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第2章
69話 救済を望む理由
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他の者ならいざ知らず。
その僕がこの事をバラせば、巫子達だって不審に思うだろう。
以前の様な関係性とは違うのだ。
僕は冷たい視線で殿下を見やると、殿下は苦々しい表情を見せた。
「いいですね、その表情。確かに気持ちが良いかも。」
フッと鼻で嗤ってやる。
他国のとは言え、王子様に向かって何て言い草だ。
普段の僕なら有り得ないが、前回、牢で散々な目に遭わされたんだ。
このくらい言ってやりたくなった。
僕に随分な事を言われた殿下はと言えば、酷く憎々しげな顔になっている。
なかなかに迫力がある。
流石は王子様。
あんまりやると、本当に問題になりかねないな。
本当は前回のお返しをもうちょっとしてやりたい所だが、残念ながら今世の殿下は前世とは違うのだ。
完全な仕返しなど出来ない。
僕ははぁ、と溜息をつき、表情を切り替えた。
「……失礼致しました。貴方様のアルベリーニ卿に対する横暴な振る舞いは、見ていて良い気がしないので、つい。……ですが、どうしてそこまでして巫子が必要なのです?エウリルス王には打診されていないのですか?キチンとご相談なされれば、そう無下にお断りになられる事も無いかと思うのですが?」
前世でも、死罪の僕を無理に引き入れてでも、カイトを手に入れようとしたくらいだ。
それが出来ない案件なのだろう。
それでも、それを素知らぬフリをして、今度はなんとしてでも問い質さないと。
決意する僕に、殿下はギロリと目を光らせた。
「それが出来るんなら、既にしている。出来ないから、こうして苦心しているのさ。」
「他国ならともかく……アデリートはエウリルスと良好な関係を築いている筈です。そのアデリート王国からわざわざ留学にいらっしゃっている殿下の頼みを、エウリルス王がそう簡単に拒否なさるとは、僕には思えないのですが。」
あくまでも上辺だが、それでも事実を僕は述べてみると。
殿下の顔がとても憎々し気に歪んだ。
「あぁ、そうさ。我が父、アデリート王とエウリルスの王とは良好な関係を築かれている。だから王には頼めないのさ。……我が父に疎まれている、母上の治癒などなっ!」
殿下は、吐き捨てる様に……答えてくれた。
「殿下の……お母上…ですか。」
救世の巫子達を求めたのは、まさかその為?
サフィルの家族を人質に使って彼を脅しながら、殿下自身も自分の家族の為に……奔走していたのか。
そうだったなんて……。
僕はショックを隠せなかった。
前世ではあんな態度で僕を随分いたぶってくれたのに。
その裏で、そんな切実な願いを隠していたなんて。
「そのお話……本当でしょうか?」
僕は、殿下を見やり、そして、呆気に取られて僕の方を見ていた懐かしいサフィルも見やった。
視線を向けられたサフィルは、自身も問われているのだと気付き、そうだと頷いた。
「そう……なんですね。分かりました。では、もし…ですが、救世の巫子の協力を得られる事が出来たとすれば、彼らの身の安全はそちらで保障して頂けるのでしょうか?」
「えっ……」
僕の問いに、殿下はポカンとした顔をして見せた。
僕だって、殿下の話だけじゃ、実はお涙頂戴の嘘の可能性が高いな、と信じなかった。
でも、サフィルが肯定したから。
彼の顔を見るに、嘘を言っている様には、見えなかったから。
だから。
「保証してみせます。決して公子様のご迷惑になる様には致しません。巫子様がお越し下さるのなら、其の責は必ず此方が。ですよね、殿下?!」
サフィルは力強い声で、ロレンツォ殿下に尋ねると、殿下は呆気に取られながらも頷いた。
その様子を見て、僕は……折れる事にした。
「分かりました。では……巫子達に相談してみます。どうするかの判断は彼ら次第ではありますが、話してみます。……あまり期待はしないで下さいね。」
単なる保険ではなく、僕が前世の殿下の所業をバラしてしまったから、彼らの貴方に対する評価が最悪なんで。
事情を話しても彼らが受け入れるかは、正直僕にも分からなかったが。
それでも、話してみましょう。
僕は、軽く頭を下げて、二人の元を去った。
