180 / 369
第5章
180話 卒業おめでとう
しおりを挟む
「卒業おめでとう!!」
カレンがそう言って掲げたグラスに、カイトも同じく掲げて、グラス同士を傾けて、チンッと軽く音を鳴らして乾杯する。
「ほら、シリルも!」
そう言って、カイトとカレンも僕の持つスパークリングワインのグラスに、それぞれ乾杯!と自身のグラスを傾けて音を鳴らして。
そして、共にグイッと飲み干した。
今日はようやく迎えた卒業パーティーだ。
三度目のパーティーとなったが、それまでとは違う、実に晴れやかな気持ちで迎える事が出来たパーティーで。
感慨深い想いで、空になったグラスを見つめると。
「本当におめでとう、シリル。」
「ありがとう、カレン。」
「うん。令嬢姿も滅茶苦茶良かったけど、今日の格好…とっても素敵よ。」
「……いや、アレは黒歴史だろ。」
「そんな事ない!でも、公子様の礼服姿、やっぱりカッコいいな~。」
ふふふ。と微笑むカレンに、僕は苦笑した。
僕は、今回は明るい水色を基調とした礼服にして。
カイトはこの前の海賊姿がお気に召したのか、深い海の様な濃いめの蒼色の礼服を選び。
言っているカレンは、薄い紫色のドレスを身に纏っている。
キチンとした礼服を身に纏ったパーティーなので、この間の仮装パーティーの様な気軽なノリにはなれないが、それでもご機嫌でテンションが上がっていた。
「ハッピーエンド達成って事でいいかな?!」
目をキラキラさせて言って来るカイトに、僕は心からの笑顔で答えた。
「あぁ、お前達のお陰だ。本当にありがとう。」
「私達はちょっと協力しただけよ。頑張ったのはシリルなんだから。」
「そうそう。俺らとしてはハッピーエンドだけど、シリルはこれからだもんね。……アデリート王国へ行っても、一人で無理しようとはせず、アルベリーニ卿達と一緒に協力して頑張って。もちろん、テオさんとも。」
ね!とカイトから念押しされる。
僕はしっかりと頷いた。
そうこうしている内にユリウス王太子殿下が、婚約者のクリスティーナ嬢をエスコートして会場に入って来た。
相も変わらず美しいお二人に、会場の皆の視線が釘付けになる。
僕も、もう今度は心からお二人を祝福出来た。
「……ありがとうございました、ユリウス殿下。」
そう、小さく言葉を零して。
殿下達が入場してしばらくして、まったりとした空気に戻った頃。
僕は視界の端に彼らを見つけた。
「サフィル、ロレンツォ殿下。」
「あ、シリル。」
「よぅ!シリル、卒業おめでとう!」
傍へ寄って声を掛けると、サフィルは嬉しそうに明るい顔になり、ロレンツォ殿下は豪快に笑って祝意を述べてくれたが。
「殿下もご卒業おめでとうございます。……でも、僕はまたすぐ向こうで学園生活になるんですよね……」
カイトやカレンにお祝いの言葉を述べられるのは素直に喜べるが、殿下に言われると……ちょっと複雑な心境だ。
「そっか。シリル、ロレンツォ殿下の側近になる勉強の為に、アデリートの学園に編入するんだよね。」
「うん。臨時に編入試験受けさせてもらえたから、1年だけで済んだけど。」
「あの後すぐでパス出来るなんて。流石シリル!私も戻ったらまた勉強の日々かぁ~。来年になったら大学受験チラついて来るしなぁ…。」
「俺は資格と検定試験がんばるよ!」
僕は新しい学園生活に期待より不安の方が大きかったが、カレンとカイトも元の世界での学校生活の再開を前に、それぞれ想いに耽っていた。
そうだな、二人も頑張る様だし、僕も心機一転頑張らないと。
「ロレンツォ殿下、何度も言いますが、くれっぐれもシリルの事、よろしくお願いしますね。約束破ったら、どんな手使っても戻って来てやり返してみせますからね!」
「ほう、それなら破った方がいいのかな?」
「駄目です!!テオさんにも、くれぐれも気を付けてもらう様に言っときましたからっ!」
「ハハハッ!冗談だ。クレイン公子には期待している。心配なさらなくても大丈夫だ。」
「本当かな~??」
嘘じゃないでしょうね?と殿下をねめつけるカレンに、カイトも同じ目をしていた。
「サフィルも、専学科卒業、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、シリル。…アデリートでの事は心配なさらないで。私も微力ながら協力しますから。」
「そう言ってもらえると、安心です。」
控えめに笑顔を向けた僕に、サフィルも微笑んだ。
そうして和やかに話していると。
「あれ?巫女殿の体が……透けてる。」
「……あ、本当だ。」
ロレンツォ殿下の驚いた声に、僕とサフィルが振り返ると。
殿下の言う通り、カレンの体が手の先から少しずつ透けて来ていて。
隣を見ると、カイトも同じく姿が透けて来ていた。
「そろそろお別れみたいだね。」
カレンがそう言って掲げたグラスに、カイトも同じく掲げて、グラス同士を傾けて、チンッと軽く音を鳴らして乾杯する。
