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第2章

110話 何故

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しばらくして、玉座のある城の大広間へと呼ばれた。
フローレンシア王の歓迎の言葉を賜った後、早速カレンはカイトと共に、前に躍り出る。

「我々を此処フローレンシア王国にご招待下さり、誠にありがとうございます。」
「フローレンシア王国の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。」

二人はそう言うと、また救済の力を発動させる。
するとまた、この場に集まった貴族達や周囲に立つ兵士達の傷と病を瞬く間に癒していった。
そして、王の隣に立つ王太子の方を見やる。
第2王子や王と同じ、黄色味が強めのブロンドの髪に、第2王子の茶目と違い、王太子は王と同じモスグリーンの瞳をしていた。

第2王子によると、王太子は持病があり、長年患っておられるとの事。
その兄王子の治癒が、第2王子の何よりの願いだった。
その為、僕は真っ先に王太子の方を見上げたが。

周囲が皆一様に救済の恩寵に感激してざわついているのに、当の王太子は、特に大きく反応が見受けられない。
皆のざわつく様子に目を見開いていたが、アデリートのべルティーナ第4側妃の様な自身の変化を感じておられる様な様子が見受けられなかった。

「……何故だ。」

僕は愕然として呟くと。
後ろに付いていたテオも、小声で僕に囁いた。

「ベルナルト王太子様には救済の効果があまり見受けられませんね。」
「…あぁ。」

それでも、フローレンシアの王は喜ばれ、救世の巫子達へ感謝の言葉を贈られたが。
カレンとカイトも、王の言葉を恭しく受け取りながらも、王太子の反応を訝しんでいた。

その時、貴族達の集まる集団の中から、鋭い視線を背中に感じて。
皆、とても喜んでいる中の異様な視線に、僕はバッと振り返るが、気配は直ぐに消え去ってしまい。

「…テオ」
「はい。シリル様も感じられましたか。」
「あぁ。僕らの来訪を歓迎してない者がいる。」

僕とテオは小声のまま囁き合う。
周囲は喜びに満ちており、その中に紛れてしまったが。
確かに感じた……敵意の様な視線を。
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