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第5章
172話 仮装パーティー
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もう半ばやけくそで、会場へ乗り込んだ僕だったが。
テオにエスコートされて会場へ入るなり、ちょっとしたどよめきが起こって。
そのまま帰りたくなった。
「皆さん、今日は私の我儘に付き合って下さって、本当にありがとうございます!異世界からこの世界へ来て、不安もいっぱいあって大変だったけど、皆さんに温かく迎えてもらえたので、此処へ来て良かったなって思ってます。だから、最後に皆との素敵な思い出を作りたくて、この仮装パーティーを企画しました!今日は無礼講で、楽しんでって下さいね!」
いつの間にか会場の中心に居たカレンは、声を張り上げて、パーティーの開催を告げていた。
「へー!これはこれは。こちらが霞んでしまう程の美人だな、クレイン卿。」
そう言って、ニヤニヤした表情を浮かべながら声を掛けて来たのは。
「……いえ、貴方こそなかなかのインパクトですね、殿下。」
ロレンツォ殿下。
僕を揶揄う様にニヤついてらっしゃいますが、貴方の格好には負けた気がします。
彼もまた付け髪でアップの髪型をし、その髪にはバラの髪飾りを付けて。
そして、情熱的で目の覚める様な赤と黒の彩りのドレスを着ておられた。
腰の辺りなど体のラインを強調しつつ、裾は大きく広がり、フリルでボリュームが多いマーメイド型のスカートを履いていて。
「フッ。あんまり恥ずかしがらない方がいいぞ。無礼講なんだ、楽しんでなんぼだからな~。」
そう言って、右手でスカートの裾をこれ見よがしにヒラヒラさせて、堂々と去って行った。
「流石ロレンツォ殿下。凄いな。」
「…えぇ。」
他人の目なぞ何のその。
その好奇な視線すら、愉しんでおられる様で。
僕とテオは呆気にとられて、彼の背中を見送った。
そうこうしている内に、楽団による音楽が流れだし。
パーティー会場はあっという間にダンス会場へと早変わりした。
僕は壁の花になろうと、テオを伴って移動しようとしたが。
不意に声を掛けられて。
「素敵なご令嬢。貴女の美貌に魅了された、この哀れな一介の騎士に、貴女と踊る栄誉を賜りたく。」
宜しいですか?と、声を掛けて来たのは、ユリウス王太子殿下だった。
王太子は今ご自身も言われた通り、騎士の格好をしていた。
元がいいから一介の騎士の格好なんぞをしていても、その高貴な雰囲気は全然消せていないぞ。
これは、どんな気位の高いご令嬢でも、一発でクラッときてしまいそうだが。
「いや、でも女性役は踊れな…」
僕は冷めた目で、至って冷静に。
お誘いを断ろうと口を開いたが。
「でも、従弟のダンス練習に付き合ってやっているんだろう?」
と、耳元で囁かれて。
「何故それを。」
「巫女が教えてくれたんだ。」
(……カレンッ余計な事を!)
悪びれもせず言う王太子に、僕は心の中でカレンに怒ったが。
王太子にやや強引に手をひかれる。
ちょっと待ってくれ。
「確かにそうですが、従弟と殿下では背丈も違うし、僕もちょっとしか付き合ってないから、とても上手くは出来ませんよ?」
僕自身も、こんな本場の会場で踊るなんて、殆ど機会が無かったし。
躊躇う僕に、彼はフッと目を細めて笑った。
「大丈夫。私に任せて、君は身を委ねれば良い。」
そう囁いて、有無も言わさず参加させられて。
ただでさえ慣れない衣装と会場の雰囲気に戸惑う僕だったが、彼はと言えば、そんな僕すら完璧にリードする素晴らしい動きだった。
(シルヴィアの時はどんなに望んでも手に入らなかったのに…今になってこんな…)
仮装している僕なんかより、何倍も美しく可愛かった僕の妹の事を想うと、何とも言えない心地になり。
「あ、すみません。」
「…いや、大丈夫だよ。」
何より悔しいので、失敗したフリして王太子の足をわざと踏んづけてやった。
それなのに、余裕綽々といった様子で、流れる様な動きでまた導かれる。
全く、なんて王子様だ。
テオにエスコートされて会場へ入るなり、ちょっとしたどよめきが起こって。
そのまま帰りたくなった。
「皆さん、今日は私の我儘に付き合って下さって、本当にありがとうございます!異世界からこの世界へ来て、不安もいっぱいあって大変だったけど、皆さんに温かく迎えてもらえたので、此処へ来て良かったなって思ってます。だから、最後に皆との素敵な思い出を作りたくて、この仮装パーティーを企画しました!今日は無礼講で、楽しんでって下さいね!」
いつの間にか会場の中心に居たカレンは、声を張り上げて、パーティーの開催を告げていた。
「へー!これはこれは。こちらが霞んでしまう程の美人だな、クレイン卿。」
そう言って、ニヤニヤした表情を浮かべながら声を掛けて来たのは。
「……いえ、貴方こそなかなかのインパクトですね、殿下。」
ロレンツォ殿下。
僕を揶揄う様にニヤついてらっしゃいますが、貴方の格好には負けた気がします。
彼もまた付け髪でアップの髪型をし、その髪にはバラの髪飾りを付けて。
そして、情熱的で目の覚める様な赤と黒の彩りのドレスを着ておられた。
腰の辺りなど体のラインを強調しつつ、裾は大きく広がり、フリルでボリュームが多いマーメイド型のスカートを履いていて。
「フッ。あんまり恥ずかしがらない方がいいぞ。無礼講なんだ、楽しんでなんぼだからな~。」
そう言って、右手でスカートの裾をこれ見よがしにヒラヒラさせて、堂々と去って行った。
「流石ロレンツォ殿下。凄いな。」
「…えぇ。」
他人の目なぞ何のその。
その好奇な視線すら、愉しんでおられる様で。
僕とテオは呆気にとられて、彼の背中を見送った。
そうこうしている内に、楽団による音楽が流れだし。
パーティー会場はあっという間にダンス会場へと早変わりした。
僕は壁の花になろうと、テオを伴って移動しようとしたが。
不意に声を掛けられて。
「素敵なご令嬢。貴女の美貌に魅了された、この哀れな一介の騎士に、貴女と踊る栄誉を賜りたく。」
宜しいですか?と、声を掛けて来たのは、ユリウス王太子殿下だった。
王太子は今ご自身も言われた通り、騎士の格好をしていた。
元がいいから一介の騎士の格好なんぞをしていても、その高貴な雰囲気は全然消せていないぞ。
これは、どんな気位の高いご令嬢でも、一発でクラッときてしまいそうだが。
「いや、でも女性役は踊れな…」
僕は冷めた目で、至って冷静に。
お誘いを断ろうと口を開いたが。
「でも、従弟のダンス練習に付き合ってやっているんだろう?」
と、耳元で囁かれて。
「何故それを。」
「巫女が教えてくれたんだ。」
(……カレンッ余計な事を!)
悪びれもせず言う王太子に、僕は心の中でカレンに怒ったが。
王太子にやや強引に手をひかれる。
ちょっと待ってくれ。
「確かにそうですが、従弟と殿下では背丈も違うし、僕もちょっとしか付き合ってないから、とても上手くは出来ませんよ?」
僕自身も、こんな本場の会場で踊るなんて、殆ど機会が無かったし。
躊躇う僕に、彼はフッと目を細めて笑った。
「大丈夫。私に任せて、君は身を委ねれば良い。」
そう囁いて、有無も言わさず参加させられて。
ただでさえ慣れない衣装と会場の雰囲気に戸惑う僕だったが、彼はと言えば、そんな僕すら完璧にリードする素晴らしい動きだった。
(シルヴィアの時はどんなに望んでも手に入らなかったのに…今になってこんな…)
仮装している僕なんかより、何倍も美しく可愛かった僕の妹の事を想うと、何とも言えない心地になり。
「あ、すみません。」
「…いや、大丈夫だよ。」
何より悔しいので、失敗したフリして王太子の足をわざと踏んづけてやった。
それなのに、余裕綽々といった様子で、流れる様な動きでまた導かれる。
全く、なんて王子様だ。
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