149 / 368
第4章
149話 壮大な実験
しおりを挟む
「……ヴァルトシュタイン侯爵、貴方も…この世界の繰り返しに気付いておられたなんて。……まさか、貴方がこの繰り返しを引き起こされたりとかは……していないのですか?」
雷の様な魔術を使ったり、幻影を創ったり。
巧みに色んな事が出来る侯爵なら、あるいは。
念の為、尋ねてみたが。
恐る恐る聞く僕に、侯爵はギロリと睨み付けてきて。
「魔術で貴方にとどめも刺せない私に、そんな芸当が出来るとでも?繰り返しを感知は出来ても、それを行使する事は出来ません。出来れば、そもそもこんな苦労はしない。」
「じゃあ、どうしてなんだろう?一体誰が?……まさか、神様…とか?」
「ハッ…まぁ、当たらずとも遠からず…と言った所ですかね。……救世の巫子がいるでしょう?あの存在を異世界から呼び寄せた人物ですよ。私達等より遥か高次元の魔術が使える大魔術師。その神の如く大魔術師サマの、壮大な実験の一部でしかないのですよ、これは。」
「………はぁ?大魔術師の実験?」
ヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵。
魔術を巧みに扱える彼は。
その魔術の扱いだけでなく、魔術師の事にも詳しい様だ。
呆気にとられる僕を睨み見て、侯爵は苦々しい顔をした。
「私達は所詮、ゼルヴィルツの手のひらで転がされている駒の一部にしかすぎません。奴からすればただ永い生の中での、ほんの暇つぶしにしか過ぎない。それに抗うほどの力は私には無い。だから、奴の気の向くまま、好きにすればいいだろう。私は、私の為すべき事を為すまでだ。」
圧倒的強者の手のひらで転がされるだけの存在でしかなくとも。
自分は自分のすべき事をやり遂げてみせる。
侯爵はそう決意を強く宿した瞳で、僕を見つめて来る。
「……それが、僕を殺す事ですか。」
「…あぁ。」
「そうですか。」
「………」
強い憎しみすら篭った目で睨み付けられて。
きっと、以前の僕ならそれだけで怯んだだろうけど。
生憎、色んな事が有り過ぎて、そのくらいではどうにも怖気づかなくなってしまった。
侯爵の答えに淡々と反応する僕に、彼は僕をはかりかねている様だった。
「ヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵。貴方は僕より多くの事を知っている。ただこの運命に翻弄され続けていた、僕などとは違って。お願いします、侯爵……教えて下さい。貴方のご存知の事を全て。僕は逃げませんから。……もう、逃げる事はしませんから。だから、教えて欲しい。何があって、どうして僕の命が欲しいのか。何も知らないまま死ぬのはもう嫌なんだ!」
知りたいんだ、何故、この様な事になったのか。
2度の死に戻りで、色々知れたと思っていた。
でも、違った。
この3度目の今世でも、知らなかった事が沢山あった。
ヴァルトシュタイン侯爵、貴方の存在も、その1つだ。
僕は、侯爵のその淡く美しい瞳を見つめた。
決して逸らすつもりは無い。
僕は逃げないと誓ったんだ。
貴方だって、逃がすつもりはない。
じっと見つめ続けると、侯爵は根負けしたのか、ようやく口を開いた。
「…………分かった。お話ししましょう。」
「…あ、待って。」
「……何です?」
やっと折れた侯爵に対し、僕は気付いて待ったをかけた。
侯爵は急に出ばなをくじかれて、嫌な顔をして見せたが。
「絶対、お話長くなりますよね?だったら、椅子に座って話しましょう。お茶も必要ですね。あるでしょう?」
僕はニッコリ笑ってそう言うと、床に蹲ったままの侯爵に手を伸ばし、立つ様に促した。
侯爵は益々変な顔をしたが、呆れて、それでも僕の手を取ってくれて。
僕はグイッと引っ張って、侯爵を立たせた。
でも、それよりも侯爵が自分の力で立ち上がったと言うべきか。
……カイトの様に上手く引っ張れない。
やっぱり腕力に差があり過ぎるのか。
僕はちょっぴりがっかりした。
雷の様な魔術を使ったり、幻影を創ったり。
巧みに色んな事が出来る侯爵なら、あるいは。
念の為、尋ねてみたが。
恐る恐る聞く僕に、侯爵はギロリと睨み付けてきて。
「魔術で貴方にとどめも刺せない私に、そんな芸当が出来るとでも?繰り返しを感知は出来ても、それを行使する事は出来ません。出来れば、そもそもこんな苦労はしない。」
「じゃあ、どうしてなんだろう?一体誰が?……まさか、神様…とか?」
「ハッ…まぁ、当たらずとも遠からず…と言った所ですかね。……救世の巫子がいるでしょう?あの存在を異世界から呼び寄せた人物ですよ。私達等より遥か高次元の魔術が使える大魔術師。その神の如く大魔術師サマの、壮大な実験の一部でしかないのですよ、これは。」
「………はぁ?大魔術師の実験?」
ヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵。
魔術を巧みに扱える彼は。
その魔術の扱いだけでなく、魔術師の事にも詳しい様だ。
呆気にとられる僕を睨み見て、侯爵は苦々しい顔をした。
「私達は所詮、ゼルヴィルツの手のひらで転がされている駒の一部にしかすぎません。奴からすればただ永い生の中での、ほんの暇つぶしにしか過ぎない。それに抗うほどの力は私には無い。だから、奴の気の向くまま、好きにすればいいだろう。私は、私の為すべき事を為すまでだ。」
圧倒的強者の手のひらで転がされるだけの存在でしかなくとも。
自分は自分のすべき事をやり遂げてみせる。
侯爵はそう決意を強く宿した瞳で、僕を見つめて来る。
「……それが、僕を殺す事ですか。」
「…あぁ。」
「そうですか。」
「………」
強い憎しみすら篭った目で睨み付けられて。
きっと、以前の僕ならそれだけで怯んだだろうけど。
生憎、色んな事が有り過ぎて、そのくらいではどうにも怖気づかなくなってしまった。
侯爵の答えに淡々と反応する僕に、彼は僕をはかりかねている様だった。
「ヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵。貴方は僕より多くの事を知っている。ただこの運命に翻弄され続けていた、僕などとは違って。お願いします、侯爵……教えて下さい。貴方のご存知の事を全て。僕は逃げませんから。……もう、逃げる事はしませんから。だから、教えて欲しい。何があって、どうして僕の命が欲しいのか。何も知らないまま死ぬのはもう嫌なんだ!」
知りたいんだ、何故、この様な事になったのか。
2度の死に戻りで、色々知れたと思っていた。
でも、違った。
この3度目の今世でも、知らなかった事が沢山あった。
ヴァルトシュタイン侯爵、貴方の存在も、その1つだ。
僕は、侯爵のその淡く美しい瞳を見つめた。
決して逸らすつもりは無い。
僕は逃げないと誓ったんだ。
貴方だって、逃がすつもりはない。
じっと見つめ続けると、侯爵は根負けしたのか、ようやく口を開いた。
「…………分かった。お話ししましょう。」
「…あ、待って。」
「……何です?」
やっと折れた侯爵に対し、僕は気付いて待ったをかけた。
侯爵は急に出ばなをくじかれて、嫌な顔をして見せたが。
「絶対、お話長くなりますよね?だったら、椅子に座って話しましょう。お茶も必要ですね。あるでしょう?」
僕はニッコリ笑ってそう言うと、床に蹲ったままの侯爵に手を伸ばし、立つ様に促した。
侯爵は益々変な顔をしたが、呆れて、それでも僕の手を取ってくれて。
僕はグイッと引っ張って、侯爵を立たせた。
でも、それよりも侯爵が自分の力で立ち上がったと言うべきか。
……カイトの様に上手く引っ張れない。
やっぱり腕力に差があり過ぎるのか。
僕はちょっぴりがっかりした。
67
お気に入りに追加
1,621
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる