180 / 368
第5章
180話 卒業おめでとう
しおりを挟む
「卒業おめでとう!!」
カレンがそう言って掲げたグラスに、カイトも同じく掲げて、グラス同士を傾けて、チンッと軽く音を鳴らして乾杯する。
「ほら、シリルも!」
そう言って、カイトとカレンも僕の持つスパークリングワインのグラスに、それぞれ乾杯!と自身のグラスを傾けて音を鳴らして。
そして、共にグイッと飲み干した。
今日はようやく迎えた卒業パーティーだ。
三度目のパーティーとなったが、それまでとは違う、実に晴れやかな気持ちで迎える事が出来たパーティーで。
感慨深い想いで、空になったグラスを見つめると。
「本当におめでとう、シリル。」
「ありがとう、カレン。」
「うん。令嬢姿も滅茶苦茶良かったけど、今日の格好…とっても素敵よ。」
「……いや、アレは黒歴史だろ。」
「そんな事ない!でも、公子様の礼服姿、やっぱりカッコいいな~。」
ふふふ。と微笑むカレンに、僕は苦笑した。
僕は、今回は明るい水色を基調とした礼服にして。
カイトはこの前の海賊姿がお気に召したのか、深い海の様な濃いめの蒼色の礼服を選び。
言っているカレンは、薄い紫色のドレスを身に纏っている。
キチンとした礼服を身に纏ったパーティーなので、この間の仮装パーティーの様な気軽なノリにはなれないが、それでもご機嫌でテンションが上がっていた。
「ハッピーエンド達成って事でいいかな?!」
目をキラキラさせて言って来るカイトに、僕は心からの笑顔で答えた。
「あぁ、お前達のお陰だ。本当にありがとう。」
「私達はちょっと協力しただけよ。頑張ったのはシリルなんだから。」
「そうそう。俺らとしてはハッピーエンドだけど、シリルはこれからだもんね。……アデリート王国へ行っても、一人で無理しようとはせず、アルベリーニ卿達と一緒に協力して頑張って。もちろん、テオさんとも。」
ね!とカイトから念押しされる。
僕はしっかりと頷いた。
そうこうしている内にユリウス王太子殿下が、婚約者のクリスティーナ嬢をエスコートして会場に入って来た。
相も変わらず美しいお二人に、会場の皆の視線が釘付けになる。
僕も、もう今度は心からお二人を祝福出来た。
「……ありがとうございました、ユリウス殿下。」
そう、小さく言葉を零して。
殿下達が入場してしばらくして、まったりとした空気に戻った頃。
僕は視界の端に彼らを見つけた。
「サフィル、ロレンツォ殿下。」
「あ、シリル。」
「よぅ!シリル、卒業おめでとう!」
傍へ寄って声を掛けると、サフィルは嬉しそうに明るい顔になり、ロレンツォ殿下は豪快に笑って祝意を述べてくれたが。
「殿下もご卒業おめでとうございます。……でも、僕はまたすぐ向こうで学園生活になるんですよね……」
カイトやカレンにお祝いの言葉を述べられるのは素直に喜べるが、殿下に言われると……ちょっと複雑な心境だ。
「そっか。シリル、ロレンツォ殿下の側近になる勉強の為に、アデリートの学園に編入するんだよね。」
「うん。臨時に編入試験受けさせてもらえたから、1年だけで済んだけど。」
「あの後すぐでパス出来るなんて。流石シリル!私も戻ったらまた勉強の日々かぁ~。来年になったら大学受験チラついて来るしなぁ…。」
「俺は資格と検定試験がんばるよ!」
僕は新しい学園生活に期待より不安の方が大きかったが、カレンとカイトも元の世界での学校生活の再開を前に、それぞれ想いに耽っていた。
そうだな、二人も頑張る様だし、僕も心機一転頑張らないと。
「ロレンツォ殿下、何度も言いますが、くれっぐれもシリルの事、よろしくお願いしますね。約束破ったら、どんな手使っても戻って来てやり返してみせますからね!」
「ほう、それなら破った方がいいのかな?」
「駄目です!!テオさんにも、くれぐれも気を付けてもらう様に言っときましたからっ!」
「ハハハッ!冗談だ。クレイン公子には期待している。心配なさらなくても大丈夫だ。」
「本当かな~??」
嘘じゃないでしょうね?と殿下をねめつけるカレンに、カイトも同じ目をしていた。
「サフィルも、専学科卒業、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、シリル。…アデリートでの事は心配なさらないで。私も微力ながら協力しますから。」
「そう言ってもらえると、安心です。」
控えめに笑顔を向けた僕に、サフィルも微笑んだ。
そうして和やかに話していると。
「あれ?巫女殿の体が……透けてる。」
「……あ、本当だ。」
ロレンツォ殿下の驚いた声に、僕とサフィルが振り返ると。
殿下の言う通り、カレンの体が手の先から少しずつ透けて来ていて。
隣を見ると、カイトも同じく姿が透けて来ていた。
「そろそろお別れみたいだね。」
