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第4章
147話 精緻な魔術
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「え、凄い。……侯爵は魔術が使えるんですか。」
「……」
「凄い。……本当に、凄い!こんな精緻な魔術、初めて見た。巫子達のとはまた違って、何と言うか、巧い。いいなぁ……僕はせいぜい歩く製氷機だし。」
正にあれぞ、魔術って感じだ!
僕なんかのしょぼい氷の魔術なんかとは比べ物にならない。
僕は侯爵にも目で見て分かってもらえる様に、集中して目の前に氷を作ろうとして。
意識を一点に集中して、魔力を込めると。
————パンッ!
「え“ぇ……っ」
な、何だぁ?!
なんか急に、ば、爆発したんだけど?!!
どうして?!
いつもと同じ様に氷を作ろうとしただけなのに?!
目の前の現象に、僕は茫然とするしかなかったが。
侯爵はようやく眉を動かし、厳しい目で爆発した宙を睨んだ。
「す、すみません!いつもは小さい氷が1、2個出来るくらいなのに……何か、調子が悪いのかな?」
製氷機どころか、魔術失敗しちゃったのかな?
混乱しながら僕が慌ててそう答えると。
侯爵の瞳が少し、潤んでいる様に見えて。
「……あ、あの、侯爵?」
訳が分からず、僕が恐る恐る声を掛けると。
侯爵はハッとなって、僕を見つめた。
……その紫色の瞳で見つめられると、何とも言えない気分になる。
サフィルのアメジストの瞳とはまた違った、淡く、でも美しい瞳。
でも、どうして……そんな苦しそうな表情で見つめて来るのか。
僕はただ見つめ返すしか出来なくて。
彼の瞳に吸い込まれる様に見つめるしかなかった。
が、しばらくすると。
「もう、終わりにしよう。」
何かに迷っていた気持ちにようやく心が定まったのか、侯爵はギュッと拳を握ると。
その固く閉じた手を開き、右手を僕に向けて。
「う…うあ”ぁ“ぁ”っ」
侯爵の手のひらから出て来た小さい稲光が、僕の胎にぶち当てられる。
痛いっ!と言うか、めちゃくちゃ痺れるんだが?!
「ちょ、ちょっと、侯爵!!何するんですかっ痛いんですけどっ!」
僕はビリビリとした痺れに耐えながら、必死に侯爵に呼び掛ける。
けれど、侯爵はそんな僕には一向に構わず、また表情のない顔で、僕に魔術での攻撃を与え続ける。
こんな強い力、直ぐに失神でもしそうなのに。
何故か気を飛ばす事も無く、ただただ痺れて地味に痛い。
何だ?!
侯爵は僕をいたぶりたいのか?
ロレンツォ殿下の時なら、まだ解る。
あの時は、彼の要求を受け入れなかった為に被った報復だったから。
しかし。
このヴァルトシュタイン侯爵からは、なんの要求も示されていないし、ここまで彼の不興を買う様な事をした覚えなんて、無いのに。
何で。
……やっぱり、駄目なのだろうか。
ロレンツォ殿下の母君を救えた事で、少しは未来に光明が見えた気がしたのに。
やはり、越えられないのか。
「……」
「凄い。……本当に、凄い!こんな精緻な魔術、初めて見た。巫子達のとはまた違って、何と言うか、巧い。いいなぁ……僕はせいぜい歩く製氷機だし。」
正にあれぞ、魔術って感じだ!
僕なんかのしょぼい氷の魔術なんかとは比べ物にならない。
僕は侯爵にも目で見て分かってもらえる様に、集中して目の前に氷を作ろうとして。
意識を一点に集中して、魔力を込めると。
————パンッ!
「え“ぇ……っ」
な、何だぁ?!
なんか急に、ば、爆発したんだけど?!!
どうして?!
いつもと同じ様に氷を作ろうとしただけなのに?!
目の前の現象に、僕は茫然とするしかなかったが。
侯爵はようやく眉を動かし、厳しい目で爆発した宙を睨んだ。
「す、すみません!いつもは小さい氷が1、2個出来るくらいなのに……何か、調子が悪いのかな?」
製氷機どころか、魔術失敗しちゃったのかな?
混乱しながら僕が慌ててそう答えると。
侯爵の瞳が少し、潤んでいる様に見えて。
「……あ、あの、侯爵?」
訳が分からず、僕が恐る恐る声を掛けると。
侯爵はハッとなって、僕を見つめた。
……その紫色の瞳で見つめられると、何とも言えない気分になる。
サフィルのアメジストの瞳とはまた違った、淡く、でも美しい瞳。
でも、どうして……そんな苦しそうな表情で見つめて来るのか。
僕はただ見つめ返すしか出来なくて。
彼の瞳に吸い込まれる様に見つめるしかなかった。
が、しばらくすると。
「もう、終わりにしよう。」
何かに迷っていた気持ちにようやく心が定まったのか、侯爵はギュッと拳を握ると。
その固く閉じた手を開き、右手を僕に向けて。
「う…うあ”ぁ“ぁ”っ」
侯爵の手のひらから出て来た小さい稲光が、僕の胎にぶち当てられる。
痛いっ!と言うか、めちゃくちゃ痺れるんだが?!
「ちょ、ちょっと、侯爵!!何するんですかっ痛いんですけどっ!」
僕はビリビリとした痺れに耐えながら、必死に侯爵に呼び掛ける。
けれど、侯爵はそんな僕には一向に構わず、また表情のない顔で、僕に魔術での攻撃を与え続ける。
こんな強い力、直ぐに失神でもしそうなのに。
何故か気を飛ばす事も無く、ただただ痺れて地味に痛い。
何だ?!
侯爵は僕をいたぶりたいのか?
ロレンツォ殿下の時なら、まだ解る。
あの時は、彼の要求を受け入れなかった為に被った報復だったから。
しかし。
このヴァルトシュタイン侯爵からは、なんの要求も示されていないし、ここまで彼の不興を買う様な事をした覚えなんて、無いのに。
何で。
……やっぱり、駄目なのだろうか。
ロレンツォ殿下の母君を救えた事で、少しは未来に光明が見えた気がしたのに。
やはり、越えられないのか。
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