いにくい事なら、私がご相談に乗りますから……気にせず仰って。気晴らしにお付き合いするだけでも構いませんから。」
「本当に、ご心配をおかけしてごめんなさい。……ありがとうございます。」
僕よりも一つ年若い彼女の方が、余程しっかりなされている。
ご自身も王子妃となられて、各方々とのお付き合いなど色々と大変であろうに。
にもかかわらず、臣下の僕にすら、こうして気に掛けて下さる。
申し訳なさでいっぱいになる。
それでもニッコリと微笑まれるソフィア様は、王女様に続いて馬車に乗り込むのにステップに足を掛けようとされた時、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「私も!もう、ロレン兄様にダメって言われて寂しかったんですよ~私達。」
「そうよ、そうよ!シリル様独り占めしちゃって。ねーシリル様、あんな横暴馬鹿弟なんかに飽きたら、いつでも乗り換えていいんだからね。シリル様だったら大歓迎なんだから!私達♪」
「あ……ハハ…。シリル様、困ってらっしゃいますよ?カルラ様、ヴィオラ様。」
「「えー。」」
ソフィア様に言われるがまま連れられて、同じ馬車に乗り込むと、先に待って下さっていた王女様お二人と相乗りし、馬車は王宮とは反対方向へ進み出した。
なんでも、以前からずっとお二人が言ってみたかったお店があるらしい。
それにお供する形となった。
キャッキャとお喋りを楽しまれる王女様お二人を前に、なんとか曖昧な笑みを返すと。
楽し気だった姫様達は、しゅんとしぼんでしまった。
「……ごめんなさいね、クレイン卿。私達の我儘に付き合わせてしまって。女だけの所に連れ回されるのは迷惑だったわよね?」
「…いいえ。せっかくお誘い下さったのに、こんなで……僕の方こそ、すみません。」
「いいのよ。ほら、お兄様ったら人使いが荒いから、たまには気分転換にどうかなって、ソフィア様とも話してたのよ。」
カルラ殿下とヴィオラ殿下が、それぞれ心配しながら僕に仰って下さって。
「姫様方……ご心配をお掛けして、本当に申し訳ございません。」
「ここのところ予定が立て込んでいたから、そのお疲れが出たのもあったのよ、きっと。疲れた時には甘い物が一番です。美味しいのを食べて、リフレッシュしましょ!」
ね?と、ソフィア様も隣から仰って下さり。
お三方の優しさに触れ、僕は有難くて泣きそうな顔で笑って見せた。
ソフィア様の提案で、彼女がロレンツォ殿下とよく来る上級貴族向けの商品や店が立ち並ぶ大通りを選ばれ、そこで軽く小物を購入された後、レストランで昼食をご一緒する事となった。
カルラ様もヴィオラ様も、王女殿下という事で近衛騎士は帯同されていたが、あまり目立ちたくないとのご希望で、護衛は最小限にし、あくまでもお忍びスタイルで周囲の貴族や富豪に混じってのお食事会となった。
「ふふ。美味しかった~。外での食事は格別ね。」
「ソフィア様のオススメなだけあるわ。周りを気にせずこんなに楽しめたのは久しぶりよ。」
「お気に召して頂けて良かったです。姫様の仰った通り、もっと市井の者が行くカジュアルなお店もそれはそれで刺激的なんですが、それは向こうも同じですからね。一般民衆の中に急にお姫様が現れたら、皆もうビックリしてテンションが上がってしまって、もみくちゃにされちゃいますからね。」
「なるほどねー。」
数少ない城外への外出も相まって、初めヴィオラ様はもっと庶民的な通りでの買い物や食事を希望された。
市井の人々の暮らしを直に目にして体験したいのもあったのだろう。
しかし、その意見はソフィア様が丁重に退けられたのだ。
普段身近に接する事の無い民衆からすれば、この国の頂点におられる尊い姫様方を間近に接すれば、きっと皆大喜びするだろうが、喜び過ぎて大騒ぎになってしまうだろうから、止した方がいいだろうと。
やや遠慮がちにだがそう口にされたソフィア様に対して、世間知らずな王女二人の後ろで、彼女達の護衛騎士達が、強く頷き同調していた。
ただでさえお忍びでの外出の希望を受けた彼らにとって、それだけで護衛のハードルが上がってしまっているのだ。
まだ治安の良い、貴族向けの店が立ち並ぶ通りなら、少人数で目立たせない護衛もやりやすい。
流石、我々の懸念をよくご理解下さっている!と騎士達はソフィア様に心の中で感謝していたのが、見ているだけでもよく分かった。
「私達に付き合って下さってありがとう。シリル様は何処か行きたいトコ希望無かった?」
「ご一緒出来ただけで光栄でした。僕は先日もこの辺は来ましたので、特に行きたい所は無いです。」
「そう?ちょっと残念!シリル様の好みのお店も知りたかったのに。」
ヴィオラ様と共にはしゃぐカルラ様は、楽しそうに笑いながら、僕へも気遣って下さる。
有難いかぎりだ。
(……?)
楽しそうに笑い合う少女らの傍らで、僕は不意に明後日の方向に視線を向けた。
何か、変な感じがする。
知っている気配が。
お二人が帰りの馬車に先に乗り込まれるのを待っている中、僕は周囲を見渡したが、何も変わった様子は見受けられない。
テオがキョトンとした顔を見せるが、それに気付いておられないソフィア様は、僕の方へ顔を寄せて囁かれた。
「式典でお疲れの中、ご一緒下さってありがとうございました。」
「そんな、こちらこそ。」
「……ふふ。良かった。ちょっとだけ表情が解れたみたい。シリル様、ここの所お元気なかったから。兄達に言いにくい事なら、私がご相談に乗りますから……気にせず仰って。気晴らしにお付き合いするだけでも構いませんから。」
「本当に、ご心配をおかけしてごめんなさい。……ありがとうございます。」
僕よりも一つ年若い彼女の方が、余程しっかりなされている。
ご自身も王子妃となられて、各方々とのお付き合いなど色々と大変であろうに。
にもかかわらず、臣下の僕にすら、こうして気に掛けて下さる。
申し訳なさでいっぱいになる。
それでもニッコリと微笑まれるソフィア様は、王女様に続いて馬車に乗り込むのにステップに足を掛けようとされた時、背後から聞き覚えのある声が響いた。
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