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第3章
140話 対峙
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「シリル様っ!!」
1階の部屋を改めるまでもなく。
火の無い暖炉の側で、横たわっていたシリル様が目に飛び込んで来た。
卿と共に、すぐにでも駆け寄ろうとして。
扉の時の様に弾かれた。
まるで、シリル様の側に、見えない壁でもあるみたいに。
「うぐっ」
「っ」
「おい、大丈夫か?!……そこのお前、一体何をした?!」
床に叩きつける様に弾かれて、俺と卿が軽く呻くと、殿下が俺達から別の方へ視線を向けた。
その先へすぐさま目をやると、そこには目深に黒いフードを被った、如何にも怪しい奴が立っていた。
その側には、同じフードを被った者が剣を握り、前に出て来て。
「この者に一体何をした?!お前達だろう?攫ったのはっ」
殿下の怒声に、フードの二人は何も口を開かず。
剣を握った者は、口元をニッと歪めると、殿下に切りかかって来たのだった。
「ジーノ!」
「ここは俺が。殿下はクレイン卿をっ」
護衛騎士ジーノが殿下を庇う様に前へ踏み出し、同じく剣でフードの者に対峙した。
何度か組み合っているが、ジーノは決して押し負けてはいない。
俺はジーノに加勢すべきか、まずはシリル様の御身を守るべきか一瞬迷ったが。
シリル様は殿下と卿が何とかしようとして下さっているので、俺はもう一人のフードを被っている者の方へ斬りかかった。
しかし、奴を捉えたと思い、剣を振り下ろすと、またもや弾かれて吹っ飛ばされる。
何だ、この力は。
まさか……魔術?
そう考えついた途端、先程の扉やシリル様の前の見えない壁のカラクリにも納得がいった。
そうか、奴の仕業か。
なら、術師を叩けば魔術は消える筈。
俺は再び奴に斬りかかった。
今度はもう少し間合いを大きくして。
しかし、届かず剣先を弾かれる。
どうすれば。
束の間逡巡した俺だったが、その目の前を何かが通り過ぎた。
……近くにあったテーブルに備え付けられていた古びた椅子だ。
ヒュンとそれが通り過ぎると、またバチッと弾かれて床に落ちる。
だが、弾かれた椅子が床に転がるよりも早く、殿下がそのフードの者に斬りかかりに行っていた。
ソイツは椅子に気取られて反応が遅れたのか、殿下の剣を避けきれず、かっちりと身に纏っていたローブの端を軽く切り裂かれていた。
「チッ!」
術師本人には届かず、殿下は大きく舌打ちしたが、それは相手も同じだった。
ここまで追い詰められるとは思っていなかったのだろう。
ローブをギュッと握り締めて、身を固くしたのが分かった。
「シリル様っ!!」
殿下にローブを少し切り裂かれて、術の精度が下がったのか、見えない壁が取り払われ、卿がシリル様の体を抱えた。
強く呼び掛けているが返事が無い。
コートを身に着けているにも拘らず、体が冷えきってしまっておられる。
それが直接触れなくても、その血色の悪い顔色を見るに、そうだろうと思い至った。
一体、どうしてこんな真似を。
俺はカッとなってもう一度フードの術者らしき者に斬りかかる。
俺はそのフードの方を、めくり上げる様にして剣を振り上げ。
グッと力を込めた為、剣自体は届かなくとも、その剣の切っ先から生じた小さい風が更に小さい稲妻の様になって、そのフードを軽く切り裂いた。
1階の部屋を改めるまでもなく。
火の無い暖炉の側で、横たわっていたシリル様が目に飛び込んで来た。
卿と共に、すぐにでも駆け寄ろうとして。
扉の時の様に弾かれた。
まるで、シリル様の側に、見えない壁でもあるみたいに。
「うぐっ」
「っ」
「おい、大丈夫か?!……そこのお前、一体何をした?!」
床に叩きつける様に弾かれて、俺と卿が軽く呻くと、殿下が俺達から別の方へ視線を向けた。
その先へすぐさま目をやると、そこには目深に黒いフードを被った、如何にも怪しい奴が立っていた。
その側には、同じフードを被った者が剣を握り、前に出て来て。
「この者に一体何をした?!お前達だろう?攫ったのはっ」
殿下の怒声に、フードの二人は何も口を開かず。
剣を握った者は、口元をニッと歪めると、殿下に切りかかって来たのだった。
「ジーノ!」
「ここは俺が。殿下はクレイン卿をっ」
護衛騎士ジーノが殿下を庇う様に前へ踏み出し、同じく剣でフードの者に対峙した。
何度か組み合っているが、ジーノは決して押し負けてはいない。
俺はジーノに加勢すべきか、まずはシリル様の御身を守るべきか一瞬迷ったが。
シリル様は殿下と卿が何とかしようとして下さっているので、俺はもう一人のフードを被っている者の方へ斬りかかった。
しかし、奴を捉えたと思い、剣を振り下ろすと、またもや弾かれて吹っ飛ばされる。
何だ、この力は。
まさか……魔術?
そう考えついた途端、先程の扉やシリル様の前の見えない壁のカラクリにも納得がいった。
そうか、奴の仕業か。
なら、術師を叩けば魔術は消える筈。
俺は再び奴に斬りかかった。
今度はもう少し間合いを大きくして。
しかし、届かず剣先を弾かれる。
どうすれば。
束の間逡巡した俺だったが、その目の前を何かが通り過ぎた。
……近くにあったテーブルに備え付けられていた古びた椅子だ。
ヒュンとそれが通り過ぎると、またバチッと弾かれて床に落ちる。
だが、弾かれた椅子が床に転がるよりも早く、殿下がそのフードの者に斬りかかりに行っていた。
ソイツは椅子に気取られて反応が遅れたのか、殿下の剣を避けきれず、かっちりと身に纏っていたローブの端を軽く切り裂かれていた。
「チッ!」
術師本人には届かず、殿下は大きく舌打ちしたが、それは相手も同じだった。
ここまで追い詰められるとは思っていなかったのだろう。
ローブをギュッと握り締めて、身を固くしたのが分かった。
「シリル様っ!!」
殿下にローブを少し切り裂かれて、術の精度が下がったのか、見えない壁が取り払われ、卿がシリル様の体を抱えた。
強く呼び掛けているが返事が無い。
コートを身に着けているにも拘らず、体が冷えきってしまっておられる。
それが直接触れなくても、その血色の悪い顔色を見るに、そうだろうと思い至った。
一体、どうしてこんな真似を。
俺はカッとなってもう一度フードの術者らしき者に斬りかかる。
俺はそのフードの方を、めくり上げる様にして剣を振り上げ。
グッと力を込めた為、剣自体は届かなくとも、その剣の切っ先から生じた小さい風が更に小さい稲妻の様になって、そのフードを軽く切り裂いた。
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