200 / 332
番外編その2 サフィル・アルベリーニの悔恨
1話
しおりを挟む
初めてその姿を目にした時、ただただ美しいと思った————…。
やんちゃで横暴な第5王子の従者にされてから、早3年の月日が流れて。
でも、本国に居た時と異なり、このエウリルス王国へ留学に来てから。
私の主人であるロレンツォ殿下は、殊の外穏やかな学院生活を送られていた。
まだ幼さの残っていた筈だった顔は、みるみる内に大人びてしまわれたが。
その中身は初めて引き合わされた頃のまま、ただのやんちゃな少年のままだった。
「はー、また入学式って…。だっるぅー。」
この学院で二度目となる入学式に、早速悪態を口にされている。
「専学科は式だけですから、いいじゃないですか。」
殿下のすぐ後ろから、私はそう囁いたが。
「式も要らねーだろ。どうせ十人程度しか居ねーのに。」
それも、先月まで共に学んでいた同級生だ。
全員ではなく、12人にまで減ったが。
エウリルス王立学院。
エウリルス王国の貴族令息・令嬢、大富豪の為の学府で。
2年の普通科を終えた後、大体の生徒は卒業し、そのまま嫡子の男子は爵位を継ぐ為にそれぞれの実家で実務を学び、次男以下は国や地方の役職の空きを待って職に就いたり。
女子は王宮で催されるデビュタントにて大人の女性として認められ、後にそれぞれ嫁いでいく事が殆どだ。
しかし、一部の成績優秀者やより専門分野を学びたい者の為には、普通科を修了した後、専学科への進学の道を与えられている。
我々は先月、無事普通科を終え、そのまま専学科へと進学したのだ。
勉強内容もより専門性を増していくが、通う学び舎は変わらない。
だから、今、先に学院長から迎えられている、今年度の普通科の新入生達と違って、我々専学科の生徒にとっては、在校生と気分はあまり変わらない。
2年前にはあんなに新鮮で緊張した、目の前で行われている光景も、今となってはただただ面白みのない儀式に過ぎない。
殿下にあんな事を言いながらも、自分もつまらないなと思いながら、ただ何となく今年の新入生がこの会場に順に入場して来るのを眺めていたが。
ふと一人の少年が入場して来るのを目にし、私は思わず目を見張って。
「……綺麗だ。」
思わず口に出していた。
「んあ~?あー、クレイン公子か。へー?お前、あんなのが好みなん?」
私の言葉を耳にした殿下が、何か面白いものでも見つけたのかと、私の肩を掴んで、後ろから覗き込む様に私の視線の先を追っては、そう仰って。
「公子……クレイン公爵家のご令息ですか。」
「あぁ。亡くなったクレイン公爵夫妻の忘れ形見だとよ。……へぇ、今まで全然表に出て来なかった超が付く程の箱入りが、ようやく俗世へお出ましってか。」
ハッ!と、殿下は面白く無さそうに鼻で嗤ったが。
そんな殿下の反応も気に留めないくらい、私は彼が気になって仕方なかった。
これからの学院生活に期待と緊張で胸を高鳴らせている新入生の中で、唯一、不安と心許なさで陰鬱な表情を隠さないで居たから。
何がそんなに心配なのだろう?
伏し目がちでいるあの高貴なご令息は、その身分以上に近寄りがたい、他の人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた…。
やんちゃで横暴な第5王子の従者にされてから、早3年の月日が流れて。
でも、本国に居た時と異なり、このエウリルス王国へ留学に来てから。
私の主人であるロレンツォ殿下は、殊の外穏やかな学院生活を送られていた。
まだ幼さの残っていた筈だった顔は、みるみる内に大人びてしまわれたが。
その中身は初めて引き合わされた頃のまま、ただのやんちゃな少年のままだった。
「はー、また入学式って…。だっるぅー。」
この学院で二度目となる入学式に、早速悪態を口にされている。
「専学科は式だけですから、いいじゃないですか。」
殿下のすぐ後ろから、私はそう囁いたが。
「式も要らねーだろ。どうせ十人程度しか居ねーのに。」
それも、先月まで共に学んでいた同級生だ。
全員ではなく、12人にまで減ったが。
エウリルス王立学院。
エウリルス王国の貴族令息・令嬢、大富豪の為の学府で。
2年の普通科を終えた後、大体の生徒は卒業し、そのまま嫡子の男子は爵位を継ぐ為にそれぞれの実家で実務を学び、次男以下は国や地方の役職の空きを待って職に就いたり。
女子は王宮で催されるデビュタントにて大人の女性として認められ、後にそれぞれ嫁いでいく事が殆どだ。
しかし、一部の成績優秀者やより専門分野を学びたい者の為には、普通科を修了した後、専学科への進学の道を与えられている。
我々は先月、無事普通科を終え、そのまま専学科へと進学したのだ。
勉強内容もより専門性を増していくが、通う学び舎は変わらない。
だから、今、先に学院長から迎えられている、今年度の普通科の新入生達と違って、我々専学科の生徒にとっては、在校生と気分はあまり変わらない。
2年前にはあんなに新鮮で緊張した、目の前で行われている光景も、今となってはただただ面白みのない儀式に過ぎない。
殿下にあんな事を言いながらも、自分もつまらないなと思いながら、ただ何となく今年の新入生がこの会場に順に入場して来るのを眺めていたが。
ふと一人の少年が入場して来るのを目にし、私は思わず目を見張って。
「……綺麗だ。」
思わず口に出していた。
「んあ~?あー、クレイン公子か。へー?お前、あんなのが好みなん?」
私の言葉を耳にした殿下が、何か面白いものでも見つけたのかと、私の肩を掴んで、後ろから覗き込む様に私の視線の先を追っては、そう仰って。
「公子……クレイン公爵家のご令息ですか。」
「あぁ。亡くなったクレイン公爵夫妻の忘れ形見だとよ。……へぇ、今まで全然表に出て来なかった超が付く程の箱入りが、ようやく俗世へお出ましってか。」
ハッ!と、殿下は面白く無さそうに鼻で嗤ったが。
そんな殿下の反応も気に留めないくらい、私は彼が気になって仕方なかった。
これからの学院生活に期待と緊張で胸を高鳴らせている新入生の中で、唯一、不安と心許なさで陰鬱な表情を隠さないで居たから。
何がそんなに心配なのだろう?
伏し目がちでいるあの高貴なご令息は、その身分以上に近寄りがたい、他の人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた…。
44
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
僕の大好きな旦那様は後悔する
小町
BL
バッドエンドです!
攻めのことが大好きな受けと政略結婚だから、と割り切り受けの愛を迷惑と感じる攻めのもだもだと、最終的に受けが死ぬことによって段々と攻めが後悔してくるお話です!拙作ですがよろしくお願いします!!
暗い話にするはずが、コメディぽくなってしまいました、、、。
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる