全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

111話 効かない救済

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また歓迎パーティーが開かれそうになった為、カレンとカイトはわざとらしく表情を作り、長旅で疲れている為と理由を述べ、パーティーは丁重にお断りしていた。
僕も加勢してやり、アデリートで丸1日倒れてしまった事を説明すると、流石に周囲も納得し、軽い晩餐会だけで済ませられた。

食事を終え、提供された部屋へ戻ろうとして、第2王子が声を掛けてくれた。

「食事はお口に合いましたでしょうか?」
「はい。美味しかったですよ。ご馳走様でした。」
「大したおもてなしも出来ず、申し訳ないです。」
「いいえ、そんな事ないです!むしろ、気疲れしてしまうパーティーよりも内々のお食事会の方が、私達にはとっても有り難かったですっ」

エウリルスやアデリートの様に大国じゃないから……と気落ちして見せる殿下に、むしろカレンはこの方が嬉しいです!と食い気味に言い。
カイトも大きく頷いて同調した。

そうですか…。と、殿下はまだ残念がっていたが。
カレンは直ぐに話題を変えた。

「それよりもカミル殿下、明日、改めて王太子殿下に会わせて頂いても良いですか?」
「それは勿論です。兄上も喜ばれるでしょう。」

そう言って、殿下は顔をほころばせた。
その表情を見て、カレンは少し顔を曇らせる。

無理もない。
救済の効果が感じられなかった事なんて、今までで恐らく初めての事だろうから。

殿下と別れ、部屋へと戻った僕達は、しばらく沈黙していた。
おもむろに口を開いたのはカレンで。

「……何でだろ。ベルナルト王太子にだけ、手ごたえが無かった。」
「やっぱ、そう?他の人達は確実に効いてたのに、ベルナルト殿下には変化を感じなかったよね。」

カレンとカイトは互いに感覚を確認し合っていた。

「……それに、貴族達の中から、鋭い視線を感じた。僕らを歓迎してない者がいる。」
「すみません。直ぐに分からなくなってしまって、誰かまでは特定できませんでした。けど、敵意を感じたのは確かです。」

僕とテオの報告に、巫子達は息を呑んだ。

「…えっ。敵認定されてる?」
「そんな歓迎されないなんて、シリルん家の門番以来じゃない?」

カレンはうっと呻いたが、カイトは呑気に冗談を言っている。

「市井の者達はまだしも、あまり貴族連中には関わらない方が良いかもしれない。カミル殿下はまだ今年学院に入学されて、初めての夏季休暇でもある。自身の久々の帰郷だけでも慣れないだろうに、僕らを迎える準備もしてくれていたんだ。これ以上あまり負担は追わせられない。」
「そうだね。あんまり長居しない方が良いかもしれないね。」

僕の意見に、カイトも同意してくれる。

「ただ、明日、もう一度王太子殿下へ救済をさせて。直接やれば効くと思うし。」
「あぁ。ただ、あまり無理はしない様にしてくれ。」
「分かったわ。」

カレンは真面目な顔で頷いてくれた。
今夜は早めに休む事にし、皆、明日に備えた。
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