上 下
266 / 347
続編 開き直った公爵令息のやらかし

43話 どうしよう?!

しおりを挟む
「もし僕を心配してくれてるのなら、大丈夫だから。」

甘く蕩ける様なキスをくれて、ニッコリと微笑むシリルは、何度見ても美しい。
湯上りで乾ききっていない艶やかな髪が、透き通る様な白い肌に映えて、得も言われぬ麗しさだ。

こんな美しくも愛らしい彼から求められて、今すぐにも飛びつきたくなる。
しかし、前回彼を無性に求めすぎて、怖がらせてしまった。
彼にはただただ甘く包み込む様な優しさで、抱きしめて差し上げたいのに。
時折、こんな風に誘惑して来る。

本当に勘弁して欲しい。
私は貴方が思っているほど、そんなに出来た人間ではないのだ。
貴方が好きで、好き過ぎて、その色香に溺れ過ぎたら、取り返しがつかないほど無茶苦茶にしてしまいそうで……怖い。

そうだというのに、この目の前の愛する彼はと言えば。

不意に私に背を向けたかと思うと、ベッド脇のナイトテーブルの引き出しから、おもむろに何かを取り出した。

「いつもならバテちゃって駄目だったけど、コレならイける気がする!」
「……え?って、ん?それ…何か見た事………あ“。」

小さい箱に入っていたそれを私に見せてくれたが、彼が手にしたのは淡い色の液体が入った小瓶で。
性交の時に使う香油は大体私の方で準備しているから、シリルの方からそういった?類の物を入手されるのは珍しくて、一瞬呆けてしまったが。
……どこかで見覚えが……と思って記憶を辿ろうとして、やっと気付いたら。

キュポンッ。

「んぐ…っ」
「あ“…あ”ぁぁぁぁ!?ちょ、シリル!!」

————それって!

思い出してビックリしていたら、シリルは私が止める間も無く、小瓶に入った薄紅色のその液体を何のためらいもなく飲み込んだ。

「んー…変な味じゃないけど、妙に甘ったるいなぁ…。」

不味くはないけど、喜んで飲みたいと思うほど美味しくもない。
なんて、微妙な顔になってシリルは呟かれたが。

「ちょっとぉ!何で貴方がそんな物……って言うか、うわぁぁぁ!飲み干しちゃったんですか?!」

彼の手には空になった小瓶が。
なんて事だ!全部飲んでしまったなんて!!
軽くパニックを起こしそうになったのに、彼はと言えば満面の笑みをしている。

「うん!これでもう大丈夫!」
「~~~~全然大丈夫じゃない!シリル、貴方…今ご自分の飲まれた物が何か、ご存じなんですか?!」

今しがた私の目の前で勢い良く飲み込まれた、それは……ソレは。

「何って、媚薬でしょ?媚薬って要は興奮剤とか精力剤の類だから、確かにちょうどいいかも。これで僕だって一晩くらいは問題ない筈。さぁ、サフィル!どうぞ遠慮なく!」
「遠慮なく、じゃないですよ!するにしたって、なんて事をっ」

いくら何度も抱き合った、とは言っても。
猥本もご覧になった事のない様な無垢な御方が、あろう事か……媚薬だなんて。
ど、ど、どうしよう……?!

こんな都合が良過ぎる事態……遂に妄想か白昼夢でも見ているのだろうか?自分は。
いやいや、しかし。
想定外過ぎる事態を前に、実際……どうすればいいのか。
頭が真っ白になって固まっていると。

私の前にずぃと身を乗り出して来られたシリルに両頬を掴まれて、また唇を奪われた。
チロチロとその可愛らしい舌を絡めたキスが気持ち良くて、つい今し方の焦りも忘れて流されてしまう。

「んっ…ふぁっ」
「んぅ………は、シリル…」

ゆっくりと唇を離されて、見つめて来られる彼の目は。
とろんと蕩けたものになっている。
その反応は、単にキスの所為なのか、媚薬の効果か。

どちらにしろ、頬は朱の色を帯び、蕩けた瞳で見つめて来る彼は。
凄まじい色気を放っており、ずくりと欲を煽られる。
なんて美しく、蠱惑的なのだろう。
この様な彼を前に、反応するなという方が無理というものだろう。

「う…あ…はぁ……」
「その、大丈夫ですか…?」

悩ましい声を上げて喘ぐ彼は、色っぽいが苦しげで。
心配になって、恐る恐る手を伸ばすと。
その手を両手でガシッと掴まれて。
ちぅちぅと、実に可愛らしいキスを送られる。
掴む手の勢いは強引だったが、指先や手の甲に触れる唇は柔らかで。
夢中になってキスを下さるから。
もう、それだけで嬉しくて仕方が無い。

「んぁっ……ふっ」

堪らなくなって、キスを送られたその手ごと彼の頬を掴み、噛みつく様なキスをして。
その唇に己の唇を重ね、熱い口内を貪り尽くす。
舌を絡め、彼の舌を吸い上げたら、気持ちがイイのか喜んで彼も絡めてくれる。
ひとしきりその甘い口内を貪り味わい尽くしてから、そっと唇を離すと。
ぶるっと震えたシリルは、いつになく蕩けた顔をしていて。

……マズい。
かつてない程に扇情的な目で見つめて来られる。
それも、貴方を求めてやまない私だけを捉えて、離さないのだ。
こんなの、我慢できるわけがない。

今すぐにでも押し倒して、その唇だけでなく、甘美なその身を思う存分貪り尽くしたい衝動に駆られてしまう。
幾度この身を重ねても、何度も何度も欲して、渇望してしまう。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...