振り返り際、目の合ったサフィルを……名残惜しく思いながら。
僕はその場を後にした…。
その僕がこの事をバラせば、巫子達だって不審に思うだろう。
以前の様な関係性とは違うのだ。
僕は冷たい視線で殿下を見やると、殿下は苦々しい表情を見せた。
「いいですね、その表情。確かに気持ちが良いかも。」
フッと鼻で嗤ってやる。
他国のとは言え、王子様に向かって何て言い草だ。
普段の僕なら有り得ないが、前回、牢で散々な目に遭わされたんだ。
このくらい言ってやりたくなった。
僕に随分な事を言われた殿下はと言えば、酷く憎々しげな顔になっている。
なかなかに迫力がある。
流石は王子様。
あんまりやると、本当に問題になりかねないな。
本当は前回のお返しをもうちょっとしてやりたい所だが、残念ながら今世の殿下は前世とは違うのだ。
完全な仕返しなど出来ない。
僕ははぁ、と溜息をつき、表情を切り替えた。
「……失礼致しました。貴方様のアルベリーニ卿に対する横暴な振る舞いは、見ていて良い気がしないので、つい。……ですが、どうしてそこまでして巫子が必要なのです?エウリルス王には打診されていないのですか?キチンとご相談なされれば、そう無下にお断りになられる事も無いかと思うのですが?」
前世でも、死罪の僕を無理に引き入れてでも、カイトを手に入れようとしたくらいだ。
それが出来ない案件なのだろう。
それでも、それを素知らぬフリをして、今度はなんとしてでも問い質さないと。
決意する僕に、殿下はギロリと目を光らせた。
「それが出来るんなら、既にしている。出来ないから、こうして苦心しているのさ。」
「他国ならともかく……アデリートはエウリルスと良好な関係を築いている筈です。そのアデリート王国からわざわざ留学にいらっしゃっている殿下の頼みを、エウリルス王がそう簡単に拒否なさるとは、僕には思えないのですが。」
あくまでも上辺だが、それでも事実を僕は述べてみると。
殿下の顔がとても憎々し気に歪んだ。
「あぁ、そうさ。我が父、アデリート王とエウリルスの王とは良好な関係を築かれている。だから王には頼めないのさ。……我が父に疎まれている、母上の治癒などなっ!」
殿下は、吐き捨てる様に……答えてくれた。
「殿下の……お母上…ですか。」
救世の巫子達を求めたのは、まさかその為?
サフィルの家族を人質に使って彼を脅しながら、殿下自身も自分の家族の為に……奔走していたのか。
そうだったなんて……。
僕はショックを隠せなかった。
前世ではあんな態度で僕を随分いたぶってくれたのに。
その裏で、そんな切実な願いを隠していたなんて。
「そのお話……本当でしょうか?」
僕は、殿下を見やり、そして、呆気に取られて僕の方を見ていた懐かしいサフィルも見やった。
視線を向けられたサフィルは、自身も問われているのだと気付き、そうだと頷いた。
「そう……なんですね。分かりました。では、もし…ですが、救世の巫子の協力を得られる事が出来たとすれば、彼らの身の安全はそちらで保障して頂けるのでしょうか?」
「えっ……」
僕の問いに、殿下はポカンとした顔をして見せた。
僕だって、殿下の話だけじゃ、実はお涙頂戴の嘘の可能性が高いな、と信じなかった。
でも、サフィルが肯定したから。
彼の顔を見るに、嘘を言っている様には、見えなかったから。
だから。
「保証してみせます。決して公子様のご迷惑になる様には致しません。巫子様がお越し下さるのなら、其の責は必ず此方が。ですよね、殿下?!」
サフィルは力強い声で、ロレンツォ殿下に尋ねると、殿下は呆気に取られながらも頷いた。
その様子を見て、僕は……折れる事にした。
「分かりました。では……巫子達に相談してみます。どうするかの判断は彼ら次第ではありますが、話してみます。……あまり期待はしないで下さいね。」
単なる保険ではなく、僕が前世の殿下の所業をバラしてしまったから、彼らの貴方に対する評価が最悪なんで。
事情を話しても彼らが受け入れるかは、正直僕にも分からなかったが。
それでも、話してみましょう。
僕は、軽く頭を下げて、二人の元を去った。
振り返り際、目の合ったサフィルを……名残惜しく思いながら。
僕はその場を後にした…。
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