全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

98話 アデリート滞在最終夜

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……そんな一幕もありながら。
此処、アデリート王国滞在の最後の夜。
僕らは再び王宮へ戻り、再度、アデリート王達から感謝の意を述べられた。
また感謝のパーティーなどを開かれそうな予感がした巫子達は、それはもう丁重にお断りをしていた。
なので、王の妃と子供達が一堂に揃った晩餐会に留まった。

失脚してしまった第2王子はやっぱりその場に居ないが。
救済で回っていた間に、王太子の仲介でお会い出来たので、少し残念だがまぁ良かった。
第2王子は思いの外お元気で、好みの美術絵画について熱く語って下さった。
エウリルスの絵画もお好きな様で、いつか見に行ってみたい。とお話になっていたのが印象的だったな。

此処に来る前は、本当に来られるのか。
ちゃんとロレンツォ殿下の母君を救えるのか。
どうなるのか、本当に分からなかったが。
無事に達成できて、本当に良かったな。

部屋へ戻った僕らは、初めてこの城へ来た時と同じ様に、応接間のソファーに腰を下ろして感慨に耽っていた。

「エウリルスに戻るまで、気を抜いちゃいけないけど……でも、上手くいって良かったわね。」
「ね!アデリートの人達にも喜んでもらえて良かった。」
「あぁ。最初はどうなる事かと思ったが、此処まで来てくれて……やり遂げてくれて、本当にありがとう。」

僕は、此処まで共に来てくれたカイトとカレン、テオに、礼を述べた。

「いいのよ!これは私達の身の安全の為でもあったんだしね。」
「そうそ。初日はちょっと無理しちゃったけど、でもやって良かったって思ってるよ。」

僕が気を遣わない様に、自分の為だからって言ってくれる巫子達。
二人は本当に優しい笑顔で答えてくれて。

すると、カレンが思い出したように続けた。

「…そうだ!こっちこそ、ありがとね。2日目寝込んでた日、ずっと此処に居てくれてたでしょ?夜には部屋に戻ったと思ってたのに、朝起きたらまだ居てくれてたみたいだから驚いたわ。」

……あ。と、カイトはプッと噴き出した。

「シリルってば床で寝てたでしょ?夜中、たまたま覗きに来たら…あの寝相の良かったシリルがソファーから落ちてたからビックリしちゃったよ~」
「そうですよ、シリル様。本当にお怪我は無かったんですか?」

あの日。
夜中、床で眠りこけていた僕を見つけたカイトは、僕をソファーに戻そうとして、気付いたテオが戻してくれたらしい。
だから、朝起きた時ソファーに居たのか。
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