112 / 369
第2章
112話 再度
しおりを挟む
翌朝。
部屋で食事を提供してもらい、軽く朝食を済ますと、迎えに来てくれた第2王子と一緒に、約束通り王太子の元へ案内してもらった。
「兄上、失礼します。救世の巫子様方をお連れしましたよ。」
第2王子が穏やかな声音でそう告げると、中から王太子が返事をくれ、僕らは王太子の部屋の中へと促された。
第2王子が事情を説明してくれ、王太子はすぐに了承して下さり。
早速カレンはカイトと再度、救済を施してみせた。
エウリルスの第1王女に行った時の様に。
……しかし。
「キャッ!!」
「うわっ!」
カレンは軽く悲鳴を上げ、カイトも驚いた声を出した。
僕は直ぐさま二人の傍へ駆け寄る。
「どうした?!大丈夫か?」
尋ねる僕に、二人は心底びっくりしていて。
「何で?今までこんなの感じた事なかったのに。」
「は…弾かれた。」
……弾かれた?
二人の力が?
今までそんな事は一度も無かったというのに。
茫然としている巫子達に、王太子がおもむろに口を開いた。
「…貴女方でも駄目でしたか。」
「私達でも……ってどういう事です?」
王太子の言葉に、カレンが怪訝な顔をする。
僕らが見つめる中、王太子が第2王子と目を合わすが。
「今まで、国内の治療を得意とする呪(まじな)い師などにも診てもらったのですが、効果はありませんでした。それで、エウリルス王国に留学中のカミルから、おとぎ話の救世の巫子様が二人も降臨され、尚且つお声がけ下さったと伺い……遥々お越し頂いたのですが、わざわざ遠い道のりをおいで下さったのに…申し訳ないです。」
王太子は救済の恩寵を受け付けられない自身の所為だと、残念がられる。
その様子に、第2王子も気落ちして項垂れてしまわれた。
「私達こそ……力及ばず…ごめんなさい。」
「そんな、巫女様が謝られる事などございません。これは私自身の問題ですから。」
王太子もかなり落胆されているだろうが、それでも巫女達を気遣って下さった。
重たい沈黙が室内を支配したが、それを破ったのは一人の来訪者だった。
「…失礼致します、殿下。」
入室して来たのは、長い銀髪を後ろで束ね、淡い紫色の瞳をした、すらりとした体格の男性だった。
彼は、僕らが王太子と一緒に居るのを目にすると、一瞬眉をピクリと動かしたが、すぐ柔和な笑みを浮かべる。
彼は王太子と第2王子に礼をすると、スッと王太子の後ろに控えた。
まるで其処が自身の指定席の様に。
「あぁ、紹介致します。この者は私の側近のヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵です。」
王太子はそう言い、彼の方を見やった。
「ご紹介にあずかりました、ベルナルト王太子殿下にお仕えしております、ヒブリス・ヴァルトシュタインと申します。どうぞお見知りおきを。」
彼はニッコリと微笑み、僕らと握手を交わした。
まずはカレン、カイト、そして、僕、テオも。
カレンとカイトはやや気後れしながらも、握手を交わし自己紹介していた。
僕は普通に平常心で名乗り、手を伸ばしたが。
握手を交わした途端。
手のひらに何か静電気でも走ったように、ピリッとした痺れを感じた。
え。と、目を見開いたが、相対する彼には特に表情の変化はない。
空気が乾燥していたのかな?
その程度に考えたが。
彼は、僕にも品良く柔和な笑みを向けてくれた。
その後、ヴァルトシュタイン侯爵は、王太子と一言二言話すと、この部屋を出て行ってしまった。
その後王太子は、自分の事は仕方ないが、此処に来るまでに王国内の民の救済を行って下さり、ありがとうございました。と巫子達に感謝の意を述べておられた。
第2王子も再度感謝を述べられ。
僕らは王太子の部屋を後にした。
部屋で食事を提供してもらい、軽く朝食を済ますと、迎えに来てくれた第2王子と一緒に、約束通り王太子の元へ案内してもらった。
「兄上、失礼します。救世の巫子様方をお連れしましたよ。」
