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第5章
195話 新たな日々
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エウリルス学院を卒業し、叔父様に公爵代理から正式にクレイン公爵を継いで頂き。
諸々の事が一通り済んでから。
僕はすぐにアデリートへの荷支度を始めた。
まぁ、持っていく物はそんなに無いし、大した労力はかからなかったけれど。
「テオにはいっぱい手間をかけさせちゃったのに、その上アデリートにまで一緒に行かせる事になっちゃって、申し訳ない限りだよ…。」
荷造りを手伝ってもらいながら、僕は心配になって、再度テオにそう言ったら。
「酷いです、シリル様。今更、俺を置いてったりしないで下さいよ!それに、カレンさんとカイトさんにも貴方をしっかりお守りする様に頼まれてるんですからね。」
だから、今更首になんてなさったら、一生恨みますよ。
そう、脅す様に言われて。
「わ、わかったよ。……ありがとう、テオ。お前が一緒だと、心強いよ。」
控えめに笑って見せた僕に、テオは満足そうに笑い返してくれた。
テオにはもっと良い転職先、見つけてあげるつもりだったんだけどな。
このまま僕の従者でいいのかな。
そう、心配になる事もあるけれど。
テオが満足してくれているなら……いいのかな。
是非、これからも支えて欲しい。
「これからも、よろしくね。」
「俺の方こそ。」
「……アデリートに行っても、僕に隠れて殿下やサフィルに手を上げたり、酷い態度とったりしないでね。」
「…………ま、事と次第によりますね。」
「ちょ、テオ?!」
「冗談ですって。」
……本当だろうか。
テオは、カレンとカイトから言われた事もあり、僕の護衛に更に意気込んでいたが。
僕の方こそ、主人を想ってくれるあまり暴走しかねないこの従者を、しっかり管理監督しなければならないぞ。
大変だぁ……。
………そんなささやかな悩みも吹っ飛ぶくらい。
僕は、今、このアデリートの地で、日々忙しく勉学に励んでいます。
エウリルス学院に居た時とは比べ物にならないくらい、やる事がたくさんで、目の回りそうな日々だけど。
でも。
「…シリル。」
「……ん。あ、おはよう、サフィル。」
朝、目を覚ますと、大好きな人の顔があって。
互いに触れ合い、笑い合える……この日々は。
なにものにも代えがたい、幸せで。
「~~~サフィル!今日は急ぎだから早く来いって言ってただろぉ?!」
……時々、素っ裸のままなのに、ロレンツォ殿下に朝から大声の奇襲を受ける事も、あるが。
「シリル!悪いな、ちょっとコイツ借りてくぞ。」
「……あ、はい。」
まだベッド上でやる気なくのそのそとしているサフィルの首根っこを掴みながら、殿下は僕に断りを入れて来て。
「学園の方、頑張れよ!何かあったら、コイツかテオドールにちゃんと言うんだぞ。もちろん俺に言ってくれてもいいからな。」
「ありがとうございます。殿下、サフィル、お気をつけて!」
急いで部屋から出て行く殿下とサフィルの背中に、僕がそう言うと。
殿下はニカッと子供っぽい笑みを、サフィルは嬉しそうな微笑みを、向けてくれて。
でも、すぐに走って行ってしまった。
「あ、僕も早めに行って予習しなきゃ。」
折角、早く目を覚ましたし。
ちょっと、腰に昨夜の余韻が残っていないでもないが。
さっさと身支度を済ませて、学園へ向かう。
テオも従者として、今は常に付き添ってくれるから、安心だ。
なんとかこの1年を頑張って、来年からは側近のお仕事、サフィルと一緒に出来ればいいな。
まぁ、剣術はからきしの僕は、荒事には全く役に立てないが、その分、内勤で支えられる様に頑張りたい。
こんな目標が出来るだけで、気持ちが明るく前向きになれる。
「さ、今日も一日頑張るぞー!」
テオと一緒に馬車を降り、僕は両腕を上げて伸びをしてから意気込んで。
新たな学園での生活を送っていくのだった————。
~おしまい~
諸々の事が一通り済んでから。
僕はすぐにアデリートへの荷支度を始めた。
まぁ、持っていく物はそんなに無いし、大した労力はかからなかったけれど。
「テオにはいっぱい手間をかけさせちゃったのに、その上アデリートにまで一緒に行かせる事になっちゃって、申し訳ない限りだよ…。」
荷造りを手伝ってもらいながら、僕は心配になって、再度テオにそう言ったら。
「酷いです、シリル様。今更、俺を置いてったりしないで下さいよ!それに、カレンさんとカイトさんにも貴方をしっかりお守りする様に頼まれてるんですからね。」
だから、今更首になんてなさったら、一生恨みますよ。
そう、脅す様に言われて。
「わ、わかったよ。……ありがとう、テオ。お前が一緒だと、心強いよ。」
控えめに笑って見せた僕に、テオは満足そうに笑い返してくれた。
テオにはもっと良い転職先、見つけてあげるつもりだったんだけどな。
このまま僕の従者でいいのかな。
そう、心配になる事もあるけれど。
テオが満足してくれているなら……いいのかな。
是非、これからも支えて欲しい。
「これからも、よろしくね。」
「俺の方こそ。」
「……アデリートに行っても、僕に隠れて殿下やサフィルに手を上げたり、酷い態度とったりしないでね。」
「…………ま、事と次第によりますね。」
「ちょ、テオ?!」
「冗談ですって。」
……本当だろうか。
テオは、カレンとカイトから言われた事もあり、僕の護衛に更に意気込んでいたが。
僕の方こそ、主人を想ってくれるあまり暴走しかねないこの従者を、しっかり管理監督しなければならないぞ。
大変だぁ……。
………そんなささやかな悩みも吹っ飛ぶくらい。
僕は、今、このアデリートの地で、日々忙しく勉学に励んでいます。
エウリルス学院に居た時とは比べ物にならないくらい、やる事がたくさんで、目の回りそうな日々だけど。
でも。
「…シリル。」
「……ん。あ、おはよう、サフィル。」
朝、目を覚ますと、大好きな人の顔があって。
互いに触れ合い、笑い合える……この日々は。
なにものにも代えがたい、幸せで。
「~~~サフィル!今日は急ぎだから早く来いって言ってただろぉ?!」
……時々、素っ裸のままなのに、ロレンツォ殿下に朝から大声の奇襲を受ける事も、あるが。
「シリル!悪いな、ちょっとコイツ借りてくぞ。」
「……あ、はい。」
まだベッド上でやる気なくのそのそとしているサフィルの首根っこを掴みながら、殿下は僕に断りを入れて来て。
「学園の方、頑張れよ!何かあったら、コイツかテオドールにちゃんと言うんだぞ。もちろん俺に言ってくれてもいいからな。」
「ありがとうございます。殿下、サフィル、お気をつけて!」
急いで部屋から出て行く殿下とサフィルの背中に、僕がそう言うと。
殿下はニカッと子供っぽい笑みを、サフィルは嬉しそうな微笑みを、向けてくれて。
でも、すぐに走って行ってしまった。
「あ、僕も早めに行って予習しなきゃ。」
折角、早く目を覚ましたし。
ちょっと、腰に昨夜の余韻が残っていないでもないが。
さっさと身支度を済ませて、学園へ向かう。
テオも従者として、今は常に付き添ってくれるから、安心だ。
なんとかこの1年を頑張って、来年からは側近のお仕事、サフィルと一緒に出来ればいいな。
まぁ、剣術はからきしの僕は、荒事には全く役に立てないが、その分、内勤で支えられる様に頑張りたい。
こんな目標が出来るだけで、気持ちが明るく前向きになれる。
「さ、今日も一日頑張るぞー!」
テオと一緒に馬車を降り、僕は両腕を上げて伸びをしてから意気込んで。
新たな学園での生活を送っていくのだった————。
~おしまい~
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