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第4章
155話 無念
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「僕の事は……いいよ。どう好きにしたって構わない。貴方の最も守りたい人を、守れた筈の力を巡り巡って、僕が奪ってしまっていたから。だから、好きにすればいい。貴方が其処まで思い詰めてしまう気持ちも、今の僕には少し、理解出来るから。………でも、シルヴィアはっ!あ、あの子は何も知らなかったんだ!あの子が悪い訳じゃなかったのに!婚約だって……殿下に惹かれていたのはあの子本人だったかも知れないけど、婚約を成立させたのは両親じゃないか!あの子には何の罪も、無かったのにっ」
そんなに苦い顔をするのなら。
彼女に謝って欲しくても、それも出来ない。
だって、彼女はもう居ない。
僕のたった一人の妹という、彼女は。
死に戻って、僕になって。
また死んで、目覚めたのは……やっぱり僕で。
シルヴィアは最初の世で死んだまま、戻って来ない。
何で、どうして……戻って来てくれないんだ。
君が愛してやまなかったユリウス殿下が、本当は。
誰よりも君の為を想って。
無理をして、不器用ながらも……守ろうとしてくれたんだよ。
その事実を、教えてあげたいのに。
彼女は何も知らないまま。
全てに絶望して死んでしまった。
僕なんかに、全てを委ねて。
「何でっ!!どうしてシルヴィアをそこまでっ!」
「呪いの進行が早まって……もう、王太子としての地位も危うくなってしまわれて……。殿下とあの子を天秤にかけた時、あの子を切り捨てる事を選んだ。そもそも私は、あの時……最も救いたかったのは、アナトリアだったのに。私の全てを投げ打って救った筈の彼女から、あの子に全てを奪われたんだ!愛しかったアナトリアも、最も忠誠を尽くしたいベルナルト殿下すらも!」
怒りとやるせなさで叫んだ僕以上の激情をもって、侯爵は叫んだ。
僕からすればたった一人の妹でも。
彼にとっては、一番大切だった女性と、最も敬愛する殿下の立場を奪った者だと言うのだ、シルヴィアは。
そう、なのかも知れない、けれど。
「でも……あんなに追い詰める必要なんて無かったじゃないかっ!それこそ、カレンの時みたいに、攫って捕まえるとかでも……」
「あぁ、ロレンツォ王子が巫女にやっていたな。アイツも失敗しただろう?エウリルス王やユリウス王太子の監視が厳しかったし、シルヴィアも馬鹿ではないから、そう簡単には隙を見せない。今考えても、あの時はあの方法が、自分にとっては一番確実で効果的だったと思う。」
「っ……」
やっぱり、あの時カレンを攫ったのはロレンツォ殿下だったんですね。
でも、それを呑気に口に出来る程、今の僕の心の中はとても穏やかではいられなかった。
淡々と話す侯爵を殴り飛ばしたいくらいの激しい怒りを感じるが、それも出来ない自分の意気地の無さがどうしようもなく情けなかった。
そんなに苦い顔をするのなら。
彼女に謝って欲しくても、それも出来ない。
だって、彼女はもう居ない。
僕のたった一人の妹という、彼女は。
死に戻って、僕になって。
また死んで、目覚めたのは……やっぱり僕で。
シルヴィアは最初の世で死んだまま、戻って来ない。
何で、どうして……戻って来てくれないんだ。
君が愛してやまなかったユリウス殿下が、本当は。
誰よりも君の為を想って。
無理をして、不器用ながらも……守ろうとしてくれたんだよ。
その事実を、教えてあげたいのに。
彼女は何も知らないまま。
全てに絶望して死んでしまった。
僕なんかに、全てを委ねて。
「何でっ!!どうしてシルヴィアをそこまでっ!」
「呪いの進行が早まって……もう、王太子としての地位も危うくなってしまわれて……。殿下とあの子を天秤にかけた時、あの子を切り捨てる事を選んだ。そもそも私は、あの時……最も救いたかったのは、アナトリアだったのに。私の全てを投げ打って救った筈の彼女から、あの子に全てを奪われたんだ!愛しかったアナトリアも、最も忠誠を尽くしたいベルナルト殿下すらも!」
怒りとやるせなさで叫んだ僕以上の激情をもって、侯爵は叫んだ。
僕からすればたった一人の妹でも。
彼にとっては、一番大切だった女性と、最も敬愛する殿下の立場を奪った者だと言うのだ、シルヴィアは。
そう、なのかも知れない、けれど。
「でも……あんなに追い詰める必要なんて無かったじゃないかっ!それこそ、カレンの時みたいに、攫って捕まえるとかでも……」
「あぁ、ロレンツォ王子が巫女にやっていたな。アイツも失敗しただろう?エウリルス王やユリウス王太子の監視が厳しかったし、シルヴィアも馬鹿ではないから、そう簡単には隙を見せない。今考えても、あの時はあの方法が、自分にとっては一番確実で効果的だったと思う。」
「っ……」
やっぱり、あの時カレンを攫ったのはロレンツォ殿下だったんですね。
でも、それを呑気に口に出来る程、今の僕の心の中はとても穏やかではいられなかった。
淡々と話す侯爵を殴り飛ばしたいくらいの激しい怒りを感じるが、それも出来ない自分の意気地の無さがどうしようもなく情けなかった。
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