173 / 352
第5章
173話 悪戯好き
しおりを挟む
皆、それぞれ思い思いにダンスを楽しんでいたが。
その中でも一際目立って輝いていた僕らは。
周囲からうっとりとした視線を向けられていた事に、気付きもしなかった。
やっと終わって、王太子に礼をし、彼から解放されてホッとしていると。
何故か次々とダンスを誘われる羽目になった。
……何でだ。
中でも驚いたのは。
シルヴィア時代に一方的にライバル視されていた、今は王太子の婚約者である侯爵令嬢のクリスティーナ嬢が男装しており、キラキラした目でダンスを誘われた事だ。
前世ではまさかこんな事するなんて、想像もつかなかったのに。
男装した令嬢は、今だけはしがらみを忘れ、本当に楽しそうに笑っていた。
「ありがとうございました!」
弾ける笑顔でそう言われ、クリスティーナ嬢は離れていき。
僕は一度休憩しようと、茶菓子が置いてある隅のテーブルの方へ移動した。
テオが直ぐに側に寄って来て。
「素敵でした、シリル様のダンス。」
「いや、もう本当に疲れた……。」
1ヶ月程あったとはいえ此処まで準備し、パーティーを開催するとは。
僕は、悪戯好きな妖精の様に、それぞれの輪に次々と入って行ってはお喋りを楽しむカレンを、遠くから見やった。
そうして、椅子に座り一息ついていると。
「ハッハッハッ!こりゃあ、とびっきりの美人さんだぁ!頂いて行こう!」
そう、ふざけた事を言って来ては、ノリノリで背後からレプリカの短剣を僕の喉元に突き付けてきたのは、すっかり型に嵌まって海賊の姿を楽しんでいたカイトで。
「……コレ、そんなに楽しいか。」
「うん。滅茶苦茶楽しい!」
「ハハ……巫子サマがご満足なら何より。」
ニシシッと悪戯っぽい笑みを浮かべて後ろから抱き付いて来たカイトに、僕は囚われのお姫様の様に扱われながら、やれやれと冷めた態度で溜息をつく。
お遊びとはいえ、こんな悪ふざけが許されるのは救世の巫子だからだぞ、全く。
内心呆れる僕だったが。
不意に前から手をひかれる。
驚いて振り向くと、そこに居たのはサフィルで。
彼は、残念な女装をさせられている僕などとは違い。
王子様の様な煌びやかな衣装を身に纏い、それに全然負けない態度で優美に微笑んでいた。
……って、よく見たら。
胸に付けているブローチは、アデリートの王族や高位貴族のみが着用を許されている紋章が刻まれていて。
その事に、僕はあんぐりと開いた口が塞がらなかったが。
彼のかなり後ろから、こちらを見ていたロレンツォ殿下と目が合うと。
殿下は左手に持った豪華な扇で口元を隠し、子供っぽい笑みを目元に浮かべて、右手を突き出してグッと親指を立てていた。
…貴方様のを貸したんですか。
サフィルの行動にカイトもびっくりした様で、直ぐに僕を解放してくれたが。
呆気に取られている内に、僕はサフィルの腕の中に収まっていたのだった。
その中でも一際目立って輝いていた僕らは。
周囲からうっとりとした視線を向けられていた事に、気付きもしなかった。
やっと終わって、王太子に礼をし、彼から解放されてホッとしていると。
何故か次々とダンスを誘われる羽目になった。
……何でだ。
中でも驚いたのは。
シルヴィア時代に一方的にライバル視されていた、今は王太子の婚約者である侯爵令嬢のクリスティーナ嬢が男装しており、キラキラした目でダンスを誘われた事だ。
前世ではまさかこんな事するなんて、想像もつかなかったのに。
男装した令嬢は、今だけはしがらみを忘れ、本当に楽しそうに笑っていた。
「ありがとうございました!」
弾ける笑顔でそう言われ、クリスティーナ嬢は離れていき。
僕は一度休憩しようと、茶菓子が置いてある隅のテーブルの方へ移動した。
テオが直ぐに側に寄って来て。
「素敵でした、シリル様のダンス。」
「いや、もう本当に疲れた……。」
1ヶ月程あったとはいえ此処まで準備し、パーティーを開催するとは。
僕は、悪戯好きな妖精の様に、それぞれの輪に次々と入って行ってはお喋りを楽しむカレンを、遠くから見やった。
そうして、椅子に座り一息ついていると。
「ハッハッハッ!こりゃあ、とびっきりの美人さんだぁ!頂いて行こう!」
そう、ふざけた事を言って来ては、ノリノリで背後からレプリカの短剣を僕の喉元に突き付けてきたのは、すっかり型に嵌まって海賊の姿を楽しんでいたカイトで。
「……コレ、そんなに楽しいか。」
「うん。滅茶苦茶楽しい!」
「ハハ……巫子サマがご満足なら何より。」
ニシシッと悪戯っぽい笑みを浮かべて後ろから抱き付いて来たカイトに、僕は囚われのお姫様の様に扱われながら、やれやれと冷めた態度で溜息をつく。
お遊びとはいえ、こんな悪ふざけが許されるのは救世の巫子だからだぞ、全く。
内心呆れる僕だったが。
不意に前から手をひかれる。
驚いて振り向くと、そこに居たのはサフィルで。
彼は、残念な女装をさせられている僕などとは違い。
王子様の様な煌びやかな衣装を身に纏い、それに全然負けない態度で優美に微笑んでいた。
……って、よく見たら。
胸に付けているブローチは、アデリートの王族や高位貴族のみが着用を許されている紋章が刻まれていて。
その事に、僕はあんぐりと開いた口が塞がらなかったが。
彼のかなり後ろから、こちらを見ていたロレンツォ殿下と目が合うと。
殿下は左手に持った豪華な扇で口元を隠し、子供っぽい笑みを目元に浮かべて、右手を突き出してグッと親指を立てていた。
…貴方様のを貸したんですか。
サフィルの行動にカイトもびっくりした様で、直ぐに僕を解放してくれたが。
呆気に取られている内に、僕はサフィルの腕の中に収まっていたのだった。
59
お気に入りに追加
1,601
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる