全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第5章

164話 お留守番

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気付いたら自室のベッドの上に居た。
あれから、また気を失ったらしい僕は、皆に心配されながらも、無事に帰宅したらしい。

1日以上空けての帰宅となってしまった為に、叔父達には随分心配をかけてしまったらしいが、そこはテオやロレンツォ殿下達が上手く話しておいてくれたそうで。
帰宅途中にカミル殿下を見かけたと勘違いして、急に飛び出してしまった僕を見つけてくれたロレンツォ殿下達に救世の巫子達も合流して。
長く引き止め過ぎて、連絡が遅れてしまった為、一晩寝てから、こうして一緒に送り届けに来ました。
ご連絡が遅くなり、申し訳ない。

……そう、ロレンツォ殿下に言われてしまえば。
例え他国のとは言え、王子様に謝られてしまったら、叔父様だってそれ以上は何も言えない。
ただ、すっかり動けなくなってしまった僕は、寒空の中走り回ってしまったから、風邪をひいてしまった、という言い訳でベッド生活中だった。

あれからすぐ、カミル殿下からの改めて個人的な謝罪の言葉と、兄王子の回復を。
ヴァルトシュタイン侯爵からは、王太子の解呪の成功や、謝罪と感謝の言葉と。
僕の体の不調は、魔力譲渡で無理をし過ぎて体力を削ってしまったからだろうから、救世の巫子達の救済を受け、しばらくは安静にして欲しい旨など、簡単にだが分かり易くしたためられた手紙を、わざわざ速達で送って下さって。
それぞれ受け取ったのだった。

あれから直ぐに年の瀬となり、学院も冬季休暇に入った。
カミル殿下はこのまま休暇明けまで本国で過ごされる様だ。
僕は、ベッドの上での年越しとなった。

けれど、その心の内は、今までで一番晴れやかだった。
ようやく、懸案を全て終えられて、心の底から安堵している。

そして今日は。
新年の挨拶へと、叔父夫婦にリチャードとシャーロット、巫子達も、それぞれ王宮に参内している。
僕は、かなり体調は回復しつつあったが、まだ少し体のだるさが残るので、留守番する事にした。
皆が出払って静かになった屋敷の中で、独り、ぼんやりと窓の外を眺めて過ごしている。
たまにはこんな静けさもいいな。

のんびりと午後のひと時を過ごしていると。
侍女のレイラとミストラルが様子を見に来てくれた。
僕のおでこに手を当てたレイラは。

「うん、もう大丈夫そうですね。」

と、ニッコリと微笑んだ。
ミストラルも。

「随分顔色も良くなられてホッと致しました。こちらをどうぞ。」

そう言って、僕にほんのり温かいハーブティーを淹れてくれた。

「飲みやすいね。」
「滋養に良いものを選びました。ハーブも軽い薬の様に効果的なものが沢山あるのですよ。」
「へぇ…。ミストラルはそういうの詳しいの?」
「えぇ、まぁ。此処にお世話になる以前は、色々な薬や薬草を扱う仕事もしていましたので。」

控えめに微笑むミストラルは、僕とそんなに年が離れている様には見えないのに、とてもしっかりしていて前職の経験も豊富そうに感じられた。
町医者の手伝いとかでもしていたのかな?

僕がそんな事をなんとなしに思っていると。
扉をノックし、テオが入室して来た。

「……シリル様、お客様がいらしてますよ。」
「え?僕に?」

だって、今日は王宮で新年の祝賀パーティーが開かれているから、主要な貴族達は殆どそちらへ出向いている筈だ。
そんな時に?

僕は目を丸めたが。
テオの後ろから現れたのは、花束を抱え、心配そうな表情を滲ませたサフィルだった。

「え、サフィル?!」

僕は、ただただびっくりしたまま固まって。
すると、申し訳なさそうな顔をしたテオが、僕の側に寄り、そっと耳打ちしてくれた。

「……すみません、シリル様。先ずは応接室にてお待ち頂くべきなのですが、目を離した隙に怖気づいて逃げられても困るので、直接連れて来ちゃいました。」

お寛ぎのところに連れて来て、申し訳ございません。と、テオは謝罪して来たが。
僕は、あのテオが殴り掛かったりせず、ちゃんと案内して来た事の方にちょっと驚いた。
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