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第5章
165話 お見舞い
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「シリル様、すみません。直接お部屋までお邪魔してしまって。」
サフィルも同じく申し訳なさそうに言って来てくれるが、僕の方こそ、楽な寝間着の格好で、しかもベッド上で、申し訳なくなる。
慌ててベッドから出ようとするが、サフィルにやんわりと止められた。
「あ、そのまま楽になさっていて下さい。まだ本調子ではないと聞きましたので、どうぞ無理なさらず。今日はお見舞いに伺わせて頂いたのですから。」
そう言って、サフィルはニッコリと笑った。
テオはサフィルから花束を受け取った後、僕のベッドの側に黙って椅子を置いて、サフィルは其処に座すと。
その後ろで、テオが何だか負のオーラを漂わせながらニッコリと微笑んで。
今度は座ったサフィルに後ろから耳打ちしていた。
「来るのがおせーんだよ。」
「………すみません。」
「テ、テオッ?!」
今にもサフィルが座った椅子を引き倒そうとするくらいの勢いで、テオは笑顔のまま怒りを滲ませた低い声で言ったのを耳にし。
サフィルは、うっと言葉に詰まりつつ、一言謝罪を述べ。
僕は客人に向かって何て口の利き方をするのかと、心底ビックリしていたが。
テオを諫めようとする前に、この様子を興味津々に見守っていたレイラと、客人用に追加のお茶を淹れたミストラルの侍女二人と一緒に、テオはさっさとこの部屋を後にしてしまって。
部屋を出る際に、混乱している僕と目が合うと、ニコッと笑みを向けられた。
テオなりに気を利かせてくれているのだろうか。
「………その、すみません。僕の従者が失礼な真似を…」
でもいきなり、何の心の準備も無く二人きりにされて、頑張れと背を押されても。
どうすればいいのか分からなくて、僕は取り敢えずテオの非礼をまずは詫びた。
「いえ、彼の言う通りです。私の方こそ、今頃になって何のご連絡もなく、突然お邪魔してすみません。」
「いえ、そんな……。お見舞い、あ、ありがとうございます。王宮の新年のパーティーを欠席されてまでわざわざ……」
「いえ、大丈夫です。ずっとシリル様の事を気にしていた私を見て、王宮へ参内するロレンツォ殿下から、『こっちはいいから、さっさと見舞いでも行ってこーい!』って笑顔で放り出されましたから。」
「あ、そ、そうなんですか……」
「はい……。でも本当にすみません。お見舞いなら、もっと早く来るべきでした。なかなか決心がつかなくて。」
本当に申し訳ない。
と、再度謝られて、僕はただただ恐縮してしまう。
何というか、お互いぎこちない空気で。
折角会えたのに、いざとなったら何を言うべきか言葉に詰まってしまう。
どうしようと俯く僕に、サフィルが口を開いてくれた。
「本当に駄目ですね、私は。貴方を困らせてばかりで。お身体の調子はどうですか?救世の巫子様方の治癒をまだ受けてらっしゃると伺ったのですが……」
「あ、一応受けてはいるのですが、もうかなり回復したんですよ。部屋の中なら歩き回れる様になりましたし。今日は皆出払ってしまっているので、ベッドでのんびりしていただけなのです。」
僕が控えめに笑うと、サフィルはちょっと安心した様な顔をしたのだった。
サフィルも同じく申し訳なさそうに言って来てくれるが、僕の方こそ、楽な寝間着の格好で、しかもベッド上で、申し訳なくなる。
慌ててベッドから出ようとするが、サフィルにやんわりと止められた。
「あ、そのまま楽になさっていて下さい。まだ本調子ではないと聞きましたので、どうぞ無理なさらず。今日はお見舞いに伺わせて頂いたのですから。」
そう言って、サフィルはニッコリと笑った。
テオはサフィルから花束を受け取った後、僕のベッドの側に黙って椅子を置いて、サフィルは其処に座すと。
その後ろで、テオが何だか負のオーラを漂わせながらニッコリと微笑んで。
今度は座ったサフィルに後ろから耳打ちしていた。
「来るのがおせーんだよ。」
「………すみません。」
「テ、テオッ?!」
今にもサフィルが座った椅子を引き倒そうとするくらいの勢いで、テオは笑顔のまま怒りを滲ませた低い声で言ったのを耳にし。
サフィルは、うっと言葉に詰まりつつ、一言謝罪を述べ。
僕は客人に向かって何て口の利き方をするのかと、心底ビックリしていたが。
テオを諫めようとする前に、この様子を興味津々に見守っていたレイラと、客人用に追加のお茶を淹れたミストラルの侍女二人と一緒に、テオはさっさとこの部屋を後にしてしまって。
部屋を出る際に、混乱している僕と目が合うと、ニコッと笑みを向けられた。
テオなりに気を利かせてくれているのだろうか。
「………その、すみません。僕の従者が失礼な真似を…」
でもいきなり、何の心の準備も無く二人きりにされて、頑張れと背を押されても。
どうすればいいのか分からなくて、僕は取り敢えずテオの非礼をまずは詫びた。
「いえ、彼の言う通りです。私の方こそ、今頃になって何のご連絡もなく、突然お邪魔してすみません。」
「いえ、そんな……。お見舞い、あ、ありがとうございます。王宮の新年のパーティーを欠席されてまでわざわざ……」
「いえ、大丈夫です。ずっとシリル様の事を気にしていた私を見て、王宮へ参内するロレンツォ殿下から、『こっちはいいから、さっさと見舞いでも行ってこーい!』って笑顔で放り出されましたから。」
「あ、そ、そうなんですか……」
「はい……。でも本当にすみません。お見舞いなら、もっと早く来るべきでした。なかなか決心がつかなくて。」
本当に申し訳ない。
と、再度謝られて、僕はただただ恐縮してしまう。
何というか、お互いぎこちない空気で。
折角会えたのに、いざとなったら何を言うべきか言葉に詰まってしまう。
どうしようと俯く僕に、サフィルが口を開いてくれた。
「本当に駄目ですね、私は。貴方を困らせてばかりで。お身体の調子はどうですか?救世の巫子様方の治癒をまだ受けてらっしゃると伺ったのですが……」
「あ、一応受けてはいるのですが、もうかなり回復したんですよ。部屋の中なら歩き回れる様になりましたし。今日は皆出払ってしまっているので、ベッドでのんびりしていただけなのです。」
僕が控えめに笑うと、サフィルはちょっと安心した様な顔をしたのだった。
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