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第4章
150話 お茶にしましょう
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部屋の扉を開けると、他に小さな部屋が2、3あったが、どれもただ横になる為だけの簡易な部屋だった。
廊下の突き当りの扉を開くと、少し広めの部屋がある。
居間の様だ。
締め切った窓を開けると、少し埃っぽかった空気は、外へと吐き出された。
辺りは薄暗い。
もうすぐ夜になるのか。
僕は窓の外を何の気なしに眺めてみると。
フワリと清浄な空気が頬を掠めて通り過ぎて行った。
「…今のも、貴方の魔術ですか?」
「えぇ。ずっとほったらかしにしていて埃がたまっていたので、綺麗にしました。埃の舞う中でお茶をするのは流石に嫌ですからね。」
「確かに。」
「あ、それと、もうすぐ夜明けですよ。貴方は一晩ぐっすり眠っていましたからね。」
呆れた顔で言って来た侯爵に、僕は恥ずかしくなって俯いた。
だって、よく寝れたんだから、仕方ないじゃないか。
ただでさえ、眠かったんだし。
おかげで今はバッチリ目が冴えてるけど。
お茶をしよう、と言った僕だったが。
戸棚からお茶の葉を取り出し、おそらく隣の調理場でポットを洗い、お湯を沸かし、茶器を揃え。
まるで侍女の様に全てを揃えて準備して、侯爵は戻って来た。
「手際が良いですね。」
「言い出したのは貴方でしょうに。まぁいい、座って下さい。入れますから。」
相変わらず呆れた顔で何も出来ない僕を見やった侯爵は、溜息をつきながらもお茶を入れてくれた。
小さいがゆったりと腰を下ろせるソファーに座り、僕は提供されたお茶を口にする。
「……美味しいですね。ちょっと古そうだったから、大丈夫かなって思ったのに。」
「大丈夫かと思ったのはこちらですよ。何の疑いも無く口を付けるなんて。」
「今更、毒を仕込む事も無いでしょう。有っても話が終わってからにして下さい。………って、あぁ!!」
そうだ!毒で思い出した!!
「前世で学院の卒業パーティーの時に、僕のワイングラスに毒を盛ったのは!貴方でしょう?!」
「……そうですよ。」
「あー……そうだったのかぁ……。ずっと、カイトの周辺人物を狙っての事かと思ってたのに……。最初から狙いは僕だったのかぁ……。」
ずっと、分からなかった……毒の、あの件。
今世で、ロレンツォ殿下達の問題解決の方だけで手いっぱいで、そっちは全然手を付けられていなかった。
手がかりも無かったし、コレと言った目星も無かったから。
「これはやっぱり、俄然教えて欲しいですね。さぁ、洗いざらい吐いて下さい。」
「何で、そんなに妙なやる気に満ちているんです?」
「さぁ?色々有り過ぎて、感覚が麻痺してしまったんじゃないですか?さっき誰かさんに滅茶苦茶痺れさせられましたし。」
「……」
僕がちょっと茶化して言ってみると、侯爵は面白く無さそうな顔をしている。
そんな、怒らなくても。
「この程度で煽られないで下さいよ。単なる冗談でしょう?……僕だって、心の準備はしたいけど、どうせ出来そうにないから、強がっているだけですよ。」
「………」
「この死に戻りの度重なる経験で、僕も得たものがあったんです。情報共有の大切さですよ。独りでは無理だった事も、互いに協力する事で、知り得た事が沢山ありました。貴方との出会いも、その1つの様な気がするのですよ、僕は。だから、お願いします、話して下さい。」
ね?と笑みを向けると、侯爵はギュッと拳を握った手をほどき、ようやく話す決意を固めてくれたのだった。
廊下の突き当りの扉を開くと、少し広めの部屋がある。
居間の様だ。
締め切った窓を開けると、少し埃っぽかった空気は、外へと吐き出された。
辺りは薄暗い。
もうすぐ夜になるのか。
僕は窓の外を何の気なしに眺めてみると。
フワリと清浄な空気が頬を掠めて通り過ぎて行った。
「…今のも、貴方の魔術ですか?」
「えぇ。ずっとほったらかしにしていて埃がたまっていたので、綺麗にしました。埃の舞う中でお茶をするのは流石に嫌ですからね。」
「確かに。」
「あ、それと、もうすぐ夜明けですよ。貴方は一晩ぐっすり眠っていましたからね。」
呆れた顔で言って来た侯爵に、僕は恥ずかしくなって俯いた。
だって、よく寝れたんだから、仕方ないじゃないか。
ただでさえ、眠かったんだし。
おかげで今はバッチリ目が冴えてるけど。
お茶をしよう、と言った僕だったが。
戸棚からお茶の葉を取り出し、おそらく隣の調理場でポットを洗い、お湯を沸かし、茶器を揃え。
まるで侍女の様に全てを揃えて準備して、侯爵は戻って来た。
「手際が良いですね。」
「言い出したのは貴方でしょうに。まぁいい、座って下さい。入れますから。」
相変わらず呆れた顔で何も出来ない僕を見やった侯爵は、溜息をつきながらもお茶を入れてくれた。
小さいがゆったりと腰を下ろせるソファーに座り、僕は提供されたお茶を口にする。
「……美味しいですね。ちょっと古そうだったから、大丈夫かなって思ったのに。」
「大丈夫かと思ったのはこちらですよ。何の疑いも無く口を付けるなんて。」
「今更、毒を仕込む事も無いでしょう。有っても話が終わってからにして下さい。………って、あぁ!!」
そうだ!毒で思い出した!!
「前世で学院の卒業パーティーの時に、僕のワイングラスに毒を盛ったのは!貴方でしょう?!」
「……そうですよ。」
「あー……そうだったのかぁ……。ずっと、カイトの周辺人物を狙っての事かと思ってたのに……。最初から狙いは僕だったのかぁ……。」
ずっと、分からなかった……毒の、あの件。
今世で、ロレンツォ殿下達の問題解決の方だけで手いっぱいで、そっちは全然手を付けられていなかった。
手がかりも無かったし、コレと言った目星も無かったから。
「これはやっぱり、俄然教えて欲しいですね。さぁ、洗いざらい吐いて下さい。」
「何で、そんなに妙なやる気に満ちているんです?」
「さぁ?色々有り過ぎて、感覚が麻痺してしまったんじゃないですか?さっき誰かさんに滅茶苦茶痺れさせられましたし。」
「……」
僕がちょっと茶化して言ってみると、侯爵は面白く無さそうな顔をしている。
そんな、怒らなくても。
「この程度で煽られないで下さいよ。単なる冗談でしょう?……僕だって、心の準備はしたいけど、どうせ出来そうにないから、強がっているだけですよ。」
「………」
「この死に戻りの度重なる経験で、僕も得たものがあったんです。情報共有の大切さですよ。独りでは無理だった事も、互いに協力する事で、知り得た事が沢山ありました。貴方との出会いも、その1つの様な気がするのですよ、僕は。だから、お願いします、話して下さい。」
ね?と笑みを向けると、侯爵はギュッと拳を握った手をほどき、ようやく話す決意を固めてくれたのだった。
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