カレンがそう言って掲げたグラスに、カイトも同じく掲げて、グラス同士を傾けて、チンッと軽く音を鳴らして乾杯する。
「ほら、シリルも!」
そう言って、カイトとカレンも僕の持つスパークリングワインのグラスに、それぞれ乾杯!と自身のグラスを傾けて音を鳴らして。
そして、共にグイッと飲み干した。
今日はようやく迎えた卒業パーティーだ。
三度目のパーティーとなったが、それまでとは違う、実に晴れやかな気持ちで迎える事が出来たパーティーで。
感慨深い想いで、空になったグラスを見つめると。
「本当におめでとう、シリル。」
「ありがとう、カレン。」
「うん。令嬢姿も滅茶苦茶良かったけど、今日の格好…とっても素敵よ。」
「……いや、アレは黒歴史だろ。」
「そんな事ない!でも、公子様の礼服姿、やっぱりカッコいいな~。」
ふふふ。と微笑むカレンに、僕は苦笑した。
僕は、今回は明るい水色を基調とした礼服にして。
カイトはこの前の海賊姿がお気に召したのか、深い海の様な濃いめの蒼色の礼服を選び。
言っているカレンは、薄い紫色のドレスを身に纏っている。
キチンとした礼服を身に纏ったパーティーなので、この間の仮装パーティーの様な気軽なノリにはなれないが、それでもご機嫌でテンションが上がっていた。
「ハッピーエンド達成って事でいいかな?!」
目をキラキラさせて言って来るカイトに、僕は心からの笑顔で答えた。
「あぁ、お前達のお陰だ。本当にありがとう。」
「私達はちょっと協力しただけよ。頑張ったのはシリルなんだから。」
「そうそう。俺らとしてはハッピーエンドだけど、シリルはこれからだもんね。……アデリート王国へ行っても、一人で無理しようとはせず、アルベリーニ卿達と一緒に協力して頑張って。もちろん、テオさんとも。」
ね!とカイトから念押しされる。
僕はしっかりと頷いた。
そうこうしている内にユリウス王太子殿下が、婚約者のクリスティーナ嬢をエスコートして会場に入って来た。
相も変わらず美しいお二人に、会場の皆の視線が釘付けになる。
僕も、もう今度は心からお二人を祝福出来た。
「……ありがとうございました、ユリウス殿下。」
そう、小さく言葉を零して。
殿下達が入場してしばらくして、まったりとした空気に戻った頃。
僕は視界の端に彼らを見つけた。
「サフィル、ロレンツォ殿下。」
「あ、シリル。」
「よぅ!シリル、卒業おめでとう!」
傍へ寄って声を掛けると、サフィルは嬉しそうに明るい顔になり、ロレンツォ殿下は豪快に笑って祝意を述べてくれたが。
「殿下もご卒業おめでとうございます。……でも、僕はまたすぐ向こうで学園生活になるんですよね……」
カイトやカレンにお祝いの言葉を述べられるのは素直に喜べるが、殿下に言われると……ちょっと複雑な心境だ。
「そっか。シリル、ロレンツォ殿下の側近になる勉強の為に、アデリートの学園に編入するんだよね。」
「うん。臨時に編入試験受けさせてもらえたから、1年だけで済んだけど。」
「あの後すぐでパス出来るなんて。流石シリル!私も戻ったらまた勉強の日々かぁ~。来年になったら大学受験チラついて来るしなぁ…。」
「俺は資格と検定試験がんばるよ!」
僕は新しい学園生活に期待より不安の方が大きかったが、カレンとカイトも元の世界での学校生活の再開を前に、それぞれ想いに耽っていた。
そうだな、二人も頑張る様だし、僕も心機一転頑張らないと。
「ロレンツォ殿下、何度も言いますが、くれっぐれもシリルの事、よろしくお願いしますね。約束破ったら、どんな手使っても戻って来てやり返してみせますからね!」
「ほう、それなら破った方がいいのかな?」
「駄目です!!テオさんにも、くれぐれも気を付けてもらう様に言っときましたからっ!」
「ハハハッ!冗談だ。クレイン公子には期待している。心配なさらなくても大丈夫だ。」
「本当かな~??」
嘘じゃないでしょうね?と殿下をねめつけるカレンに、カイトも同じ目をしていた。
「サフィルも、専学科卒業、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、シリル。…アデリートでの事は心配なさらないで。私も微力ながら協力しますから。」
「そう言ってもらえると、安心です。」
控えめに笑顔を向けた僕に、サフィルも微笑んだ。
そうして和やかに話していると。
「あれ?巫女殿の体が……透けてる。」
「……あ、本当だ。」
ロレンツォ殿下の驚いた声に、僕とサフィルが振り返ると。
殿下の言う通り、カレンの体が手の先から少しずつ透けて来ていて。
隣を見ると、カイトも同じく姿が透けて来ていた。
「そろそろお別れみたいだね。」
59
お気に入りに追加
1,621
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる