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第5章
180話 卒業おめでとう
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「卒業おめでとう!!」
カレンがそう言って掲げたグラスに、カイトも同じく掲げて、グラス同士を傾けて、チンッと軽く音を鳴らして乾杯する。
「ほら、シリルも!」
そう言って、カイトとカレンも僕の持つスパークリングワインのグラスに、それぞれ乾杯!と自身のグラスを傾けて音を鳴らして。
そして、共にグイッと飲み干した。
今日はようやく迎えた卒業パーティーだ。
三度目のパーティーとなったが、それまでとは違う、実に晴れやかな気持ちで迎える事が出来たパーティーで。
感慨深い想いで、空になったグラスを見つめると。
「本当におめでとう、シリル。」
「ありがとう、カレン。」
「うん。令嬢姿も滅茶苦茶良かったけど、今日の格好…とっても素敵よ。」
「……いや、アレは黒歴史だろ。」
「そんな事ない!でも、公子様の礼服姿、やっぱりカッコいいな~。」
ふふふ。と微笑むカレンに、僕は苦笑した。
僕は、今回は明るい水色を基調とした礼服にして。
カイトはこの前の海賊姿がお気に召したのか、深い海の様な濃いめの蒼色の礼服を選び。
言っているカレンは、薄い紫色のドレスを身に纏っている。
キチンとした礼服を身に纏ったパーティーなので、この間の仮装パーティーの様な気軽なノリにはなれないが、それでもご機嫌でテンションが上がっていた。
「ハッピーエンド達成って事でいいかな?!」
目をキラキラさせて言って来るカイトに、僕は心からの笑顔で答えた。
「あぁ、お前達のお陰だ。本当にありがとう。」
「私達はちょっと協力しただけよ。頑張ったのはシリルなんだから。」
「そうそう。俺らとしてはハッピーエンドだけど、シリルはこれからだもんね。……アデリート王国へ行っても、一人で無理しようとはせず、アルベリーニ卿達と一緒に協力して頑張って。もちろん、テオさんとも。」
ね!とカイトから念押しされる。
僕はしっかりと頷いた。
そうこうしている内にユリウス王太子殿下が、婚約者のクリスティーナ嬢をエスコートして会場に入って来た。
相も変わらず美しいお二人に、会場の皆の視線が釘付けになる。
僕も、もう今度は心からお二人を祝福出来た。
「……ありがとうございました、ユリウス殿下。」
そう、小さく言葉を零して。
殿下達が入場してしばらくして、まったりとした空気に戻った頃。
僕は視界の端に彼らを見つけた。
「サフィル、ロレンツォ殿下。」
「あ、シリル。」
「よぅ!シリル、卒業おめでとう!」
傍へ寄って声を掛けると、サフィルは嬉しそうに明るい顔になり、ロレンツォ殿下は豪快に笑って祝意を述べてくれたが。
「殿下もご卒業おめでとうございます。……でも、僕はまたすぐ向こうで学園生活になるんですよね……」
カイトやカレンにお祝いの言葉を述べられるのは素直に喜べるが、殿下に言われると……ちょっと複雑な心境だ。
「そっか。シリル、ロレンツォ殿下の側近になる勉強の為に、アデリートの学園に編入するんだよね。」
「うん。臨時に編入試験受けさせてもらえたから、1年だけで済んだけど。」
「あの後すぐでパス出来るなんて。流石シリル!私も戻ったらまた勉強の日々かぁ~。来年になったら大学受験チラついて来るしなぁ…。」
「俺は資格と検定試験がんばるよ!」
僕は新しい学園生活に期待より不安の方が大きかったが、カレンとカイトも元の世界での学校生活の再開を前に、それぞれ想いに耽っていた。
そうだな、二人も頑張る様だし、僕も心機一転頑張らないと。
「ロレンツォ殿下、何度も言いますが、くれっぐれもシリルの事、よろしくお願いしますね。約束破ったら、どんな手使っても戻って来てやり返してみせますからね!」
「ほう、それなら破った方がいいのかな?」
「駄目です!!テオさんにも、くれぐれも気を付けてもらう様に言っときましたからっ!」
「ハハハッ!冗談だ。クレイン公子には期待している。心配なさらなくても大丈夫だ。」
「本当かな~??」
嘘じゃないでしょうね?と殿下をねめつけるカレンに、カイトも同じ目をしていた。
「サフィルも、専学科卒業、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、シリル。…アデリートでの事は心配なさらないで。私も微力ながら協力しますから。」
「そう言ってもらえると、安心です。」
控えめに笑顔を向けた僕に、サフィルも微笑んだ。
そうして和やかに話していると。
「あれ?巫女殿の体が……透けてる。」
「……あ、本当だ。」
ロレンツォ殿下の驚いた声に、僕とサフィルが振り返ると。
殿下の言う通り、カレンの体が手の先から少しずつ透けて来ていて。
隣を見ると、カイトも同じく姿が透けて来ていた。
「そろそろお別れみたいだね。」
カレンがそう言って掲げたグラスに、カイトも同じく掲げて、グラス同士を傾けて、チンッと軽く音を鳴らして乾杯する。
「ほら、シリルも!」
そう言って、カイトとカレンも僕の持つスパークリングワインのグラスに、それぞれ乾杯!と自身のグラスを傾けて音を鳴らして。
そして、共にグイッと飲み干した。
今日はようやく迎えた卒業パーティーだ。
三度目のパーティーとなったが、それまでとは違う、実に晴れやかな気持ちで迎える事が出来たパーティーで。
感慨深い想いで、空になったグラスを見つめると。
「本当におめでとう、シリル。」
「ありがとう、カレン。」
「うん。令嬢姿も滅茶苦茶良かったけど、今日の格好…とっても素敵よ。」
「……いや、アレは黒歴史だろ。」
「そんな事ない!でも、公子様の礼服姿、やっぱりカッコいいな~。」
ふふふ。と微笑むカレンに、僕は苦笑した。
僕は、今回は明るい水色を基調とした礼服にして。
カイトはこの前の海賊姿がお気に召したのか、深い海の様な濃いめの蒼色の礼服を選び。
言っているカレンは、薄い紫色のドレスを身に纏っている。
キチンとした礼服を身に纏ったパーティーなので、この間の仮装パーティーの様な気軽なノリにはなれないが、それでもご機嫌でテンションが上がっていた。
「ハッピーエンド達成って事でいいかな?!」
目をキラキラさせて言って来るカイトに、僕は心からの笑顔で答えた。
「あぁ、お前達のお陰だ。本当にありがとう。」
「私達はちょっと協力しただけよ。頑張ったのはシリルなんだから。」
「そうそう。俺らとしてはハッピーエンドだけど、シリルはこれからだもんね。……アデリート王国へ行っても、一人で無理しようとはせず、アルベリーニ卿達と一緒に協力して頑張って。もちろん、テオさんとも。」
ね!とカイトから念押しされる。
僕はしっかりと頷いた。
そうこうしている内にユリウス王太子殿下が、婚約者のクリスティーナ嬢をエスコートして会場に入って来た。
相も変わらず美しいお二人に、会場の皆の視線が釘付けになる。
僕も、もう今度は心からお二人を祝福出来た。
「……ありがとうございました、ユリウス殿下。」
そう、小さく言葉を零して。
殿下達が入場してしばらくして、まったりとした空気に戻った頃。
僕は視界の端に彼らを見つけた。
「サフィル、ロレンツォ殿下。」
「あ、シリル。」
「よぅ!シリル、卒業おめでとう!」
傍へ寄って声を掛けると、サフィルは嬉しそうに明るい顔になり、ロレンツォ殿下は豪快に笑って祝意を述べてくれたが。
「殿下もご卒業おめでとうございます。……でも、僕はまたすぐ向こうで学園生活になるんですよね……」
カイトやカレンにお祝いの言葉を述べられるのは素直に喜べるが、殿下に言われると……ちょっと複雑な心境だ。
「そっか。シリル、ロレンツォ殿下の側近になる勉強の為に、アデリートの学園に編入するんだよね。」
「うん。臨時に編入試験受けさせてもらえたから、1年だけで済んだけど。」
「あの後すぐでパス出来るなんて。流石シリル!私も戻ったらまた勉強の日々かぁ~。来年になったら大学受験チラついて来るしなぁ…。」
「俺は資格と検定試験がんばるよ!」
僕は新しい学園生活に期待より不安の方が大きかったが、カレンとカイトも元の世界での学校生活の再開を前に、それぞれ想いに耽っていた。
そうだな、二人も頑張る様だし、僕も心機一転頑張らないと。
「ロレンツォ殿下、何度も言いますが、くれっぐれもシリルの事、よろしくお願いしますね。約束破ったら、どんな手使っても戻って来てやり返してみせますからね!」
「ほう、それなら破った方がいいのかな?」
「駄目です!!テオさんにも、くれぐれも気を付けてもらう様に言っときましたからっ!」
「ハハハッ!冗談だ。クレイン公子には期待している。心配なさらなくても大丈夫だ。」
「本当かな~??」
嘘じゃないでしょうね?と殿下をねめつけるカレンに、カイトも同じ目をしていた。
「サフィルも、専学科卒業、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、シリル。…アデリートでの事は心配なさらないで。私も微力ながら協力しますから。」
「そう言ってもらえると、安心です。」
控えめに笑顔を向けた僕に、サフィルも微笑んだ。
そうして和やかに話していると。
「あれ?巫女殿の体が……透けてる。」
「……あ、本当だ。」
ロレンツォ殿下の驚いた声に、僕とサフィルが振り返ると。
殿下の言う通り、カレンの体が手の先から少しずつ透けて来ていて。
隣を見ると、カイトも同じく姿が透けて来ていた。
「そろそろお別れみたいだね。」
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