第2王子が穏やかな声音でそう告げると、中から王太子が返事をくれ、僕らは王太子の部屋の中へと促された。
第2王子が事情を説明してくれ、王太子はすぐに了承して下さり。
早速カレンはカイトと再度、救済を施してみせた。
エウリルスの第1王女に行った時の様に。
……しかし。
「キャッ!!」
「うわっ!」
カレンは軽く悲鳴を上げ、カイトも驚いた声を出した。
僕は直ぐさま二人の傍へ駆け寄る。
「どうした?!大丈夫か?」
尋ねる僕に、二人は心底びっくりしていて。
「何で?今までこんなの感じた事なかったのに。」
「は…弾かれた。」
……弾かれた?
二人の力が?
今までそんな事は一度も無かったというのに。
茫然としている巫子達に、王太子がおもむろに口を開いた。
「…貴女方でも駄目でしたか。」
「私達でも……ってどういう事です?」
王太子の言葉に、カレンが怪訝な顔をする。
僕らが見つめる中、王太子が第2王子と目を合わすが。
「今まで、国内の治療を得意とする呪(まじな)い師などにも診てもらったのですが、効果はありませんでした。それで、エウリルス王国に留学中のカミルから、おとぎ話の救世の巫子様が二人も降臨され、尚且つお声がけ下さったと伺い……遥々お越し頂いたのですが、わざわざ遠い道のりをおいで下さったのに…申し訳ないです。」
王太子は救済の恩寵を受け付けられない自身の所為だと、残念がられる。
その様子に、第2王子も気落ちして項垂れてしまわれた。
「私達こそ……力及ばず…ごめんなさい。」
「そんな、巫女様が謝られる事などございません。これは私自身の問題ですから。」
王太子もかなり落胆されているだろうが、それでも巫女達を気遣って下さった。
重たい沈黙が室内を支配したが、それを破ったのは一人の来訪者だった。
「…失礼致します、殿下。」
入室して来たのは、長い銀髪を後ろで束ね、淡い紫色の瞳をした、すらりとした体格の男性だった。
彼は、僕らが王太子と一緒に居るのを目にすると、一瞬眉をピクリと動かしたが、すぐ柔和な笑みを浮かべる。
彼は王太子と第2王子に礼をすると、スッと王太子の後ろに控えた。
まるで其処が自身の指定席の様に。
「あぁ、紹介致します。この者は私の側近のヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵です。」
王太子はそう言い、彼の方を見やった。
「ご紹介にあずかりました、ベルナルト王太子殿下にお仕えしております、ヒブリス・ヴァルトシュタインと申します。どうぞお見知りおきを。」
彼はニッコリと微笑み、僕らと握手を交わした。
まずはカレン、カイト、そして、僕、テオも。
カレンとカイトはやや気後れしながらも、握手を交わし自己紹介していた。
僕は普通に平常心で名乗り、手を伸ばしたが。
握手を交わした途端。
手のひらに何か静電気でも走ったように、ピリッとした痺れを感じた。
え。と、目を見開いたが、相対する彼には特に表情の変化はない。
空気が乾燥していたのかな?
その程度に考えたが。
彼は、僕にも品良く柔和な笑みを向けてくれた。
その後、ヴァルトシュタイン侯爵は、王太子と一言二言話すと、この部屋を出て行ってしまった。
その後王太子は、自分の事は仕方ないが、此処に来るまでに王国内の民の救済を行って下さり、ありがとうございました。と巫子達に感謝の意を述べておられた。
第2王子も再度感謝を述べられ。
僕らは王太子の部屋を後にした。
81
お気に入りに追加
1,620
あなたにおすすめの小説


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。



美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み


春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる