全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

112話 再度

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翌朝。
部屋で食事を提供してもらい、軽く朝食を済ますと、迎えに来てくれた第2王子と一緒に、約束通り王太子の元へ案内してもらった。

「兄上、失礼します。救世の巫子様方をお連れしましたよ。」

第2王子が穏やかな声音でそう告げると、中から王太子が返事をくれ、僕らは王太子の部屋の中へと促された。
第2王子が事情を説明してくれ、王太子はすぐに了承して下さり。
早速カレンはカイトと再度、救済を施してみせた。
エウリルスの第1王女に行った時の様に。
……しかし。

「キャッ!!」
「うわっ!」

カレンは軽く悲鳴を上げ、カイトも驚いた声を出した。
僕は直ぐさま二人の傍へ駆け寄る。

「どうした?!大丈夫か?」

尋ねる僕に、二人は心底びっくりしていて。

「何で?今までこんなの感じた事なかったのに。」
「は…弾かれた。」

……弾かれた?
二人の力が?

今までそんな事は一度も無かったというのに。
茫然としている巫子達に、王太子がおもむろに口を開いた。

「…貴女方でも駄目でしたか。」
「私達でも……ってどういう事です?」

王太子の言葉に、カレンが怪訝な顔をする。
僕らが見つめる中、王太子が第2王子と目を合わすが。

「今まで、国内の治療を得意とする呪(まじな)い師などにも診てもらったのですが、効果はありませんでした。それで、エウリルス王国に留学中のカミルから、おとぎ話の救世の巫子様が二人も降臨され、尚且つお声がけ下さったと伺い……遥々お越し頂いたのですが、わざわざ遠い道のりをおいで下さったのに…申し訳ないです。」

王太子は救済の恩寵を受け付けられない自身の所為だと、残念がられる。
その様子に、第2王子も気落ちして項垂れてしまわれた。

「私達こそ……力及ばず…ごめんなさい。」
「そんな、巫女様が謝られる事などございません。これは私自身の問題ですから。」

王太子もかなり落胆されているだろうが、それでも巫女達を気遣って下さった。
重たい沈黙が室内を支配したが、それを破ったのは一人の来訪者だった。

「…失礼致します、殿下。」

入室して来たのは、長い銀髪を後ろで束ね、淡い紫色の瞳をした、すらりとした体格の男性だった。
彼は、僕らが王太子と一緒に居るのを目にすると、一瞬眉をピクリと動かしたが、すぐ柔和な笑みを浮かべる。
彼は王太子と第2王子に礼をすると、スッと王太子の後ろに控えた。
まるで其処が自身の指定席の様に。

「あぁ、紹介致します。この者は私の側近のヒブリス・ヴァルトシュタイン侯爵です。」

王太子はそう言い、彼の方を見やった。

「ご紹介にあずかりました、ベルナルト王太子殿下にお仕えしております、ヒブリス・ヴァルトシュタインと申します。どうぞお見知りおきを。」

彼はニッコリと微笑み、僕らと握手を交わした。
まずはカレン、カイト、そして、僕、テオも。

カレンとカイトはやや気後れしながらも、握手を交わし自己紹介していた。
僕は普通に平常心で名乗り、手を伸ばしたが。
握手を交わした途端。
手のひらに何か静電気でも走ったように、ピリッとした痺れを感じた。

え。と、目を見開いたが、相対する彼には特に表情の変化はない。
空気が乾燥していたのかな?
その程度に考えたが。
彼は、僕にも品良く柔和な笑みを向けてくれた。

その後、ヴァルトシュタイン侯爵は、王太子と一言二言話すと、この部屋を出て行ってしまった。

その後王太子は、自分の事は仕方ないが、此処に来るまでに王国内の民の救済を行って下さり、ありがとうございました。と巫子達に感謝の意を述べておられた。
第2王子も再度感謝を述べられ。

僕らは王太子の部屋を後にした。
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