全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第4章

158話 終止符を

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決して和やかとは言い難かったティータイムを終えると、僕は全てに終止符を打つ為に再度瞳を閉じた。
そして、フッと目を開くと。
身の内から凄まじい何かが渦巻いて、外へ飛び出そうとしているのを感じる。
それを心のままに開放すると、体がフワリと宙に浮いた。

全身から放たれている光が、僕の身の内に眠っていた魔力なのか。
自分自身でも分からないまま、制御も出来ないまま、その身を宙に漂わせる。

此処まで強大な魔力を与えられていたなんて。
本当に何も知らなかったのだと、思い知らされる。
そうして力の向くままに心を委ねて。
僕は全ての終わりの時を待った。

けれど、一向に動く気配のない侯爵に気付き。

「どうされました、侯爵。早くして下さい。でないと、僕にはこの魔力を制御出来ません。」

この身から放たれている光が魔力なら、早く持っていってくれないと、尽きてしまうんじゃないのだろうか。
心配になる僕に、侯爵は、今更ながらに酷く躊躇っている様で。

「…また、奪わないといけないのか?3度もお前達を殺すのか。」
「侯爵…」

他に方法があればいいのだが、結局、侯爵にも、己を襲った者達と同じ方法でしか、魔力を奪う事が出来ないらしいから。
それなら、そうするしか、ないのだろう。

奪う前にシルヴィアの様に対象が死んでしまえば、魔力の強奪は出来ないのだそう。
前世の僕も、断頭台の露と消えてしまった。
だから、本当の意味で魔力を持っていくのは、侯爵には初めてだった様だ。

でも、此処まで来て、躊躇わないで欲しい。
長引かせられるのは、僕もしんどい。

「あ……う……」

徐々に意識を保つのも難しくなってきた。
視界が光でいっぱいになって、もう侯爵の顔もよく見えない。
なんとか意識がある内に、侯爵に手を伸ばそうとして。

「シリル様っ!!」

僕を呼ぶ大きな声を耳にした途端、僕はプツリと意識が途切れた。
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