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第2章
79話 前世の過ち
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しばらくして、部屋の外に立つ護衛騎士から来客の旨を伝えられる。
僕はカイトやカレン、テオを各々見て、気を引き締める。
「どうぞ。」
そう、告げると……入って来たのは。
このアデリート王国へと招いた、ロレンツォ殿下だった。
自身の護衛騎士のジーノと……アルベリーニ子爵令息も伴って。
「……改めまして、この度は我がアデリート王国へようこそ。よく、おいで下さいまして、本当にありがとうございます、救世の巫子様方。……クレイン公子、貴方も。」
そう、実に丁寧な言葉で礼を述べた殿下は、深々と頭も下げた。
「頭をお上げ下さいませ、ロレンツォ殿下。」
凛とした声で言うカレンに、殿下は、その頭を上げるどころか、膝をついたのだった。
頭を下げただけでも驚きなのに、膝までつくとは。
ここまで殊勝な殿下、誰が想像できようか。
僕とカイトもまた、驚愕していたが。
カレンは冷静に彼を見やっていた。
「……いいえ。私は貴女様方に、到底許されない過ちを仕出かそうとしておりました。既にお聞きですよね?クレイン卿から。」
「ええ。其方にいらっしゃるアルベリーニ卿に、私かカイト…どちらでもいいから攫え、と無茶を仰っていたそうですね。」
カレンはいつになく冷たい声でそう言い、サフィルの方へ視線を向ける。
名を言われた彼は、殿下に続く様にして膝をつく。
ジーノもまた、主君と同様に膝をついた。
「……ええ、そうです。」
カレンの問いに、殿下は膝をつき、俯いたまま答える。
カレンは、はぁ。と息を吐いた。
「そのような事にはならず、本当に良かったです。前世では、おそらく本当に実行されましたからね、殿下は。」
「…え?!」
カレンから告げられた内容に、流石のロレンツォ殿下も顔を上げる。
それは、ジーノも、サフィルも同様だった。
「私は救世の巫女として、救済の力だけでなく、前世の記憶もあるのです。……だから、本当は前世の誘拐犯である貴方方に協力するのは不本意ではあります。けれど、私達が大変お世話になっているクレイン卿たってのお話でしたので、お受けする事にしたのです。」
「………」
巫女に、前世の記憶があるという告白だけでも愕然とするのに、ましてや、その彼女の前世では、自分は実際に実行してしまっていたとは。
そして、その罪を今世で晒されるとは。
ロレンツォ殿下は何も答えられずにいた。
お付のジーノとサフィルも同じく。
僕らは、その彼らの様子を黙って見守った。
カレンが、前世の記憶があると明かすと言う事は、此処へ来る事が正式に決まった時に、カレンから打診された。
いくら、今世は前世とは違うと言えど、やはり自身を攫おうとしていた事。
ちょっとは反省して欲しい。
それに、今回ここへ来たのは、本当にシリルのおかげなんだから、それを身をもって彼らには理解して欲しい。と、カレンは言っていた。
彼女は前世、実際の被害者だ。
直ぐに助け出されたとはいえ、本当に怖かったと言っていたから。
僕らは彼女の希望通りにする事に了承した。
そのカレンは、またまた一息つくと、膝をついている眼前の彼らに念を押す。
「ここまで来た以上、可能な限り殿下のお母様を救済致しましょう。ですが殿下、必ず私がお願いした事、忘れないで下さいね。約束ですよ?」
言われた殿下は、強く頷かれた。
「えぇ、お約束いたします、巫女様。」
殿下の様子に、カレンもようやく張り詰めていた空気を解いた。
「……でしたら、話を詰めましょう。どうぞお立ちになって、こちらへいらして下さい。」
僕はカイトやカレン、テオを各々見て、気を引き締める。
「どうぞ。」
そう、告げると……入って来たのは。
このアデリート王国へと招いた、ロレンツォ殿下だった。
自身の護衛騎士のジーノと……アルベリーニ子爵令息も伴って。
「……改めまして、この度は我がアデリート王国へようこそ。よく、おいで下さいまして、本当にありがとうございます、救世の巫子様方。……クレイン公子、貴方も。」
そう、実に丁寧な言葉で礼を述べた殿下は、深々と頭も下げた。
「頭をお上げ下さいませ、ロレンツォ殿下。」
凛とした声で言うカレンに、殿下は、その頭を上げるどころか、膝をついたのだった。
頭を下げただけでも驚きなのに、膝までつくとは。
ここまで殊勝な殿下、誰が想像できようか。
僕とカイトもまた、驚愕していたが。
カレンは冷静に彼を見やっていた。
「……いいえ。私は貴女様方に、到底許されない過ちを仕出かそうとしておりました。既にお聞きですよね?クレイン卿から。」
「ええ。其方にいらっしゃるアルベリーニ卿に、私かカイト…どちらでもいいから攫え、と無茶を仰っていたそうですね。」
カレンはいつになく冷たい声でそう言い、サフィルの方へ視線を向ける。
名を言われた彼は、殿下に続く様にして膝をつく。
ジーノもまた、主君と同様に膝をついた。
「……ええ、そうです。」
カレンの問いに、殿下は膝をつき、俯いたまま答える。
カレンは、はぁ。と息を吐いた。
「そのような事にはならず、本当に良かったです。前世では、おそらく本当に実行されましたからね、殿下は。」
「…え?!」
カレンから告げられた内容に、流石のロレンツォ殿下も顔を上げる。
それは、ジーノも、サフィルも同様だった。
「私は救世の巫女として、救済の力だけでなく、前世の記憶もあるのです。……だから、本当は前世の誘拐犯である貴方方に協力するのは不本意ではあります。けれど、私達が大変お世話になっているクレイン卿たってのお話でしたので、お受けする事にしたのです。」
「………」
巫女に、前世の記憶があるという告白だけでも愕然とするのに、ましてや、その彼女の前世では、自分は実際に実行してしまっていたとは。
そして、その罪を今世で晒されるとは。
ロレンツォ殿下は何も答えられずにいた。
お付のジーノとサフィルも同じく。
僕らは、その彼らの様子を黙って見守った。
カレンが、前世の記憶があると明かすと言う事は、此処へ来る事が正式に決まった時に、カレンから打診された。
いくら、今世は前世とは違うと言えど、やはり自身を攫おうとしていた事。
ちょっとは反省して欲しい。
それに、今回ここへ来たのは、本当にシリルのおかげなんだから、それを身をもって彼らには理解して欲しい。と、カレンは言っていた。
彼女は前世、実際の被害者だ。
直ぐに助け出されたとはいえ、本当に怖かったと言っていたから。
僕らは彼女の希望通りにする事に了承した。
そのカレンは、またまた一息つくと、膝をついている眼前の彼らに念を押す。
「ここまで来た以上、可能な限り殿下のお母様を救済致しましょう。ですが殿下、必ず私がお願いした事、忘れないで下さいね。約束ですよ?」
言われた殿下は、強く頷かれた。
「えぇ、お約束いたします、巫女様。」
殿下の様子に、カレンもようやく張り詰めていた空気を解いた。
「……でしたら、話を詰めましょう。どうぞお立ちになって、こちらへいらして下さい。」
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