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第2章
88話 体力の限界
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その後、王は大変喜ばれ、大々的な歓迎パーティーを催されたが。
当の主役である巫子達は、またげんなりした様子で笑顔が引き攣っていた。
次々に声を掛けられ感激されるカイトとカレンは、その度に魂が抜けていっている様に見えて。
「……大丈夫か?」
「大丈夫に見える?」
「いいや。」
「早く寝たい。今すぐ寝たい。マジでもう無理。」
そんな事をぼやいていたが、解放されたのは、それから数時間後の事だった…。
巫子達は力を使って疲れた様ですので……。と言い、とても…とっても名残惜しまれながら会場を後にした途端、その場に倒れ込んだ。
「もうダメ……」
「左に同じくぅ……」
「?!お、おい、大丈夫か?!」
「お気を確かに!」
二人の後ろを歩いていた僕は、ふらりと倒れ込むカレンに直ぐに手を伸ばしたので、彼女は床に顔を激突させずに済んだが。
その直後に倒れたカイトの方は反応がワンテンポ遅れてしまい。
僕の後ろに居たテオが、何とか支えてくれた。
テオは、すぐさまカイトを抱えたが、カイトは全く反応せず眠りこけている。
僕が腕を掴んだカレンもそうだ。
全く反応を見せない。
残念ながら、騎士のテオと違って、僕はそんなに力が無いんだ。
ましてや意識のない人間のその重さたるや。
まだ華奢なカレンだったから支えられたが、これが自分よりも体格があるカイトだったら、一緒になって床に転がってしまっただろう。
「……ごめん、テオ。先にカイトを部屋へ寝かしつけて来てくれ。で、うちの護衛騎士を誰か寄越してくれないか?」
「ですが、シリル様を置いて行く訳には……あ。」
テオが不意に顔を向けたのは、先程出て来た扉の方で。
僕も振り向くと、そこには会場から出て来たサフィルが居た。
僕達を目にすると、彼は直ぐにこちらへ駆け寄って来た。
「どうされました?!大丈夫ですか?!」
テオと僕の腕には、先程まで笑顔を振りまいていた救世の巫子達の気を失った姿があり。
サフィルは酷く驚いた顔を見せたが。
「すみません、アルベリーニ卿。シリル様をお支えして頂けないでしょうか?」
「あ、すみません、気付かずっ」
卿からは陰になってしまっていた、蹲っている僕を目にすると、卿は直ぐに手を伸ばしてくれ、カレンを横抱きにした。
お姫様の様に抱きとめられているが、当の本人は目覚めない。
「ランベルト卿……クレイン公子様と巫女様は私がお部屋までお送り致しますから、先に其方の巫子様をお連れになって頂いても宜しいでしょうか?」
サフィルは、テオに、先にカイトを連れて戻り、部屋の寝支度をしておく様、部屋の者に伝えて欲しいと言って。
テオは、心配そうに僕を見やったが、僕は大丈夫だと告げると。
一瞬、じーっと見つめて来た後、わかりました。と言い、先に戻って行った。
そのテオを見送り、僕はサフィルの方を見やった。
「すみません、巫女をお願いしてしまって。」
「いいえ。随分軽くていらっしゃいますね。……全くお気付きになられませんが、大丈夫でしょうか?」
「きっと、救済の力を使い過ぎたのでしょう。その後のパーティーでずっと気を張っていた筈ですので、緊張の糸が切れたのだと思います。」
似た様な事が前にもあったので、しっかり休めば大丈夫だと言うと、抱えたカレンの顔を見つめたサフィルは、ホッとした顔をした。
僕は、その横顔を何の気なしに見つめていて。
その顔が、急に僕の方を向き、油断していた僕はつい、ビクッと肩を揺らしてしまった。
「あ、すみません、驚かせてしまって。」
「い、いえ。僕こそ、ぼーっとしてました。」
アハハ、と誤魔化した笑いをし、彼から意識的に視線を逸らす。
当の主役である巫子達は、またげんなりした様子で笑顔が引き攣っていた。
次々に声を掛けられ感激されるカイトとカレンは、その度に魂が抜けていっている様に見えて。
「……大丈夫か?」
「大丈夫に見える?」
「いいや。」
「早く寝たい。今すぐ寝たい。マジでもう無理。」
そんな事をぼやいていたが、解放されたのは、それから数時間後の事だった…。
巫子達は力を使って疲れた様ですので……。と言い、とても…とっても名残惜しまれながら会場を後にした途端、その場に倒れ込んだ。
「もうダメ……」
「左に同じくぅ……」
「?!お、おい、大丈夫か?!」
「お気を確かに!」
二人の後ろを歩いていた僕は、ふらりと倒れ込むカレンに直ぐに手を伸ばしたので、彼女は床に顔を激突させずに済んだが。
その直後に倒れたカイトの方は反応がワンテンポ遅れてしまい。
僕の後ろに居たテオが、何とか支えてくれた。
テオは、すぐさまカイトを抱えたが、カイトは全く反応せず眠りこけている。
僕が腕を掴んだカレンもそうだ。
全く反応を見せない。
残念ながら、騎士のテオと違って、僕はそんなに力が無いんだ。
ましてや意識のない人間のその重さたるや。
まだ華奢なカレンだったから支えられたが、これが自分よりも体格があるカイトだったら、一緒になって床に転がってしまっただろう。
「……ごめん、テオ。先にカイトを部屋へ寝かしつけて来てくれ。で、うちの護衛騎士を誰か寄越してくれないか?」
「ですが、シリル様を置いて行く訳には……あ。」
テオが不意に顔を向けたのは、先程出て来た扉の方で。
僕も振り向くと、そこには会場から出て来たサフィルが居た。
僕達を目にすると、彼は直ぐにこちらへ駆け寄って来た。
「どうされました?!大丈夫ですか?!」
テオと僕の腕には、先程まで笑顔を振りまいていた救世の巫子達の気を失った姿があり。
サフィルは酷く驚いた顔を見せたが。
「すみません、アルベリーニ卿。シリル様をお支えして頂けないでしょうか?」
「あ、すみません、気付かずっ」
卿からは陰になってしまっていた、蹲っている僕を目にすると、卿は直ぐに手を伸ばしてくれ、カレンを横抱きにした。
お姫様の様に抱きとめられているが、当の本人は目覚めない。
「ランベルト卿……クレイン公子様と巫女様は私がお部屋までお送り致しますから、先に其方の巫子様をお連れになって頂いても宜しいでしょうか?」
サフィルは、テオに、先にカイトを連れて戻り、部屋の寝支度をしておく様、部屋の者に伝えて欲しいと言って。
テオは、心配そうに僕を見やったが、僕は大丈夫だと告げると。
一瞬、じーっと見つめて来た後、わかりました。と言い、先に戻って行った。
そのテオを見送り、僕はサフィルの方を見やった。
「すみません、巫女をお願いしてしまって。」
「いいえ。随分軽くていらっしゃいますね。……全くお気付きになられませんが、大丈夫でしょうか?」
「きっと、救済の力を使い過ぎたのでしょう。その後のパーティーでずっと気を張っていた筈ですので、緊張の糸が切れたのだと思います。」
似た様な事が前にもあったので、しっかり休めば大丈夫だと言うと、抱えたカレンの顔を見つめたサフィルは、ホッとした顔をした。
僕は、その横顔を何の気なしに見つめていて。
その顔が、急に僕の方を向き、油断していた僕はつい、ビクッと肩を揺らしてしまった。
「あ、すみません、驚かせてしまって。」
「い、いえ。僕こそ、ぼーっとしてました。」
アハハ、と誤魔化した笑いをし、彼から意識的に視線を逸らす。
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