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続編 開き直った公爵令息のやらかし
3話 訪問
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「アン叔母様に会うの楽しみ!」
「僕も!」
「ふふ。あの子も喜ぶわ。」
「……。」
ベレスフォード伯爵家へ謝罪しに行きたいと言った僕に、グレイス義母上は確かに協力すると言って下さったが……。
そこへ向かう馬車の中には、僕と義母上だけでなく、何故かシャーロットとリチャードも居て。
そして、ルーファス義父上も。
……これじゃ、謝罪じゃなくて、ただのお出かけになってないか?
皆で久々に義母上の実家に遊びに行こう!という感じになっている。
何でこんな事に?と頭に疑問符を浮かべたままの僕に、義父上が。
「水臭いじゃないか、シリル。グレイスと二人で行こうとしていたなんて。これはお前だけの話じゃない。私も関係する事だ。そうだろう?」
「確かに……そうですけど…。」
「それに、私はもうお前の父親なんだぞ。少しくらい頼ってくれてもいいだろう。」
少しムスッとした様な表情をする義父上に、僕がどうすればいいのか目を泳がせていると。
隣から義母上が、可笑しそうに笑いをこらえながら小声で教えてくれる。
「…拗ねてるのよ、私には話してくれたのに、自分には打ち明けてくれなかったって。」
「グレイス!だってそうだろう?クレイン家を私に継いで欲しい事だって、直接言ってはくれなかったし…。あの巫子様とアルベリーニ卿には話していたのに!私にだってもっと相談して欲しいぞ……シリル。」
しょんぼりした顔を見せたルーファス義父上は、シャーロットに頭をなでなでされていた。
「義父上……その……すみませんでした。今まで散々お世話になったのに、大事な事をお話するのがいつも遅くて……。」
「私達はちゃんとお前の味方だから、心配せずに、もっと色んな事を話してくれ。な?」
テオだけじゃない。
義父上も、こんな僕の事を支えて下さる。
それを当然の事と甘えてばかりではいけない。
きちんと話すべき事は話さないと、大事に想ってくれている相手に心配をさせるだけだ。
それに、気付かせてくれた。
「はい。一緒に来て下さって、ありがとうございます。本当は不安でいっぱいだったんです。だから、こうしてご一緒してもらえて、どんなに心強いか。」
「兄さま、大丈夫ですよ!僕も付いてます!」
「ロティーも!ロティーも!」
「うん。皆ありがとう。」
重苦しかった心は、いつしか軽くなり、広い筈の馬車の中を家族5人でキャッキャとはしゃいで狭かった。
喋っていたらあっという間に気持ちも解れて。
滞在中の公爵領から王都メルシアンのベレスフォード伯爵家のお屋敷へは、早々に到着出来た。
執事に案内された応接間にて待つ事、十数分。
「リック!ロティー!いらっしゃい!!」
溌剌とした声で部屋に飛び込んで来たのは、軽やかなドレスを着たアンドレア叔母様だった。
「アン叔母様!」
「叔母様!!」
「こーら!お姉ちゃんって呼びなさいって言ってるでしょー!」
叔母様と呼ばれるのは嫌なのか、お姉ちゃん呼びを強要し、口を尖らせながらも、幼い二人が可愛くて仕方ないのか、アンドレア叔母様は二人を順に抱き上げて喜んでいた。
「ちょっと、アン。もう身を固めたんだから、お姉ちゃん呼びは無いでしょ。」
「姉様!いいの!二人にはいつまでもお姉ちゃんって呼んでもらうんだから。」
義母上が呆れていたが、叔母様は構わずそっぽを向いた。
姉妹だから、とても気安い感じで楽しそうだ。
「アンドレア、式以来だね。元気そうで良かった。」
「あ、ルーファス様!…じゃなかった、クレイン公爵様、その節はどうもありがとうございましたっ」
「いやいや、こちらの方こそ。その件にも関係するんだけど、君に会いたがっていたから連れて来たんだ、ほら。」
そう言って、義父上の影に隠れてしまっていた僕は、促されて恐る恐る進み出た。
「……大変ご無沙汰しております。アンドレア叔母様……いえ、姉上…様?」
い、いいのかな。
叔母様呼びを嫌がっておられる様だから、姉上様と言い換えたが、僕も言っちゃって良かったんだろうか?
恐る恐る顔を覗き見ると。
視線が合った叔母様…姉上様?は。
「………シリル!まぁ!随分立派になって!!」
それこそシャーロットの様な純粋なキラキラした目で見つめて来られた。
「あーん、ごめんなさいねー。前にマリアンヌ様にお土産持って来てくれたりしてたのよね?私、ちょうど休みとか外勤とかで外れちゃってたから、会えなかったのよね~。」
絶対に僕の所為で空気を悪くするだろうな、と覚悟していた僕は、予想外の反応に目を丸めるしか出来ない。
……今の状況に追い込んでしまった元凶が僕って事、もしかして姉上様は知らないのか?
いや、いくらなんでもそんな事はある筈がない。
悪感情を向けられなくて良かったと、素直に喜ぶよりも、訳が分からなくて固まってしまっていたら。
後ろから。
「わぁ!シリル!少し見ない間にまた大きくなったなぁ!いやーこんなに美人になっていたとは!」
「本当に。あのアナトリア様にも引けを取らない麗しさだわー。」
やって来たのは、ベレスフォード伯爵家当主のダリル・ベレスフォード伯爵と奥方のヴァネッサ・ベレスフォード伯爵夫人。
そして。
「あぁ、すみません。遅れてしまって。……わぁ、義姉様の話は本当だったんだ……。あ、失礼致しました。アンドレアの夫のディオンです。」
そう言って、穏やかな笑みを向けて下さったのは、この度アンドレア叔母…姉上様と成婚し、ベレスフォード家の婿養子となったディオン様だった。
「僕も!」
「ふふ。あの子も喜ぶわ。」
「……。」
ベレスフォード伯爵家へ謝罪しに行きたいと言った僕に、グレイス義母上は確かに協力すると言って下さったが……。
そこへ向かう馬車の中には、僕と義母上だけでなく、何故かシャーロットとリチャードも居て。
そして、ルーファス義父上も。
……これじゃ、謝罪じゃなくて、ただのお出かけになってないか?
皆で久々に義母上の実家に遊びに行こう!という感じになっている。
何でこんな事に?と頭に疑問符を浮かべたままの僕に、義父上が。
「水臭いじゃないか、シリル。グレイスと二人で行こうとしていたなんて。これはお前だけの話じゃない。私も関係する事だ。そうだろう?」
「確かに……そうですけど…。」
「それに、私はもうお前の父親なんだぞ。少しくらい頼ってくれてもいいだろう。」
少しムスッとした様な表情をする義父上に、僕がどうすればいいのか目を泳がせていると。
隣から義母上が、可笑しそうに笑いをこらえながら小声で教えてくれる。
「…拗ねてるのよ、私には話してくれたのに、自分には打ち明けてくれなかったって。」
「グレイス!だってそうだろう?クレイン家を私に継いで欲しい事だって、直接言ってはくれなかったし…。あの巫子様とアルベリーニ卿には話していたのに!私にだってもっと相談して欲しいぞ……シリル。」
しょんぼりした顔を見せたルーファス義父上は、シャーロットに頭をなでなでされていた。
「義父上……その……すみませんでした。今まで散々お世話になったのに、大事な事をお話するのがいつも遅くて……。」
「私達はちゃんとお前の味方だから、心配せずに、もっと色んな事を話してくれ。な?」
テオだけじゃない。
義父上も、こんな僕の事を支えて下さる。
それを当然の事と甘えてばかりではいけない。
きちんと話すべき事は話さないと、大事に想ってくれている相手に心配をさせるだけだ。
それに、気付かせてくれた。