「ほら、シリルも!」
そう言って、カイトとカレンも僕の持つスパークリングワインのグラスに、それぞれ乾杯!と自身のグラスを傾けて音を鳴らして。
そして、共にグイッと飲み干した。
今日はようやく迎えた卒業パーティーだ。
三度目のパーティーとなったが、それまでとは違う、実に晴れやかな気持ちで迎える事が出来たパーティーで。
感慨深い想いで、空になったグラスを見つめると。
「本当におめでとう、シリル。」
「ありがとう、カレン。」
「うん。令嬢姿も滅茶苦茶良かったけど、今日の格好…とっても素敵よ。」
「……いや、アレは黒歴史だろ。」
「そんな事ない!でも、公子様の礼服姿、やっぱりカッコいいな~。」
ふふふ。と微笑むカレンに、僕は苦笑した。
僕は、今回は明るい水色を基調とした礼服にして。
カイトはこの前の海賊姿がお気に召したのか、深い海の様な濃いめの蒼色の礼服を選び。
言っているカレンは、薄い紫色のドレスを身に纏っている。
キチンとした礼服を身に纏ったパーティーなので、この間の仮装パーティーの様な気軽なノリにはなれないが、それでもご機嫌でテンションが上がっていた。
「ハッピーエンド達成って事でいいかな?!」
目をキラキラさせて言って来るカイトに、僕は心からの笑顔で答えた。
「あぁ、お前達のお陰だ。本当にありがとう。」
「私達はちょっと協力しただけよ。頑張ったのはシリルなんだから。」
「そうそう。俺らとしてはハッピーエンドだけど、シリルはこれからだもんね。……アデリート王国へ行っても、一人で無理しようとはせず、アルベリーニ卿達と一緒に協力して頑張って。もちろん、テオさんとも。」
ね!とカイトから念押しされる。
僕はしっかりと頷いた。
そうこうしている内にユリウス王太子殿下が、婚約者のクリスティーナ嬢をエスコートして会場に入って来た。
相も変わらず美しいお二人に、会場の皆の視線が釘付けになる。
僕も、もう今度は心からお二人を祝福出来た。
「……ありがとうございました、ユリウス殿下。」
そう、小さく言葉を零して。
殿下達が入場してしばらくして、まったりとした空気に戻った頃。
僕は視界の端に彼らを見つけた。
「サフィル、ロレンツォ殿下。」
「あ、シリル。」
「よぅ!シリル、卒業おめでとう!」
傍へ寄って声を掛けると、サフィルは嬉しそうに明るい顔になり、ロレンツォ殿下は豪快に笑って祝意を述べてくれたが。
「殿下もご卒業おめでとうございます。……でも、僕はまたすぐ向こうで学園生活になるんですよね……」
カイトやカレンにお祝いの言葉を述べられるのは素直に喜べるが、殿下に言われると……ちょっと複雑な心境だ。
「そっか。シリル、ロレンツォ殿下の側近になる勉強の為に、アデリートの学園に編入するんだよね。」
「うん。臨時に編入試験受けさせてもらえたから、1年だけで済んだけど。」
「あの後すぐでパス出来るなんて。流石シリル!私も戻ったらまた勉強の日々かぁ~。来年になったら大学受験チラついて来るしなぁ…。」
「俺は資格と検定試験がんばるよ!」
僕は新しい学園生活に期待より不安の方が大きかったが、カレンとカイトも元の世界での学校生活の再開を前に、それぞれ想いに耽っていた。
そうだな、二人も頑張る様だし、僕も心機一転頑張らないと。
「ロレンツォ殿下、何度も言いますが、くれっぐれもシリルの事、よろしくお願いしますね。約束破ったら、どんな手使っても戻って来てやり返してみせますからね!」
「ほう、それなら破った方がいいのかな?」
「駄目です!!テオさんにも、くれぐれも気を付けてもらう様に言っときましたからっ!」
「ハハハッ!冗談だ。クレイン公子には期待している。心配なさらなくても大丈夫だ。」
「本当かな~??」
嘘じゃないでしょうね?と殿下をねめつけるカレンに、カイトも同じ目をしていた。
「サフィルも、専学科卒業、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、シリル。…アデリートでの事は心配なさらないで。私も微力ながら協力しますから。」
「そう言ってもらえると、安心です。」
控えめに笑顔を向けた僕に、サフィルも微笑んだ。
そうして和やかに話していると。
「あれ?巫女殿の体が……透けてる。」
「……あ、本当だ。」
ロレンツォ殿下の驚いた声に、僕とサフィルが振り返ると。
殿下の言う通り、カレンの体が手の先から少しずつ透けて来ていて。
隣を見ると、カイトも同じく姿が透けて来ていた。
「そろそろお別れみたいだね。」
59
お気に入りに追加
1,620
あなたにおすすめの小説


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。


王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる