全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

80話 殿下の迷い

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そうして、ようやく殿下達はその場から立ち上がった。
美しい、大きな部屋だ。
備えつけられているソファーに、僕とカレン、カイトが座り。
テオが僕のすぐ後ろに付く。
対面に、ロレンツォ殿下とサフィルが腰を下ろし、ジーノが殿下の後ろに付いた。

「それで殿下、どう致します?私達はどちらでも構いません。アデリート王への謁見の前でも、後でも。殿下にとって、どちらの方がご都合宜しいですか?」

率先して尋ねるカレンに、殿下は難しい顔をしていた。
カレン達が実際来訪してくれたのはいいが、どのタイミングで母君を救済するのが適切か、未だに悩んでいる様で。
だから、僕はおもむろに口を開いた。

「……殿下、確実にお母上を治癒なさりたいのなら、謁見の前でしょう。救世の巫女をこのアデリートに招聘出来たのは、殿下の手柄である事は明らかです。なので、真っ先に実母の治癒を巫子達に依頼するのは何も不自然な事ではありません。……ですが。」
「王の許可も無く勝手に私利私欲で巫子達に救済をさせた。と、要らぬ因縁を掛けられる可能性がある。だから、謁見後、正式に王の許可を得てからお願いさせて頂いた方が……後々の事を考えればその方が良いとも思うのだが。……しかし…王は許可して下さるかどうか……」

僕と殿下はそれぞれ意見を述べ合ったが、どちらの意見にも欠陥があり、言葉に詰まってしまった。
そんな僕と殿下の様子を交互に見ていたカイトは、バッと立ち上がる。

「~~んなぁんだよ!殿下のお母さんって事は、王様の奥さんって事でしょ?!細かい事はさて置いても、救世の巫子まで来てるってのに、救済を受けさせないってなれば、その方が周囲に対しても不自然にならない?いくら何でも無慈悲過ぎるって。」

拳を作ってそう主張するカイトに、ロレンツォ殿下は下を向く。

「……確かに、そう…なのですが…。それでももし、救済を禁じられてしまえば……王の言葉は覆せませんから。」

殿下は両膝に置いていた手を膝の間で組み直して、グッと力を入れた。
やっと、ここまで来たのに!と渋い顔をしているカイトと殿下を見やり、僕はここへ赴く前にテオに頼んでいた調査の内容を話していた時の事を思い出していた……。
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