「はい。一緒に来て下さって、ありがとうございます。本当は不安でいっぱいだったんです。だから、こうしてご一緒してもらえて、どんなに心強いか。」
「兄さま、大丈夫ですよ!僕も付いてます!」
「ロティーも!ロティーも!」
「うん。皆ありがとう。」
重苦しかった心は、いつしか軽くなり、広い筈の馬車の中を家族5人でキャッキャとはしゃいで狭かった。
喋っていたらあっという間に気持ちも解れて。
滞在中の公爵領から王都メルシアンのベレスフォード伯爵家のお屋敷へは、早々に到着出来た。
執事に案内された応接間にて待つ事、十数分。
「リック!ロティー!いらっしゃい!!」
溌剌とした声で部屋に飛び込んで来たのは、軽やかなドレスを着たアンドレア叔母様だった。
「アン叔母様!」
「叔母様!!」
「こーら!お姉ちゃんって呼びなさいって言ってるでしょー!」
叔母様と呼ばれるのは嫌なのか、お姉ちゃん呼びを強要し、口を尖らせながらも、幼い二人が可愛くて仕方ないのか、アンドレア叔母様は二人を順に抱き上げて喜んでいた。
「ちょっと、アン。もう身を固めたんだから、お姉ちゃん呼びは無いでしょ。」
「姉様!いいの!二人にはいつまでもお姉ちゃんって呼んでもらうんだから。」
義母上が呆れていたが、叔母様は構わずそっぽを向いた。
姉妹だから、とても気安い感じで楽しそうだ。
「アンドレア、式以来だね。元気そうで良かった。」
「あ、ルーファス様!…じゃなかった、クレイン公爵様、その節はどうもありがとうございましたっ」
「いやいや、こちらの方こそ。その件にも関係するんだけど、君に会いたがっていたから連れて来たんだ、ほら。」
そう言って、義父上の影に隠れてしまっていた僕は、促されて恐る恐る進み出た。
「……大変ご無沙汰しております。アンドレア叔母様……いえ、姉上…様?」
い、いいのかな。
叔母様呼びを嫌がっておられる様だから、姉上様と言い換えたが、僕も言っちゃって良かったんだろうか?
恐る恐る顔を覗き見ると。
視線が合った叔母様…姉上様?は。
「………シリル!まぁ!随分立派になって!!」
それこそシャーロットの様な純粋なキラキラした目で見つめて来られた。
「あーん、ごめんなさいねー。前にマリアンヌ様にお土産持って来てくれたりしてたのよね?私、ちょうど休みとか外勤とかで外れちゃってたから、会えなかったのよね~。」
絶対に僕の所為で空気を悪くするだろうな、と覚悟していた僕は、予想外の反応に目を丸めるしか出来ない。
……今の状況に追い込んでしまった元凶が僕って事、もしかして姉上様は知らないのか?
いや、いくらなんでもそんな事はある筈がない。
悪感情を向けられなくて良かったと、素直に喜ぶよりも、訳が分からなくて固まってしまっていたら。
後ろから。
「わぁ!シリル!少し見ない間にまた大きくなったなぁ!いやーこんなに美人になっていたとは!」
「本当に。あのアナトリア様にも引けを取らない麗しさだわー。」
やって来たのは、ベレスフォード伯爵家当主のダリル・ベレスフォード伯爵と奥方のヴァネッサ・ベレスフォード伯爵夫人。
そして。
「あぁ、すみません。遅れてしまって。……わぁ、義姉様の話は本当だったんだ……。あ、失礼致しました。アンドレアの夫のディオンです。」
そう言って、穏やかな笑みを向けて下さったのは、この度アンドレア叔母…姉上様と成婚し、ベレスフォード家の婿養子となったディオン様だった。
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