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第2章
95話 ベルティーナ妃
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「この度は、エウリルスから遠路はるばる……本当にありがとうございました。」
王宮の奥の小さな一室に通された僕達は、その部屋の真ん中にあるテーブル席に着いている女性が殿下の母君だと紹介されて。
控えめに微笑む第4側妃は、ロレンツォ殿下とは全く違う雰囲気で。
でも、その母親に寄り添う殿下の眼差しは、母君とよく似ていた。
そして、その隣に座る可愛らしい女性に目をやると。
「私からも是非お礼を言わせて下さいませ。お義母様をこんなにも元気にして下さり、ありがとうございました。」
そう言って頭を下げた後、その娘はまだ幼さの残る笑顔で微笑んだ。
僕らが彼女の笑顔に和みつつも、戸惑いの色を見せると。
「あ、失礼致しました。ご挨拶がまだでしたね。私はロレンツォ殿下の婚約者のソフィア・アルベリーニです。兄のサフィルが大変お世話になりました。」
「貴女が……アルベリーニ卿の妹君…」
僕は思わず呟いた。
なるほど、サフィルが可愛がっているだろう事が容易に想像出来る。
此処まで一緒に行動を共にする事で知ったが、普段は表情の機微を読み取り辛くポーカーフェイスの彼と違い、妹君のソフィア嬢は素直で、感情豊かに笑う笑顔が素敵な娘だった。
殿下の後隣りに控えているサフィルを見やると、彼女を愛おしげにホッとした様子で見つめていて。
「……」
本当に、心配していたんだな。
よかった。
彼の安心した表情を目にして、僕も目元を緩めた。
「息子から……ロレンツォから聞きました。最初は巫子様方を無理矢理連れて来ようとしたとか。この子の母として、本当に申し訳ございませんでした。全ては私の為だったとはいえ……。本当は大変にご不快に思われたでしょうに。こうしてお越し下さって……私の病を癒して下さった。感謝してもしきれません。」
「殿下のなさろうとした事は、確かに良くない方法でした。でも、殿下や側妃様の事を知って……力になろうと決めたのです。ですから、これからもし誰かに嫌な事を言われても、『救世の巫子をこの国へ呼べたのは誰のおかげ?』って大きい顔して下さいね!」
ロレンツォ殿下の母君、ベルティーナ第4側妃から改めて感謝と謝罪を述べられて。
巫女であるカレンは、動機を少し誤魔化しつつも、笑って許したのだった。
「今後、皆様に何かございましたら、私達も可能な限りご協力する事をお誓い致します。」
ベルティーナ様の言葉に、殿下が強く頷いていた。
それから、少しの時間だが、僕らはベルティーナ様の歓迎を受け、実に和やかな時間を過ごした。
心配していたサフィルの妹君も実に明るく元気な様子だったし、殿下からの扱いも悪くない様だ。
ただ単に久々の邂逅を喜び合っている恋人の其れにしか見えなかった。
その様子を見ていたサフィルは、何とも言えない表情をしていたが。
……殿下の態度を対外向けのただの演技だと思っているのだろうか?
そうかもしれないけど。
少なくとも貴方の妹君は、とても自然に接している様だから、大丈夫なんじゃないかな?
彼らの様子を見ながら、僕はフッと笑みを零した。
王宮の奥の小さな一室に通された僕達は、その部屋の真ん中にあるテーブル席に着いている女性が殿下の母君だと紹介されて。
控えめに微笑む第4側妃は、ロレンツォ殿下とは全く違う雰囲気で。
でも、その母親に寄り添う殿下の眼差しは、母君とよく似ていた。
そして、その隣に座る可愛らしい女性に目をやると。
「私からも是非お礼を言わせて下さいませ。お義母様をこんなにも元気にして下さり、ありがとうございました。」
そう言って頭を下げた後、その娘はまだ幼さの残る笑顔で微笑んだ。
僕らが彼女の笑顔に和みつつも、戸惑いの色を見せると。
「あ、失礼致しました。ご挨拶がまだでしたね。私はロレンツォ殿下の婚約者のソフィア・アルベリーニです。兄のサフィルが大変お世話になりました。」
「貴女が……アルベリーニ卿の妹君…」
僕は思わず呟いた。
なるほど、サフィルが可愛がっているだろう事が容易に想像出来る。
此処まで一緒に行動を共にする事で知ったが、普段は表情の機微を読み取り辛くポーカーフェイスの彼と違い、妹君のソフィア嬢は素直で、感情豊かに笑う笑顔が素敵な娘だった。
殿下の後隣りに控えているサフィルを見やると、彼女を愛おしげにホッとした様子で見つめていて。
「……」
本当に、心配していたんだな。
よかった。
彼の安心した表情を目にして、僕も目元を緩めた。
「息子から……ロレンツォから聞きました。最初は巫子様方を無理矢理連れて来ようとしたとか。この子の母として、本当に申し訳ございませんでした。全ては私の為だったとはいえ……。本当は大変にご不快に思われたでしょうに。こうしてお越し下さって……私の病を癒して下さった。感謝してもしきれません。」
「殿下のなさろうとした事は、確かに良くない方法でした。でも、殿下や側妃様の事を知って……力になろうと決めたのです。ですから、これからもし誰かに嫌な事を言われても、『救世の巫子をこの国へ呼べたのは誰のおかげ?』って大きい顔して下さいね!」
ロレンツォ殿下の母君、ベルティーナ第4側妃から改めて感謝と謝罪を述べられて。
巫女であるカレンは、動機を少し誤魔化しつつも、笑って許したのだった。
「今後、皆様に何かございましたら、私達も可能な限りご協力する事をお誓い致します。」
ベルティーナ様の言葉に、殿下が強く頷いていた。
それから、少しの時間だが、僕らはベルティーナ様の歓迎を受け、実に和やかな時間を過ごした。
心配していたサフィルの妹君も実に明るく元気な様子だったし、殿下からの扱いも悪くない様だ。
ただ単に久々の邂逅を喜び合っている恋人の其れにしか見えなかった。
その様子を見ていたサフィルは、何とも言えない表情をしていたが。
……殿下の態度を対外向けのただの演技だと思っているのだろうか?
そうかもしれないけど。
少なくとも貴方の妹君は、とても自然に接している様だから、大丈夫なんじゃないかな?
彼らの様子を見ながら、僕はフッと笑みを零した。
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