全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

91話 何なんだ

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「……シリル様。」
「わ?!……な、なんだテオ!ビックリしたぁ…っ」

じとぉっとした目で寝室の扉の隙間から僕を見て来るテオに、僕は心底驚いた。
本当に何なんだよ、もう。

「……先程は…何も無かったですか?」
「何もって?カレンは、ちゃんと部屋へ運んでもらったよ?」
「そうじゃなくて……シリル様が、です。」
「何だよ。さ…あ、アルベリーニ卿に部屋まで送ってもらっただけだけど?」

え、もう本当に、何なんだよ、テオの奴。
めちゃくちゃ訝しい目つきで見て来るんだけど。

「本当に、送ってもらっただけですよね?」
「それ以外に何があるんだよ。」
「…………いえ、別に。」

ものすごーく何か言いたげにしているんだが。
言わずに、テオは扉で繋がっている、奥の自身の寝室の方へ戻って行った。

本当にもう、何なんだ!

なんて、心の中で叫んだが。
色々張っていた緊張の糸が、僕も切れてしまったのか。
その後すぐに泥の様に深い眠りについた。


————翌朝。

僕はテオの声掛けで目を覚ました。
何の夢も見ずに寝てたなぁ。
他国の…しかも王城で、こんなにもぐっすり眠れるとは、僕も随分図太くなれたもんだ。

身支度を済ませて、カイトの部屋へと行ったのだが。

「…まだ寝かせてぇ……。多分今日一日…無理ぃ……」

カイトはベッドの枕に顔を埋めたまま、片手をひらひらと動かしてそう言うと、力なくその手を下ろし、またぐぅぐぅと眠りについた。

扉を隔てた向こうで眠るカレンにも、扉越しに声を掛けたが、同じく、今日は寝てる…という返事だけが、なんとか返って来ただけだった。

眠れば回復出来ると、以前言っていたので、一応大丈夫だとは思うが。
それでも、此処は他国でもあるし、今日は巫子達に付く為に、カイトとカレンの部屋の応接間で一日を静かに過ごす事にした。

思いの外、力を使い過ぎたのだろう。
彼らには無理をさせてしまったな。
僕は、昨日の出来事をぼんやりと思い出していた————…。
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